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完全無欠の革命歌  作者: ウエハル
共感の子供
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スターリング・イン・レヴォリューション




「僕とユノで完全となる能力……僕達も…『獲得』の覚醒みたいだ」


疲れ果てた目は決意に溢れ、勇猛な立ち姿はイトスの鋭い睨みに立ち向かう。

チューブから特殊なジェルを出し、自分の切り取った左腕の断面に塗り、切り取られたほうの腕をくっつける。痛みはなく、数秒で血は止まり、すぐに腕はくっついた。少し感覚が薄く力もまだ入らないが、問題はない。


「まだ……フラフラ…するけど……ユノは成功させた……!理解した、これが覚醒した…「僕達の能力」だ!」


お互い血でまみれた体を向かい合わせ、改めて相手の顔を睨みつける。お互い全てを賭けた戦い。イトスはここでリアスを殺せば14年つきまとってきた脅威は消える。リアスはここで死ねば今までの仲間や家族の死が無駄になり、正義が負けたという刻印が付く。


「運命に決着をつけよう………リアス…ペルフ……」


「全身全霊で来い………イトス!」


勝つか負けるか、相打ちや和解は許されない。

この官邸で、最終決戦は幕を閉じる。


「ハァァアッ!!!」


先に仕掛けたのはイトスだ。絶対的な自信からなのか、一直線でリアスに突っ込んでいく。

手を伸ばし、リアスを抹消しようとするも、それを軽く避けられ腹にカウンターパンチを喰らった。


「ウグッ……!!……ウォォォオーッ!!!」


痛みに痛んだ体にカウンターはよく通る。それでもイトスは痛みを堪えて逆の手を伸ばした。

しかしそれさえも無言であしらわれ、顎に強烈な一発を喰らった。


「ガフッ……!……な……何故なんだ…!?」


相手は自分よりも遙かにボロボロだというのに、なんだこの捌きは。まるで別人にでもなったかのような、確実な捌きと的確な一発。プロがビギナーを相手するなんて、そんなもんじゃあない、あまりにも完璧すぎる動き。

まるで、次の攻撃が最初から分かっていたかのようなカウンター。


「ハッ!……貴様……予言能力か!」


「………」


「図星ではないな……ならば答えろリアスッ!」


「………運命を変えられるのは僕だけだ。イトス、お前はただ僕の知識通りに動いているだけにすぎない!」


今度はリアスがハイキックを繰り出す。

こんな速度なら避けることは簡単。イトスは体を反らしてリアスの蹴りを躱す。

そそて自分の反撃のチャンスと思いきや、リアスはハイキックで繰り出した足と同じ方向の手を軸に頭を下にして、もう片方の足の裏で追撃の蹴りを食らわせた。


「ウゲェッ!!」


こんな技術を未だかつてリアスは使ってはこなかったはず。だというのに、まるでプロの格闘家のようにイトスの顔面に予測不可能な一撃を食らわせたのだ。

イトスは予想外の攻撃にその場に倒れる。


「僕は君のように非道くはない……だから教えてやる」


蔑んだようなリアスの上からの目線は、今までの子供っぽいリアスとは違って大人びた眼差しだった。


「……明日も昨日も…一年後も去年も、宇宙の終わりだって宇宙の始まる前でさえも……僕には分かる。明日の天気も髪の毛の数も歴史上の謎も、そしてこの戦いの勝敗も!僕には理解できている!」


「…な………!?」


「言わば全知の能力……これが僕達の『スターリング・イン・レヴォリューション』だ!」


隣人のカードの暗証番号も、通りすがりの人の健康状態も、未来の情勢も過去の文明も現在の世界も、相手の次の攻撃も、あらゆる宇宙の森羅万象を知ることができる能力。それが覚醒したリアスとユノの能力『スターリング・イン・レヴォリューション』である。


「………!」


イトスは一瞬、勝てるはずがないと思ってしまった自分が恥ずかしい。いくら次の攻撃が分かろうが、無理なものは無理だということがこの世にはいくらでもある。一人がいくら最強だろうが、敵が一億人一斉にかかれば造作もないように、人間には限界というものがある。


「人間には……限りがある……その限界を掻き消すために生きたのが神だ!そしてその忠実なる僕たちは限界を知らない!私たちは与えられたのだ!神に無際限の能力を与えられた!貴様ら人間如きにそれが理解できるというのかァァァア!!!」


イトスは立ち上がって、いくら殴りかかってもいくら手を伸ばしてもリアスには届かなかった。いつか届くと信じて、イトスは諦めようとしなかった。

しかしやがてイトスは疲れ、動きが止まる。


「……お前たちの言う神の名は…アデラ・ヒューズ。14年前か……ルクセルさんが若い……」


「!?」


「お前たちは確かに人間を超えた特異能力以外の何かを持っている。だけどそれも、結局は人間の延長線上にある能力に過ぎないんだ……結局お前たちは、人間かぶれなんだよ」


「………黙れッ!貴様に理解されてたまるかァッ!!!」


イトスは床に手を付き、力を込めた。


「!」


するとカビが広がるように、ボロボロと床が崩れ消え、それは壁や天井、官邸中に瞬く間に広がっていく。最後の足掻きなのか奴はホワイトハウスの抹消を始めた。

二人は噴水のある広場へと向かい、その間も一方的な殴り合いが続く。


「クソッ!……勝敗が分かっていようが!貴様が負ける可能性はある!いつか私は勝てる!」


その子供のように計画性のない攻撃は全て躱され、全てカウンターをされる。

強烈で的確な蹴りはイトスの肋骨をへし折った。


「アグウァァアッ!!!!!」


「……よく聞けイトス。僕以外の宇宙の全ては、僕の知っている情報通りに動いている。…その情報に抗えるのは、僕だけなんだ……僕だけが僕の未来の知識に刃向かえる。だから……運命を変えられるのは僕だけだ」


「何をほざくか!リアスッ!」


「もう既に!僕が勝利する未来に運命は変わっていると言っているんだァッ!!!」


思いっきりイトスの顔面を殴り抜けた。

全ての未来をリアスは知っている。幾億もある情報をもとに、何度も何度も自分が死なない程度に、自分の未来の行動に抗う行動をとる。するとバタフライ効果のように、宇宙全ての運命が変わり、やがて敗北の未来は勝利の未来へと移り変わる。


ホワイトハウスは完全に抹消された。リアスが覚醒したことにより、ホワイトハウスがこの世に存在したということは本来イトスしか知らないことだったが、リアスも知ることがでこる。

リアスは大きく深呼吸をし、手の準備体操をする。イトスに近づき、拳を握りしめる。


「いくぞイトス!まずはこれが姉ちゃんの分だ!」


水のカーテンが日光を反射し、葉が揺れる。骨の砕ける音が響き、少年の拳が深く強くめり込んだ。


「フィオリさんの分!ルクセルさんの分!」


吹っ飛んだイトスの襟を掴み上げ、容赦なく追い打ちの拳を叩き込んでいく。まるで別人のような慈悲のない殴打は、顔面を歪めていく。


「アレクの分!コリオの分ッ!!」


短い間を思い出し、悲しみと愛の拳が体を空に押し上げる。


「母さんと父さんの分だァァアッッ!!!!」


そして短く長い物語は、終わりを告げる。


「正真正銘これで終わりだイトス!!!最後にこれが!ユノの分だァァァァァアア!!!!!!」


枯れそうなほど声を張り上げ、血だらけの鉄拳は自然の上で鈍い音を響かせ、受け継がれる意志はイトスを殺した。



誤字・脱字チェックをしていません。一方的すぎますが許してください。複製ディアン戦も考えましたが、やめときました。

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