それぞれの目的
あれからニ週間後。
怪我の回復に予想以上の時間がかかってしまった。
ちなみにあの後、アーリーの遺産はユノに相続されることが決定し、ディアンの情報は警察からは一つも無い。
ただ一つ、ワシントンD.C,に向かえばいいという事だけが分かっている。しかしワシントンD.C.のどこに敵が潜んでいるかなんて予想もつかない。下手したら大使館やホワイトハウスに潜んでいる可能性もあり得る。
「ユノ、何聴いてるの?」
リアスは参考書と睨み合いながら片耳にイヤホンをしているユノに訊く。最近からユノはやりとりが面倒という理由でペルフ家に居候していあ。
「んっ」
ユノはイヤホンの片方を差し出した。
ユノも親族がいなくなってしまったせいか、いろいろと忙しいらしい。大量と書類と睨み合っている。
あまり見られなかった微笑みの眩しさがリアスの視力を低下させる。
「…………」
あえてここは無言で、イヤホンを受け取ってみた。
「これは…ヘヴィメタ……?」
「そう、メタリカ」
「…………そう」
こんなクソ他愛ない会話が永遠に続けばいいのに。
人生ってのは非情である。
一方そのころ。アウル探偵事務所にて。
「おっすアレク。まだ営業時間外なの?」
応接間にも似た部屋の扉から、コリオがひょこっと顔を出す。
見た目は悪ぶっているが、心は純粋なコリオは寂しがっていたりして。
「親が死んで忙しいんだよ。父親までいなくなるとは思わんだろ。それよりなんで入ってこれた、そしてなんで来た」
「いや鍵開いてたし……そうだ!ケーキを焼いてきたんだよ」
大きめの箱を差し出す。
アレクは座っている椅子から腰を上げ、箱をじっと見つめる。
「それ市販のやつだろ」
「あ、分かった?ホントに作ったんだけど失敗しちゃってさ」
どこかぎこちないコリオを察したのか、アレクは立ち上がって二つの書物を本棚から取り出し、デスクの上に置いた。
一つは分厚く、一つは薄い。薄い方は家系図だが、分厚い方にはカバーが被せられている。
「ここに来た理由はわかってる。……お前の親を殺した奴の調べはついた。名前はセオドア・ヴァン・ヴァリエート。有名な殺人狂だ。セオドアが13年前にここら辺に潜伏していてな。奴は週一のペースで殺人を行っていたが、とある週だけ殺人が確認されていない。そしてその週が、お前の親が死んだ週だ」
13年前。特異能力の発生での混乱が少し治まった時期にコリオの親は死んだ。警察はセオドアの犯行だと睨んでいたが、その時だけ証拠不足だったのと、警察が捕まえるのに躍起になっていたせいで、コリオ自身に犯人の事は伝えられていなかった。
コリオが反応しないので、アレクは分厚い書物の、付箋の貼ってあるページを開いた。
「奴は居場所を転々とし、何故か全く捕まらない。おそらく能力のためだろうが。居場所を突き止めて一気にぶっ叩く必要がある。そしてセオドアの被害者のリストを確認していたら、面白い名前があった」
アレクは開いたページの一つの名前を指差した。
コリオを顔を近づけ、その名前を見て驚く。
【Alice Coleman】
「アリス……コールマン…!?」
「そう、俺のいとこだ。そしてアリスは今も生きている」




