7 神技炸裂の巻 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
『目的? それが聞きたいのか。まぁいい、教えてやろう‥‥』
スターゲイザーは『ふん』と小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
そして胸を張って高らかに言い放った。
『己が上に行く。上昇志向‥‥それが動機。その先にある物は、昇ってから考えればいい。全てはそれからついて来る!』
インタクセシル勢、しばし沈黙。
やがてキャシャロットがぽつぽつと呟く。
「えーと‥‥まず偉くなりたい、なんでなのかは考えてないっていうわけですか」
だがその言葉をも、スターゲイザーは一笑に付した。
『なぜそこに理由が要る? その前提が押しつけがましいのだ』
杖を高々と掲げる乗機Sハンドレッドアイの操縦席で、スターゲイザーは仮面の奥の目を光らせていた。
『事業家が儲けたい。格闘家が強くなりたい。スポーツ選手が良い成績を出したい。学者が知識を深めたい。アーティストが優れた作品を作りたい。それら全て、理由は一つ‥‥より高みにありたいという欲求だ!』
言葉に熱が籠る。
彼のそんな声を聞いた者など、彼の率いる組織にさえいなかったというのに。
『ただ生きるだけなら、強さも英才も財産もいらない。平凡な仕事を平凡にこなし飯さえ食っていればいい。その一生を全うする者も少なくは無いだろう。それはそれでいい。だが‥‥私は違う!」
そう言い切った。が‥‥それは誰に対してなのだろう?
『このインタセクシルに召喚され、異界流という能力を開花させ、それをもって膨大な魔力を培った。この力で、私は登れる所まで登りたい! 私は昔の私では無いのだ!』
そして、彼は高らかに宣言した。
『私は星を見る者! この目には勝利の星が見える! はっきりとな!』
もはや己を止める事ができる者などいないのだ。
その確信があった。
そんな彼を、ハイマウンテン勢は遠巻きに眺めるだけだ。
ブリッジで呆気にとられている者達がいる。操縦席で気圧されている者もいる。彼を将と仰ぎ、後ろで歓声をあげている兵士達もいる。
そしてただ一人、彼に声をかける者がいた。
「え? マスターヴォイドはもう名乗らないんですか?」
Sハンドレッドアイが、ゆっくりと頭を巡らせた。
『‥‥?』
スターゲイザーにはちょっと飲み込めていない。
彼がかつて、魔王軍の魔怪大隊にいた時のコードネームで、唐突に呼んだ者が誰なのか。
いや、声に聞き覚えはあるのだ。
彼がこの世界で最も聞いてきた声なのだから、聴き間違えるわけがない。
しかしその声の主は、彼がこの世界の住居に置いてきた筈なのである。
恐る恐る、彼は相手の名前を呼んだ。
間違いではあって欲しかったが。
『‥‥シンディ?』
この世界で彼が起動させた、とても大切な従者の名前を。
そして、毎朝毎晩聞いていた、彼にとって最も心地よい声が返って来る。
「はい、ご主人さま! あなたのシンディです!」
絶叫!
『ああ゛ああ゛!? なんで!?!? ナンデ!?!?』
操縦席でスターゲイザーは取り乱し、思わず両手で頭を掻き毟る。
律儀に動きをトレースし、Sハンドレッドアイも頭部を掻き毟る。
そんな主人を、シンディはぷうと頬を膨らまして拗ね気味に批難した。
「ご主人さまこそ、どうして名前を変えたんですか? 私に言ってくれないで。仮面も被ってるし。それじゃなかなかわからないじゃないですか。探したんですよ、本当に」
絶叫するスターゲイザー。
『もう帰れないって言っただろ!』
「帰ってこないから私から探しに来たんですよ」
ぷうと頬を膨らましたままちょいおこのシンディ。
絶叫するスターゲイザー。
『僕が命令してない事を勝手にやるの、本当に好きだな!』
「はい! ご主人さまが大好きですから!」
一転してにこにこ上機嫌、ちょっと照れながらも臆面も無く言うシンディ。
絶叫するスターゲイザー。
『ああ゛ああ゛!!』
羞恥に悶絶し、もう言葉にもなっていない。
「なんで急にノロけてんだ! いい加減にしろ! 爆発してしね!」
倒れたSクマーベアーの操縦席からアリンが怒鳴った。
焼き払われてから茶番を見せつけられたら穏やかでいられないのは、まぁ仕方が無いだろう。
なのにスターゲイザーは怒鳴り返すのだ。
『うるさい黙れ! こんな所にシンディを‥‥非戦闘員を連れてくるな! はやく安全な所に連れて行け!』
彼にしてみれば大成する覚悟で置いてきた女が出てきて、バツが悪いなんて物ではない。
内心では嫌いになったわけではない、彼なりのケジメとして別れたので余計に、だ。
なのにアリンはやっぱり怒鳴り返すのだ。
『人に命令するな! なんでもできるチイトでお前がやれ!』
彼女にしてみれば、さっきまで大きい事をフいていた野郎が急に甘ったるい痴話喧嘩を始めたのだから、ちょっと周りをナメていると感じても仕方が無いだろう。
そんなアリンにスターゲイザーが‥‥
と、ちょっと不毛な言葉のドッジボールになりかけた時。
横から遮る声があった。
「できないのだろう? なんでもできるわけではないだろうからな」
マウターヴォイドもスターゲイザーも、本人的には渾身のイカすネーミングなのだ。
英語を混ぜるのが本人的にはカッコ良かったらしい。
ワシが異世界召喚されて向こうでコードネームを名乗る事になったら、神話の固有名詞から何か使ってやろうと思っている。
カッコイイからな!




