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8 夢幻の双刃の巻 3

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

秘鋭丸:遥か昔の魔王と戦った忍者。戦死した後、竜神の力で生体ニンジャロボ・ヒエイマルに生まれ変わった。

 城の見張り塔の窓の一つ。

 夜の森と月しか見えないそこで、肩にストライクを乗せ、キラーはナイフを取り出した。

 金竜グゴルダーから貰ったナイフである。

 スターゲイザーとの戦闘で、キラーはなんとなくこのナイフの意味と使い方を理解していた。

 ナイフを握り、一人静かに念じる‥‥。


 ヴォーヴォヴォー‥‥


 遠くで微かに法螺貝の音が響いた。

 キラーは窓から下を見る。


 ヒエイマルが、いつのまにか城壁の影にいた。

 キラーは、自分の意思でヒエイマルを召喚したのである!


(やはり来たか。このナイフを使えばヒエイマルと通じる事ができる。ならば‥‥)

 もう一つの予想をキラーは試す。

(俺に応えてくれ、ヒエイマル)

 心の中で、元人間だというこの機体へ呼びかけてみた。



 果たして、結果は‥‥

《応じよう》

 テレパシーでの返答!

 それは金竜に見せられた過去の、ニンジャ秘鋭丸の声だった。



 対話が成功し、キラーは決めていた願いを明かす。

(俺に力を貸してくれ。今まで以上に)

《どうしろと?》

 ヒエイマルは具体的な要求を訊いてきた。

 無論、キラーはそれも考えてある。

 それは——


(お前に乗せてもらいたい)


 ヒエイマルの運動性は、ハイマウンテン勢のどの機体よりも上だ。その性能は味方として出現した時にモニターへ映されていた。

 だがキラーはその数値よりも、かつての高レベル忍者が変化した機体だという点を求めていた。

 この機体ならば——今の自分の技の全てを完全に引き出せる筈。そして今の自分なら、この機体の全能力を引き出せる筈。

 そこに賭けようと、そう考えたのだ。


 そんなキラーへ、ヒエイマルはさらに問いかける。

《見返りは?》


 ヒエイマルがこれまで助太刀してきたのは、ストライクに呼ばれたからである。

 他の者が何かを要求してきても、受け入れてやる義理は無いのだ。


 そんな事ぐらいはキラーもわかっていた。

 だからこれについても考えてあった。

 キラーは交換条件を出す。


(ストライクが【隠れ身の神】として再生するまで、俺が面倒をみよう)


 ヒエイマルは二度と人に戻れない身だ。

 だから呼ばれれば来るものの、危機を救うと立ち去ってしまう。人の世で暮らす事はできないのだ。

 ならば平時の世話係を改めて請け負う事で、交渉材料になるのでは‥‥というのが、キラーの考えである。


 さて、その考えは正しいか否か。

 キラーの側が揺らめき、モニターでもあるかのように、宙へ映像(ヴィジョン)が現われた。

(これは‥‥?)

 映し出された物を、キラーは見た。



——険しい山中の、洞窟の入り口にて——



 黒覆面、褌(ふんどし)、足袋(たび)‥‥それ以外の衣類は身に着けず、背中には『ACー10』の刺青(タトゥー)。その屈強な忍者は、かつて金竜の映像(ヴィジョン)でも見た生前の秘鋭丸(ひえいまる)だ。

 彼は月のみが輝く夜空を腕組みして見上げ、独り佇(たたず)んでいた。


 そんな彼の背後に、いつの間にか誰かがいた。

 白いフードローブを纏った屈強な男——【隠れ身の神】である。

「どうした? 金竜グゴルダーは既にお前達を認めている。【隠密結界縄】は明日にでもお前達の手に入るだろう」


「ああ。この時代の魔王軍は拙者達が倒す」

 そう答えはするが、秘鋭丸(ひえいまる)は振り返ろうとしない。

「どう討ち取るのかでも考えていたのか」

【隠れ身の神】がそう訊いて、ようやく微かに首を横に振る。

「いや。討ち取った後の事を、な」



「魔王を討つ事を請け負った。忍者として任務は果たす。だが‥‥その後が、拙者には無い」

 そこでようやく、秘鋭丸(ひえいまる)が振り向いた。

 覆面の奥の目は鋭い。だが、力は無い。

「忍びの里に産まれ、それ故に忍者となった拙者だ。だが元の世界に戻る術(すべ)は無いそうだな。ならば拙者はもう抜け忍になってしまった。抜けてしまった以上、もはや忍者ではあらぬ‥‥」

「そうか。お前にとっての忍者とは、自分の所属なのだな」

【隠れ身の神】が言うと、秘鋭丸(ひえいまる)は無言で頷く。


 無数の職業から本人が選択しての、忍者の道ではない。

 秘鋭丸(ひえいまる)にとって、生きるという事は忍者として働くという事であり、忍者であるという事は里で任務を請けて全(まっと)うする事なのだ。


「お前は自由だ。好きにしろ‥‥では、駄目なのか?」

【隠れ身の神】は問う。が‥‥

「この話をすると、誰もがそう言う。だが『自由に、好きに』とは何なのだ。忍者以外の生き方を知らんできた男がそれを続けられんという時に、何か好ましい物がそこらから生えて来て、己が一変するとでも言うのか」

 秘鋭丸(ひえいまる)は再び背を向けた。

 夜空を、そこに浮かぶ月を見上げる。

「好きに、など無いのだ。拙者は何も変わっていない」


 そこで、【隠れ身の神】は。

 くすりと、小さく笑った。

「ならばそれでいいではないか」

設定解説


・金竜グゴルダーから貰ったナイフ


正式名称:蛾のナイフ。

スペシャルパワーを解放すれば忍者を賢者にクラスチェンジさせる効果もあるが、これを使う者はあまりいない。

人間だった頃に秘鋭丸が使っていた武器の一つであり、それ故にヒエイマルとの通信が可能となっている‥‥ので、他の同アイテムを使ってもヒエイマルとの交信は実は不可能。

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