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他力本願な世界で救済を  作者: 夜桜
第2章 勇者の邂逅
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第27話 『寝れた日』

 ――父さん、母さん、これ美味しいよ!

 そう言いながら小さな少年が、父親らしきものと母親らしきものに食べ物を渡している。

 そうだねと親同士も美味しそうに食べてる様子が見える。


 これは夢なのか?記憶なのか?今の俺には判断付かない。

 でも、この小さな少年は俺だということは分かる。

 正確にはこの身体、と言った方が正しいか。

 断片的な元の体の持ち主の記憶を探っても、一致した記憶はないので、恐らく夢だろう。

 夢なのか定かではないが、今認識している世界が曖昧なのか、視界が切り替わったように、シーンが変わる。


 ――俺は、勇者になりたいんだ!世界を救う勇者にさ!

 手を広げてそう、世界に宣言するように、今いる人間に示すように言い放っている姿がある。

 世界を救うとは、大きく出たなと思いつつ、またシーン切り替わる。


 ――みんな、もう大丈夫だ!この俺、勇者が来た!

 目の前の魔物に、人間に対して、そう宣言した。

 このシーンで分かったことがある。

 これは俺の記憶でも、夢でもない。

 身体持ち主の夢なのだと、知った。

 だって、俺が勇者だという事実はない。

 だからそういうことだ。

 こいつにも夢があって、人生があった。

 俺がそれを奪ってしまった可能性を少しだけ考えてしまった。


「ッ!」


 俺は、ちょっと考えすぎなのかもしれない。

 こいつの意識は、奪ったんじゃない。

 俺は、意識がなくなった箇所に入っただけだ。とそう自分に事実を伝えようとする。

 だが、上手くは行かない。

 あの夢を見てしまったから、それを奪ってしまった可能性が捨てきれない。

 もうそれを知る術なんてもうないというのに、考えるだけで無駄だというのに。

 捨てきれない、捨てられない。


 この世界に来てから、まだまともに寝れていない。

 考えないようにしているが、嫌なことばかり頭の中で連想してしてしまう。

 前世の父親のこと、自殺する瞬間、今世の父親を殺した事実、魔物を殺した感触――。

 目を瞑るとそれが、瞼の裏で過ぎる。

 過ぎると、身体が覚醒して、目が覚める。


「寝れねぇわ」


 このまま目を瞑っていても寝れないので、ベットから出て、外に出る。

 まだ、この国に慣れてもいないし、散歩がてらそこら辺を歩いてみるか。


「はぁ、どうしたものかなぁ」


 寝ている途中で、起きることが多い。

 その後は、目が覚めて寝ることが中々できないので、困っている。

 寝れないのはかなりキツイ。

 異世界に来て、一ヶ月くらいか?その期間、まともに寝れた記憶がねぇな。


「寝る場所とか、生活する場所とかが短時間で変わってんのが良くねぇのかなぁ」


 それもあるかもしれない。

 まだ、今ある住居が安心できる場所だと脳が認識していない可能性がある。

 だから、こんなに寝れないとか?分かんねぇな。

 改善策が慣れること以外ないことが、何より辛いな。何が辛いって保証がない。


 慣れたとして、俺が満足して寝れる保証がない。

 何か他に策を打てれば良いんだが、このままでは、本当に持たない。

 何より心が持たない。

 脳を休ませないと、ずっと悪いループが続いていく。嫌な記憶のフラッシュバックが。


「にてしも、すげぇな。真っ暗だ」


 今は真夜中ではあるが、元の世界では考えられないくらい真っ暗だ。

 月の光しか差し込んで来ない。

 こんな建物があって、真っ暗とは違和感が凄い。何も見えないレベルではないが、灯りが何か欲しいところだ。


「あっ」


 そういえば、灯りがあるんだった。

 今思い出したが、エルフの魔法を閉じ込めたランプで灯りを出せるらしい。

 ランプを持って外を出る習慣がらないので忘れていた。

 まぁいいか、そんな遠くに行くわけではないし。


「これから、どうするかなぁ」


 考えごとをすると、つい未来について考えてしまう。

 このままシンとテアの場所にいて本当にいいのか。

 あいつらの邪魔になっていないか。

 負担にはなっていないか。


 そんなネガティブなことばっか考えてしまう。

 あいつらはそんなことを思う奴ではないと分かっている。

 誘ってきたのもあいつらだ。

 でも、考えてしまうのは俺の悪い癖だ。

 これは、簡単に治るものではないな。


「暗いし、帰るか」


 暗いと道に迷う可能性がある。

 まだ、ここら辺の道を覚えるいるわけではないしな。

 俺は住居に帰宅することにした――。


 ドアを開けると、テアとシンがいた。

 こんな時間何してんだ?

 もしかして、俺が出掛けるときに、起こしちまったか?そうだとしたら、申し訳ないな。


「シン、テア、お前ら何してんだ?もしかして、俺が出掛けるとき、起こしちまったか?それだったら悪いことしたな」


「起きたのは、間違いないけど、聞きたいことがあって待ってたんだ。ずっと寝れてないようだけど大丈夫かなって」


 気づかれていたようだな。

 ここは素直に行くか。

 長話するのもあれだしな。


「まぁ、まともに寝れていないのは事実だな」


「寝れないのはとても辛いね。そうだ、一緒に寝るのはどうだい?テアの抱き心地はとてもいいよ!」


抱き心地って、自分の妹のことに何言ってるんだ。

 それにしても一緒に寝るか。

 逆に気が散って寝れなくなりそうだけどなぁ。

 そうでもないんだろうか。


「考えてないで、一緒に寝てみよ!」


 考えていると、テアに寝る部屋へと連行される。

 俺はもう、まともに頭が回っていなかったのでもう流れに身を任せることにした。


「そうしようっか」


 この日の夜、異世界に来てから初めてちゃんと寝ることができた。

 この日以降、嫌な記憶がフラッシュバックすることが減り、寝れない日は着実に減っていった。

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