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8 夢幻の双刃の巻 1

キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。

アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。

セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。

シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。

シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。

——ハイマウンテン城・大浴場——



「はー、死ぬかと思った」

 大浴槽の片隅で溜息をつくのは、砲撃甲虫機に乗っていた同級生の秀(ひで)だ。

 その周囲には同級生仲間の正一(まさいち)と木戸(きど)もおり、三人輪になって縮こまっている。


 そんな三人にティア姫が声をかけた。

「あの、もっと広く使っていいと思いますよ?」

 だが三人は「ははは‥‥」と愛想笑いはするものの、姫と目を合わせようとせず、片隅から出てこようともしない。

「男ばかりでひっついてんだ。ホモかにゃー?」

 けらけら笑うシャンマウに、木戸(きど)が顔を顰(しか)める。

「ちげーよ! 全裸のガチ混浴って、この世界おかしくねーか!?」


 なんて事はない、現代日本人だった三人の少年は、刺激の強さに照れていただけだった。

 実はこの三人、今日まで大浴場を使った事もなかったのである。

 ニスケー国を撃破して戦時賠償の一環で建てさせた成り行きで、ここはハイマウンテンの精鋭達が専用で使う場所‥‥のような雰囲気に、なんとなくなってしまっていたからだ。


 そんな彼らに、なんと現地住民からも同意の声が。

「実は僕も日ごろからどうかと思っています」

 頷きつつ言うのはスフィル王子。

 この世界の住人とはいえ、気にする者は気にする。

 実は「恥ずかしい奴は異性と混浴しなければいい」という容認もこの世界の文化なのだが、付き合いという事で彼は毎度一緒に引っ張り込まれているのである。

 王子の賛成を得たからではないだろうが、秀(ひで)は浴槽の外へ声をかけた。

「種岩(たねいわ)くーん‥‥君(きみ)はいつもこんないい思いしてたのー?」


 浴槽の外で体を洗っているキラーはふり向きもしない。

「特に良く思った事もない」

 不愛想なその一言に、ソフィアが横目で睨みながら「たいした物じゃなくて悪かったわね」と不機嫌に呟いた。



 男連中がそんな話をしている間、シンディは湯の中で俯いていた。力なく呟く。

「ご主人さまがぁ‥‥」

「どうする? もう艦を降りる?」

 ソフィアはキラー達に背を向け、主人を想って沈むシンディに心配から提案する。

 Cバエナガメランに乗り続ければ、当然、彼女と主人が再会するのは戦場で‥‥という事になってしまう。


 しかし彼女達の横で、シャンマウは意気揚々と拳を握った。

「捕まえた敵の聖勇士(パラディン)に基地の場所吐かせたら乗り込むにゃー」

 前の戦いでハイマウンテンに攻めてきた同級生の青少年は、脱出した所をハイマウンテン側に捕えられていたのだ。

 今は牢屋で「出せやぁ!」と悪態をついている筈である。


 シャンマウの考え通り、とにかく会ってみるのも手ではあろう。

 だがティア姫は恐る恐る疑問を口にした。

「でも、あのスターゲイザーに勝てますか?」

 溜息一つ、淡々とキャシャロットが。

「現状では望み薄ですね‥‥」



 その時、浴場の入口からセファラス女王が走ってきた。全裸で。

「大変じゃ! お前ら、モニターをつけい!」

「前ぐらい隠せ」

 キラーの横で頭を洗いながらうんざりして呟くサイシュウ。

「なら見るな! モニターを見ろ!」

 そう言いつつ、女王は自らモニターのスイッチを入れた。


 浴場の天井近くに設置されたモニターが点灯すると、そこには‥‥カエルの獣人——変身するタイプではなく、カエルの頭をもった人間――が映し出される。その体色は明るい黄色で、頬が鮮やかな青という、妙にカラフルな色彩だが。

 来ている服からしてかなりの身分だろう。

「あれは‥‥シソウ国の王子? 確か次男のインディブル様かと‥‥」

 ティア姫はカエル男を知っていたようだ。

「ああ、前の帝王がいた国か」

 サイシュウが特に興味もなさそうに呟く。

 だがアリンが大声をあげた。

「後ろにスターゲイザーがいるぞ!?」


 そう。シソウ国王子の背後に立っているのは、仮面の魔術師スターゲイザー!


 そして、シソウ国王子は宣言した。

『先代帝王は魔王軍との戦いで命を落した。だが元魔王軍の幹部が、今、我らシソウ国に協力する事で過去の清算をしたいと申し出てきたのだ。仇とさえ手を組む、それも戦国の世。私はヘイゴー連合を少しでも早く統一し、国力の回復に努め、大国として再生させる事こそが、亡き先代への最大の供養だと信じる』

 大きな口からの大きな声で、高らかに。

『私、インディブルはシソウ国の王に即位した。そしてヘイゴーの帝王に名乗りを上げる! 現状では最大勢力のハイマウンテン国を打倒し、父に劣らぬ王である事を証明しよう!』

 映像の向こうで盛大な拍手が鳴り響いた。


「なぁ? スターゲイザーの奴、自分が王様になるって言ってたよな」

 木戸(きど)が呟くと、ティア姫が「はっ!」と気付いた。

「インディブル様は騙されているのですね?」

「どうかのう。わかった上で手を組んでるのかもしれんぞ。カエル王にもスターゲイザーにも、ハイマウンテン国が一番邪魔だと思われたのかものう」

 セファラス女王はインディブル王も疑っている。

 その傍らでソフィアが首を傾げた。

「ていうか、あのカエル王は次男なのよね? 長男はどうしたの?」

「消されたんじゃないですか」

 淡々と言うキャシャロット。


 正一(まさいち)が頭を抱えた。

「他所の心配しても仕方ないだろ。ただでさえ正面からじゃ勝てない奴が、味方までつけやがったんだからな」

「そしておおっぴらにこっちを攻撃できるようになった、と言う事ですな」

 険しい顔を見せるマンドリオ。

 アリンが「ぐぬう」と唸る。

「どうするんだ、ここから‥‥」

設定解説


・ああ、前の帝王がいた国か


なおサイシュウが直接雇われていたのは、まさに前の帝王がいたシソウ国である。

前帝王を守りきる事ができずに死なせた後、薄情にもその国を出て放浪していた。

そしてこの回に至るまで、一度も戻った事が無い。

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