次への一歩
ユノが追いつき、再び十分な戦いが出来るようになった。声が枯れるまで叫んで喜びたいが今はそれどころではない。
追跡発信器はアーリーを殴った際に反発で一つ飛ばし、ユノの吸引で背中に付けておいた。
「もう少しここで読書をしていたいだけなんだ、許してくれないか」
「許してはくれないわよ。あんたの正体を掴むまではね」
「面倒くさいな。言っておくが発信器なんて付けても意味はないぞ。用済みになったこの体は捨てる予定だ」
予想通りだ。無駄になったのは悔しいが、今さらどうでもいい。
膠着状態。ぶん殴ってやってもいいが、ユノに怒られそうなのでやめておく。
「やっぱあんた、リアスの学校で一度会った奴ね」
話は続く。奴に悟られないように情報をできるだけ引き出すために。
「そうだったとして、どうやって特定するんだ?この体を我が家に持って帰るとでも思ったか? この体じゃあ能力も使えないからここにいる意味は一つもないんだが」
能力が使えない条件が存在することは分かった。そこから能力を暴いていけばいい。
三人は先生と生徒のように話している。間近で膨らむ風船を眺めている緊迫感がある。
「お前、やっぱりアーリーと知り合いか」
「それが最後の質問だ。答えはNO。私が一方的に知っているだけだ。では、私は退屈なゲームを無理矢理やる男ではないのでね」
「ま、待てッ!」
パンッ!――割れた。
本当に風船のように粉々になり、跡一つ残さずにアーリーの姿をした男は消えた。やはりあの時に会った奴だった。
「クソッ。やっぱしそんなに甘くはないか」
リアスは出したくもない怒りを表してしまう。
母親に近づくための一歩は踏み外して終わった。
「しかし緊張したなぁ。もうこんな大役イヤだな」
これが本命。喜びの感情。
言葉は喜んでいないが、安心感からの喜びと余裕だ。
新たな敵との遭遇。かなり自分達には厳しいものであった。
「ぐすっ……うぅっ………うっ……」
ユノが顔を隠している。
「ユ、ユノ……?」
意外だった。あの勇敢で気の強いユノが泣いているのだから。
嬉し泣きかなんなのか予想もつかないため、かける言葉が見つからない。
「ごめんっ。いつものことだから気にしないで……」
すすり泣きながら顔を覗かせた。無理に笑おうとしている顔が、逆に悲しい。
人間を額縁にして飾る奴が親なのだから、よほど厳しく異常な家庭だったのだろう。親の目が行き届かない所で泣くということは、そういうことだ。
「安心してユノ。僕がいる。もう何も恐がることは無い」
慰めになるかは分からない。ただ優しくゆっくりと、ユノを抱き締めた。これからのためにも。
アーリーはもう見ることはないだろう。しかし幸せは不幸を伴う。アーリーがいないため、あの額縁の中の人間は永遠に元に戻れない。リアスが救う手もない。
アーリー・エクトスという男の恐怖は消え去った。そして新たな恐怖も迫っている。母を捜すための物語は道を外れ、一人の少女を救う物語を間に挟んだようだ。
その後はというと、リアス+ルクセル達のほうは怪我の治療のために無理矢理病院送りにされたらしい。リルとフィオリだけがほぼ無傷なので、調査に努めている。
病院でアーリーを含むいろいろな事をルクセルから聞いた。
奴らは「子供達」……と俺が勝手に呼んでいる。理由はだな…子供達は人間じゃあない。アンドロイドとかクローンとかレプリカントではない。今から14年前「とある男」が能力によって創り出した、自分の欲望の分身。創り出した子供達は5人。それぞれが一つの欲望に関する能力を持っている。……子供達の目的は共通で、その創り出した男、言わば親を蘇らせるということ。………今のところは二人しか倒せてないが、奴らは絶対に生かしてはならない。これだけは事実」
そして不思議だが、子供達と子供達、そしてそれに関わった者はそれぞれ不思議と「惹かれ合う」。と。
母ディアンに続く道に乗った足は、次への一歩を着実に踏み出し、上辺だけの安心と共に進み続ける。
第一部的なものは終わりです。
二部からは読みやすいように書き方を変えていこうと思います。




