8 夢幻の双刃の巻 5
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
——早朝、ハイマウンテンの都の郊外——
ケイオス・ウォリアーの訓練にも使われる荒地で、二機の巨人が向かい合っていた。
片方はキラーの乗るヒエイマル。
片方は、サイシュウの乗るSサンライザー。
二機は身構え、戦闘態勢をとっていた——。
荒地の縁で、二機を見守るハイマウンテン勢。
彼らは皆一様に困惑している。
「あ、あの、どういう事なんです?」
「私にもわかんないのよ‥‥」
ティア姫がおろおろしながらソフィアに訊くが、ソフィアも途方にくれていた。
「種岩君があのニンジャロボに乗ってきて、サイシュウさんへ『俺と真剣勝負してくれ』って挑戦して。何がなんだか」
皆が見守る中、二機はゆっくりと、じりじりと間合いを詰める。
「ご主人はあのHAGEが内心嫌いだったんじゃないですか」
「元最強部隊とかいうが、ブサでエラソウじゃからのう」
キャシャロットがイカ焼きを齧りながら言う事に、セファラス女王がうんうんと頷く。
人の心情を理解しようとすれば、自分ならどう思うか考えてみる事は大切だ。
「そんな理由のわけないでしょ‥‥」
ソフィアは額を手で押さえて呻いたが。
その横で頭をひねるマンドリオ。
「ではあのニンジャロボを手に入れた事に関係するのですかなぁ」
それを聞き、アリンが「はっ」と気づいた。
「そうか! あの機体ならサイシュウに勝てるんだな。元最強部隊を倒して、名実ともに最強になるつもりだ」
「下剋上だにゃー。やれやれー!」
シャンマウが嬉しそうに手を振り上げて声援を送る。
だがスフィル王子は合点がいかないようだった。
「そうなんでしょうか? なんだか違う気がしますが‥‥」
キラーのいる操縦席へ、サイシュウからの通信が届いた。
『その機体を手に入れたとは驚いたぜ。しかし性能テストってだけなら、わざわざ戦闘しなくてもいいんじゃねぇのか?』
その肩にストライクを乗せた、キラーの返答は——
「それも兼ねていますが、それだけじゃない」
『と言うと? 付き合ってやってんだから教えろよ』
キラーの声に固い意志を感じ取り、興味をそそられるサイシュウ。
この世界にもシミュレーターはある。室内に設置した操縦席で、ケイオス・ウォリアーの操縦を疑似的に再現する物が。
それを使えば模擬戦闘も可能だ。
わざわざ危険を冒し、機体を損耗・破損させてまで、実機で戦闘する意味は薄い筈である。
だがそんな事はキラーとてわかっている。
だから理由は別にあるのだ。それは——
「サイシュウさんが言ってくれたでしょう。欲しい物は欲しいと言え、遠慮はするな‥‥と」
『それで、俺と勝負か?』
いまいちわからず訊き返すサイシュウ。
「俺を助けて道を切り開いてくれたあなたが、今、俺にとって最も頼れる先輩だ」
答えるキラーの声には、はっきりとした意思がある。
「俺は、それを超えたい」
この世界にもシミュレーターはある。ケイオス・ウォリアーの操縦を疑似的に再現する物が。
しかし再現にも限度という物がある。
サイシュウの反則能力やキラーの忍術等、操縦者が持っている特殊な能力には、データ化しきれずに対応・再現できない物もたまにあるのだ。
そういう特殊な者同士が本当に勝敗をつけようと思えば‥‥実機による実践しかない。
(欲しい物は欲しいと言え、と背中押したが。なーんか、俺の考えていたのと違うなあ)
サイシュウは操縦席で苦笑いしていた。
(もっとこう、女とか賞賛とか女とか金とか女とか地位とか、あるだろうに。こういう路線へ行っちまう奴だったとはねぇ)
キラーは自分と同じタイプの人間だと、今日まで思っていた。
最初に会った時にそう思ったから手助けしたし、今までそう思っていたからずっと共に戦ってきた。
しかし、今のキラーがやっている事は、おそらく自分ならやらない事だ。
やはり人間、一人一人が少しずつ違うのである。
それは当然の事でもあり、しかしほんの僅か、距離を感じてしまう事でもあり‥‥
だが、サイシュウの表情が珍しく引き締まる。
(しかしまぁ、悪い気はしねぇな)
むしろ嬉しいぐらいだった。
感じた距離以上に、ずっと。
(自分が勝ちたくもあり、あいつに勝って欲しくもあり。オレにもこんな気持ちがあるなんてな)
世の中にそういう関係がある事を、知識としては知っていたが。
己とは別の世界の事でしかないと、今日この日までは思っていたのだ。
サイシュウが、晴れ晴れとした大声をあげた。
『よっしゃあ! 思い切りやるかぁ!』
全速前進、刀を構えて駆けだすSサンライザー!
ヒエイマルが全力で駆けだしたのも、全くの同時だった。
設定解説
・元最強部隊を倒して、名実ともに最強になるつもりだ
ある意味ではこれが正しかったという事だ。
「まずは最強を目指す。理由は後からついてくる」というセリフがメチャ面白い漫画にもあったしな。
まぁこの作品の主人公の場合はまず理由ありきだが。




