第2話 『少年の日常』
世の中には、残酷な出来事で溢れている。
それは、表に出ることによって人々がやっと知ることができる。
表に出なければ、知ることはない。知ることができない。
例え、表に出たとしても人々は対して、気にしはしない。
残酷な出来事を知ったとしても、自分に関係がなければ達観し、楽観してそんな出来事は時間が経てば忘れてしまうだろう。
果たして今、自分が目の前に起きている現実は残酷な出来事だろうか――否である。
自分にとってはこれは日常で受け入れている現実だ。
受け入れているとは違うか、諦めていると言い換えてた方が正しい。
目の前の大きな拳、自分の非力な力ではどうにもならないと思っているからだ。
思ってしまった。そう考えてしまったのならば、もう諦めるしかない。
どうにもならないことだ。
少年を殴りつけていた大人はなんも喋ることもせず、気は済んだのかその場を去っていった。
「あ゛ぁ゛いってぇな」
呻き声のような、唸り声のような、そんな声が少年から聞こえた。
今感じている苦痛を、声に出すことで少しでも緩和できるように、無意識に出た声だった。
「人をサンドバック見たいに殴りやがって」
見た目は対して、怪我を負っている姿はないが、少年の身体は所々痛みを負っていた。
見た目では、さっきまで殴られていたのか分からないくらい、身体は綺麗に保っていた。
殴るにしろ、傷が付かないように上手く調整しているのだろう。
そうすれば、少年の目立つ傷が残らない、そういう配慮の元で調整されていると見える。
傷なんてあれば、都合が悪くなるのはそっちも同じだしな。
「傷はねぇーが、いってぇつっの」
そんな悪態を着きながら少年は立ち上がる。
少年は顔を洗いにいくため、洗面所に向かう。
仮にも外に出るのだから、一応、最低限の身だしなみくらいは整えておくか。……特に問題なさそうだ。
「よし、いくか」
問題なさだったので、外に出る準備をする。
体は痛いが、我慢できないレベルではない。
その辺も上手くやっているのか、知らないが割と理性的なやつだ。
だからこうして割と行動ができている。
余りにも痛かったり、傷が酷ければ学校にも行けないだろう。
それは、奴の本意ではないということだ。
本当に、くだらない。
少年はバックを背負いながら、ドアに向かい、外に出る。
※ ※ ※ ※ ※
学校には着いたが、まだ体がいてぇな。まぁ、気にしてもしょうがねぇか。
少年は心のなかで、学校めんどくせーと思いながら席に座ると学校の存在価値について考え始めた。
存在価値がないと証明できれば、学校なんて行かなくていんじゃね?とそういう発想である。子供だからこそ出る発想だ。
学校っていう制度は、無駄なものが多い気がする。
将来、本当にこんなものを使うのかよと、思うときがある。
使うとしたらどんな場合に使うんだ?と疑問に持つ。
歴史は、何となくわかる。
今まで、築き上げたもの、人類を過ちを知ることができる。
それを知ることができれば、文化が出来た経緯が理解できるのと今後、人類が同じ過ち、戦争や差別を繰り返さないように抑止をすることが目的なのは予想できる。
それも、あまり効果は少ないようだけどな。戦争も、差別も、繰り返されてるしな。
そして学校には色んな科目があるが、部分的に必要じゃない所が多い気がする。
必要な部分だけ、学ぶ形式で良くないか?と思うが、おそらく、必要な部分っていうのが難しいんだろうな。
人によって、必要なもの、学びたいものが違う。
学びたい奴が必要なときに、学校に来るシステムでもいい気がするが。
この世は必要、不必要だけではないということなんだろうか?
でも俺は、自分が必要だと思ったことしか学ぶ気はしないんだが。
「まぁ、寝るか」
学校の存在価値がないことを証明するのは、難しいことが分かったので考えるのをやめ、寝ることにした。
今は、つまんない話を聞かされているだけだし、寝ても問題ない。
寝るのはとても良い。寝ている間は、不安だらけの未来について考えずに済む。辛いことも思い出すこともない。
おまけに寝るまでのこの時間が好きだ、この緩やかに意識が遠のいていくのがとても心地いい。
できれば、ずっと寝ていたい気持ちが湧き出てくる。
だか寝れば必ず起きるもの、仕方がない――。
「もうこんな時間か」
起きたら昼になって、聴こうとしていた授業まで省いてしまった。
前回聴いて、かなり気になっていた授業内容ではあったのだが、そんなものはもう関係ない。
時間が過ぎて去れば、もう過去のことだ。
寝てしまえば、寝る前の自分なんて他人みたいなもんだ、気にする必要はない。
そうだ、忘れよう。
「―――――」
人が話しかけてくる。
話しかけられたのなら、話し返すのがこの世界の常識だ。
無視したら何されるか溜まったもんじゃない。いじめなど、そう言ったものから発生すると予想できる。
いじめられるのは、勘弁なので返事を仕方なくすることにした。
「あー分かってるよ、授業は寝ながら聴いてたから大丈夫」
話しかけてきた委員長的な存在に嘘で返事をした。
あれこれ言われるのは、嫌だったので授業自体は聴いていたことにする。
本当は、ほとんど聴いてはいなかったのだが、適当にはぐらかすことにした。
「―――――」
「だから大丈夫だって、必要なとこは聴いてるから」
委員長っていう役職は、本当に大変だな。
あれは、委員長という役職が問題というより人間性がああいうものに俺は見える。
ああして、サボっている人間を見逃さない。
サボっている人間がいたら注意をしてくる。
俺から言わせてみれば、あんなことは切りがないと思うんだが。
注意したってサボる奴はサボるし、ここにいる奴らだってサボれればサボる奴ばっかりだ。
そんなの相手にしてたら時間が勿体ないと、個人的には思う。
人の生き方なんて人それぞれ、とやかくいう筋合いはない。なので適当にあしらう。
大抵の人間がそうして、生きている。
でもあいつは違う。他人の生き方にケチを付けている。
不真面目な奴が、許せないのだろうか。
自分が真面目に生きているから、他人も真面目に生きていないと、許せないということなのだろうか。
仮に俺の考えが合っているとすれば、考え違いも良いところだ。
自分が真面目だからって、他人が真面目なる必要なんてない。
前提として、不真面目な奴が簡単に真面目になれる訳がない。
キッカケなどあれば、真面目になるケースがあると思うが、あんな説教まがいなことをして人が真面目になるとは思えない。
(俺には関係ないことか)
――そして学校での一日が終わり、帰宅する。
あまり、早く帰りたくはないので、適当に散歩や、公園に滞在するなどして、いつも時間を潰すことにしている。
あまり遅すぎると、怒られるので最低限時間は守る。
家に帰っても、親の仕事を手伝わなければならないので、帰っても休めない。
だから、今のうちに気を休む必要がある。
「―――――」
委員長が学校の外で話しかけてくる。
まだ、ここにいることに疑問を持っているみたいだ。
「別に暇だったからここにいただけだ。気にしなくていい」
「―――――」
学校が終わったあと、ここにいるのを何回か目撃されていたらしい。
定期的に居座る場所を変えているのだが運悪く見つかったのか。
「ずっと、ここに居るわけじゃないよ。ただこの公園にいるのが好きなだけ」
定期的に、ここに滞在しているのが不審がられた。
言い訳を考えるのが面倒だから、ここにいる理由を適当に付けた。
もしかして、帰宅中に適当に歩き回っているのがバレているのだろうか。
あまり人の目に付かないように、行動パターンを変えてはいるんだが。
最近は、この公園に何日か滞在しているから、それでここに居るのが知られた可能性はある。
明日には、滞在する場所を変える必要があるな。
あまり滞在できるような場所はないが、なかったら滞在せずに歩き回っているか。
疲れるが、仕方がない。
「―――――」
「別にそんなことは、ない」
家に帰りたくない理由があるのか問われたが、言うつもりはない。
俺が置かれている状況を知られて色んな人にバラされたら、そんなもの迷惑極まりない。
他人に可哀想というレッテルを貼られるのは願い下げだ。
家の状況は我慢すれば良い、そして近い将来あんな場所から脱却して生活すれば良いんだ。
辛いのは、今だけだと思えば我慢できる。
将来は普通に生きる。普通に暮らす。
まず、それを目標にしていこう。




