天に坐す我らの父よ
エリナ戦の翌日
地下に設立されたとある研究所。
「…デイヴ…クリス…えーと、あとは……マルクス……あぁ、マクロイだったっけか。………ん、アーロンがいないな。おいラービー!アーロン知らないか!?」
紫色の髪の男がまばらに立っている白衣の男たちを指差して名前を確認する。
男たちの目に光は無く、操り人形のようだ。ラービーというのは研究室の隅で戸棚を漁っている男のこと。
「携帯電話みたく動かせばいいんじゃないのか?」
ラービーは液体の入った瓶を取り出すと、顔を返して返事をする。細く鋭利な目つきに琥珀色の自然体な髪型。白い髪が混じりまさに宝石のようだ。
「動かしたいんだけど周りが暗くてね。何か壊したりしてしまったら大変だろ?それとラービー、また瓶の蓋を歯で開けてるぞ。顎の力に自信を持つのは構わないが、それで死んで貰うと困るんだが」
ラービーは目線を男に向けたまま瓶の蓋を噛んでいた。
「!………おっと、すまない。アーロンなら警戒域の冷蔵室の辺りによく監視に行かせていたじゃあないか。「オルドリクセン」の物質化もそろそろだろうから、取りに行かせたんじゃあないのか?」
「「複製」にオルドリクセンを取りに行かせてたまるか。仕方ない…………ラービー、捜してきてくれ」
「あのなぁ……こんな大事な時期に冗談かますなよ、イトス」
「ヘイそこの姉ちゃんスーパーボウルのチケットいらコベァバァッ!!!」
夕方のカフェテラスでタブレットと携帯電話を弄るリル。命知らずなのかそれに近づいて来た男は一瞬でぶっ飛ばされた。
「うっせーぞッ!!噓がバレバレすぎんだよッ!」
ぶん殴って歯が折れている事など気にせず、リルは先程から携帯電話をチラチラ確認し、万が一を心配する。
「アレクの奴……電話に出ねーな。まさかとは思うが………」
考えたくはないが、どうしても考えてしまう。「死」という言葉。身近で味わったからこそ、家族や仲間の死を考え、向き合うということはもうしたくない。
リルはふと思い出す。家族の事を。ユノとリアスの関係を話すのをすっかり忘れていた。まあ話さないほうが幸せか。
そしてリアスとリルの父親の事を。父は家にいない事が多く、特異能力発現とほぼ同時期に亡くなったと聞いているが、全く記憶にない。
その日の夜。
政府機関がある高層ビルから飛び出してきたルクセルはとても嬉しそうな表情をしている。
「フィオリッ!分かったぞッ!!スカイフォール国立研究所だ!!」
「?……スカイ…フォール…国立研究所…?初耳ですね」
フィオリのもとに駆け寄り、一枚の紙を見せる。
紙には地図が載っており、バツ印が左の方に描いてある。そのバツ印の場所はホワイトハウスに近めの位置にある。しかしそこは一度訪れており、飲食店ぐらいしかなかった場所。
「はぁ…はぁ………死にかけのジジイを脅して訊いてきたぜ。政府が隠している研究所だ。一体何を極秘裏に研究しているのかは訊けなかったが、14年前、つまりは特異能力発現と同時期にに設立され、現在の所長の名前は「イトス・アルケテロス」!」
「ビンゴォッ!イトス・アルケテロス……!ユノから聞いたイトス様とかいう奴ですね!」
「ああ、遂に突き止めた。三人目の子供達の名はイトス、イトス・アルケテロス。準備を始めるぞ」




