8 夢幻の双刃の巻 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
『食らえ! ディスインテグレートフィンガー!』
原子分解の光を宿す貫手が炸裂し——ヒエイマルが貫かれた!
ヒエイマルは光の塵となり、飛び散って消滅する——。
『!?』
驚いたのは他ならぬサイシュウだった。
(手応えが、無い‥‥?)
まるで幻を打ったかのような、何も無い感触。
一体化して動かすケイオス・ウォリアーの特性からそれを間違いなく感じ取る。
そして、一瞬の隙を見せるサンライザーの背後に着地するのは——ヒエイマル!
やはりサイシュウの前にいたのは分身による幻影だったのだ。
『な? 分身能力は確かに消したぞ!?』
それも機体と操縦者の両方から、だ。
しかしキラーの返答は——
「消されてはいない。名称を変えておいたからな」
サイシュウはモニターに映った相手のデータを見た。
【分身】は消され、その欄はただ空白。
しかしキラーに言われて気づいた。
ヒエイマルの特殊能力欄をよく見れば【シツリョウヲモッタザンゾウ】という名の能力がある事を。
※【シツリョウヲモッタザンゾウ】:分身を作り出す。
内容は【分身】と同じ。
キラーは【分身】能力をコピーペーストし、名前を変えて保存していたのだ!
それを予想していなかったサイシュウは、目当ての能力を消した時点で目的を達成したと思い込み、他の能力の詳細をいちいち確認しなかったのである。
まぁ高速での戦闘中に、そんな悠長な事をいつまでもしていられないという事もある。
そしてヒエイマルの拳が激しい電光を放った!
肩のストライクが口を開けて舌を伸ばし、キラーは渾身の力を籠めて叫ぶ!
「邪道雷刃拳(けん・けん・けん)‥‥!」
地獄めいた必殺のカラテ正拳!
忍者はあらゆる武器を使う——そこには己の五体も入って当然。
先に刀を使ったのも、サイシュウの【消去自在】能力相手に、消されても次の武器に切り替える事ができる物をあえて選んだが故なのだ。
そしてサイシュウが分身の事実に気づいてから会話も含めて0.1秒未満で放たれた必殺拳がSサンライザーに炸裂!
キラーの全力での一撃は、バリアを突き破り、装甲を突き破り、深々と突き刺さった。
電撃が嵐のごとく荒れ狂い——
DOGOOOON!!!
サンライザーが天高く吹き飛び、頭を下にして落下!
地面に巨大なクレーターを作り、その中央で倒れた。
がくり、とヒエイマルが膝をつく。
必殺技という物は、技のかけ手にも威力に応じた反動がある物だ。それを大ダメージをおして放った機体も操縦者も、もはや精魂尽きかけていた。
だが‥‥クレーターから、サイシュウの機体は姿を現した。
あちこち欠けて半壊し、足を引きずりながらも、日輪の頭部を持つ巨人が這い出すように出て来る。
操縦席で、サイシュウは‥‥笑っていた。
『ふーっ。参った参った。ここまでやるようになるとはなぁ‥‥』
膝をついていたヒエイマルも立ち上がった。
よろめきながらも、身構えて。
操縦席のキラーは、無言ではあるが、その目に輝く闘志に衰えは無い。
だがティア姫が叫んだ。
大きな瞳に、涙を浮かべて。
「や、やめてください! これ以上は危険に過ぎます!」
実機での実戦である。いくら脱出装置があるとはいえ、並の戦闘力を遥かに超える二機の激突である。
現時点でも十分以上に危険ではあっただろう。
だがここから先はそれどころでさえない。
そんな姫に届くよう、サイシュウは通信を外へ送った。
『やめろも何も‥‥やめただろ?』
「え?」
姫が困惑する。
周囲の皆も、すぐには意味を飲み込めずに顔を見合わせた。
そんな仲間達をモニターごしに見て、サイシュウは操縦席で笑う。
『参った、と言ったじゃねぇか』
そして今度は、キラーへ——
『今日からお前が、名実ともにリーダーだ。よろしくな、大将』
キラーは勝った。
挑戦し、勝った。
挑まれたサイシュウ自身がそれを認めたのだ。
ヒエイマルは構えを解いた。
そして深々と一礼。
「ありがとうございます」
『敬語はもうやめろ』
とても嬉しそうに、サイシュウはそう要求する。
流石に渋るキラー。
「それとこれとは‥‥」
『やめてくれや、大将』
冗談めかしてはいたが、サイシュウは断固として譲ろうとしなかった。
「‥‥わかった。これからもよろしく頼む」
『おっしゃ、頼まれたぜ!』
言ってサイシュウ、バカ笑い。
キラーも笑った。最初は控えめに「フッ‥‥」と。そして徐々に肩をふるわせ‥‥すぐに大声で。実に嬉しそうに。
その肩でストライクが、体色を明るい黄色に変えていた。
二人の笑い声は、通信機ごしに外へも聞こえていた。
朝日の中、マンドリオが腕組みして頷く。
「キラーが一つ上に行くため、これは必要な事だったのですな」
「なんか‥‥二人の仲間で、良かったです」
スフィル王子はとても嬉しそうだ。
彼だけではない。ティア姫はほっと胸を撫でおろしていたし、他の者も多かれ少なかれ笑顔を見せていた。
ただ一人、ソフィアだけは‥‥
「‥‥ふん、だ」
と、ちょっと面白くなさそうだったが。
「?」
彼女の様子が解せず、シンディが側で首を傾げる。
自分が割って入れなさそうな世界を目の前で展開されて、ほんの少し拗ねてしまう子も、まぁいても仕方ないだろう‥‥。
設定解説
・サンライザーが天高く吹き飛び、頭を下にして落下!
正拳だが真上に吹っ飛ぶ。スゴイ威力だ。
なお一説には真に強力な打撃を見舞われると、食らった人間は上方に吹っ飛ぶらしい。
嘘か本当か試した事は無いが、もし本当ならJャンプのバトル漫画もそれなりにリアリティに基づいた描写をしていたのだろうか‥‥。




