303・スケッチブック。
ミーアは侯爵様の「獣舎」が気に入ったらしい。
檻の周りを兄達を従えてアッチへウロウロ、コッチへウロウロと忙しい。
スミマセン……侯爵様。
世話係の人達にも迷惑ですよね。
「気にせんで良いよ。
意外な同好の士現る! ってところだね。
小さな子供はむしろもっと怖がるかと思ったんだがね」
ココの子供は動物が嫌いなわけでは無いと思う。
魔獣で神獣なオーちゃんはお子さまモニターズには大人気だった。
きちんとテイムされているなら危険はほとんど無いからね。
前世だと「動物園」は親子連れの人気スポットだった。
「獣舎」ももっと散歩がてら廻れるようにすれば見に来る人は居ると思う。
親が見せようとしなければ小さい子供に見る機会なんかある訳が無い。
ましてココにはテレビも無いんだ。
好奇心も刺激されないと発揮される機会すら無いんだよなぁ。
「なるほど……
変な思い込みの無い小さな頃から慣れれば私の同好の士を増やせる訳か。
君から聞いた子供の公園を併設するのも良いかもしれない。
まあ、全部の動物を好きにならなくても一種類でも好きな子が出てくれれば
上々だな。
この『獣舎』を君の言うところの『動物園』にしてみるよ」
おお!なんだか侯爵様がヤル気になったみたいだね。
仕事を引退すると気が抜けたようになってしまう人も居るけどこの侯爵様なら
そんな心配は要らないと思う。
だってしたいコトがてんこ盛りって顔をされてるからね。
「動物大百科」を作るのにも興味を持たれたようなので帰国したらスタークさんの
ご主人の「植物大百科」を贈ることを約束した。
きっと素晴らしい「動物大百科」ができると思う。
お手本がわりに「植物大百科」がなると思うんだよ。
侯爵様の許可をもらって動物達をスケッチした。
これでも子供の頃は漫画家になりたかったんだ。
いろんなモノをスケッチしてたんだよ。
子供に戻ったんだからあの頃のことをまた繰り返してても大丈夫だよね。
ココには「漫画家」なんて職業は無いんだけどさ。
今度こそ帰国という段になってスケッチブックを忘れたのに気が付いた。
部屋に取りに戻ったら別のお客が居てオレのスケッチブックを見ていた。
すみません……ソレは私のなんですが返していただけませんか?
振り向いた男性の客は泣いていた。
……なんでオレなんかのスケッチを見て泣いてるんだろう?
そんな感動するような絵なんか描いてないと思うんだけど……




