7 神技炸裂の巻 8
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
シンディ:旅の途中で拾った、人造人間種族のメイド少女。
「できないのだろう? なんでもできるわけではないだろうからな」
そう横からかかる声。
その場の一同は振り向く。声の主を見て、ティア姫が目を丸くした。
「キラー様?」
Sゲイルイーグルはまだ破壊されてはいなかった。
損傷は小さくないが、それでもよろめきつつ立ち上がっている。
「神々の力というが、その神々は魔王軍に倒されたそうだな。本当に何でもできるならそんな事は起こりえないはず。さっきから見ていれば、都合の悪い敵の技を妨害している程度で、別の呪文を用いて追撃している‥‥」
操縦席からミニター越しに、敵の総大将を睨みつけるキラー。
「強制力は大きいのだろう。だが起こせる事自体は『何でも』と言えるほどではない。違うか?」
『‥‥まぁ、自分の能力を全て馬鹿正直に教える理由は無いからな』
スターゲイザーのその言葉が肯定していた。
望んだ事が起きる、他者の能力を打ち消して実現する。それは嘘ではない。
だた望んで起こせるのは鈍器が敵の頭部を殴打する事だけ、という話なのだ。
嘘はついていない。
全部を伝えていなかっただけだ。
本人の言うとおり、敵に伝えてやる義理も無いし。
だがそれでも、スターゲイザーに動揺は無かった。
『それに、お前達が私に勝てない事に変わりは無い』
事実が判明したとして——「肝心な所で鈍器が飛んできて頭をブン殴って妨害する事象」を防げるわけではない。スターゲイザー自身の恐るべき技量を超えられるわけでもない。
依然、ハイマウンテン勢の劣勢は変わっていないのだ。
だがアリンが高らかに叫ぶ。
「そうだ! シンディを人質にすればいいんじゃないか?」
「おお、バカ正直に勝てない能力合戦をする理由も無いのう! 逆らったら服を一枚ずつ剥いで、その度に艦外へリアルタイム配信してやろう。これでスターゲイザーの抵抗を抑えられれば‥‥」
セファラス女王も大いに乗り気だ。
シンディ本人は艦橋で「え? え?」と、展開が飲み込めずに戸惑っていたが。
途端、Sハンドレッドアイが放つ気が一変した!
『貴様ら‥‥!』
揺るがぬ自信をもっていたスターゲイザーの声が憤怒で満ちる。
怒気と殺気で機体の周囲が揺らめくかのようだ。
しかし、スターゲイザーが怒りに突き動かされて何かするよりも早く‥‥
「却下ァ!」
ソフィアが怒鳴って、椅子を蹴って立ち上がり、シンディへと駆け寄って背に庇った。
いつもは澄んだ奇麗な瞳も、今は怒りに吊り上がっている。
彼女は人質作戦を許容する気は無いようだ。
おろおろするシンディを断固守ろうとするソフィアをモニター越しに見て、マンドリオが「ふむ」と考える。
「このままだと負けますが、よろしいので?」
「そうですねぇ‥‥まぁいいんじゃないでしょうか」
そう答えたのは、艦長席にいるティア姫だった。
「え?」
スフィル王子が驚く。
姫が答えた事よりも、その言葉の中身に。
だがティア姫は落ちついたものだった。
「せいいっぱい頑張って負けたら、もうそれは仕方ありません。私は皆さんに感謝します」
そう言う彼女は、むしろ穏やかに微笑んでさえいた。
大慌てで抗議するアリン。
「いやいやいや! 命かかってるんだぞ!」
「そ、そうですね。じゃあ今すぐ逃げてください。今日の報酬はお父様から後で受け取っていただくという事で‥‥」
ちょっと困りながらも、ティア姫はそう言って宥めようとした。
そんな彼女にキャシャロットが問う。
「ティア姫はどうするんです?」
流石に難しい顔で少し考えはしたが、姫はすぐに穏やかな表情に戻った。
「えっと‥‥スターゲイザーさんに降伏します。何か処分がありましたらお受けしますので、ハイマウンテンはそれで許してもらいましょう」
『自分は犠牲になっても構わん、と言うのだな?』
スターゲイザーが念を押すが、ティア姫は笑顔で頷く。
「はい」
と。
ハイマウンテン勢の動きが止まった。
彼ら個々が納得したわけではない。戸惑っている者もいる。不満な物もいる。納得していない者もいる。
だが総大将が敗北を受け入れたのである。それがほとんどお飾りで、戦力としては低く、皆をまとめているわけでも惹きつけているわけでもないが――ハイマウンテン国の王族として戦場に出ているのはティア姫なのだ。
だから、ハイマウンテン側の勢力に与する者である限り、この決定に従うしかなかった。
それがどうしても不満であり、逆らうというなら——
「じゃあここでハイマウンテンからはクビにしてもらわねーとな。オレはまだやるつもりだぜ」
そう言いつつ機体に戦闘態勢をとらせたのは、サイシュウだった。
『ほう。勝目があるのか?』
スターゲイザーは内心驚いている。この男は勝てない事を認めたのではなかったのか、と。
サイシュウは「ヘッ」と不敵に笑った。
「そんなもんは無いが、オレの反則能力を無視する神様パワーに負けた事が昔にもあってな。同じような物を出されちまったら、下向くのは我慢ならねーんだ」
つまらない意地である。
オレTUEEEに砂をかけられたのが、腹が立つというだけである。
しかも能力合戦で上を行けない事はわかっているのである。
だがサイシュウは、乗機Sサンライザーを、刀を片手に大股で、一歩一歩前進させた。
真っすぐに。
スターゲイザーは‥‥
『いいだろう。私の全能力を叩きつけてやる』
乗機Sハンドレッドアイに杖を構えさせた。
強大な異界流がオーラとなって、その機体の周囲に揺らめく。
そこから怒気が失せている事に、果たしてこの場の何人が気づいたか‥‥。
だがサイシュウの機体が敵を間合いに捕らえるより先に、割って入る機体があった。
それを前にサイシュウが訝しむ。
「キラー‥‥?」
二機の間に割って入ったのは、キラーの乗る、半壊したSゲイルイーグルだった。
設定解説
・ハイマウンテンはそれで許してもらいましょう
ヘイゴー連合内の国同士で戦をする場合、片方が降参すれば大概はそこで終わる。
民族浄化だの殲滅だのはまず起こらない。
これ以上頑張ったら勝っても損、と思えばあっさり降参もする。
結局、大グループ内での内輪のケンカという側面が強いのだ。
だがこの回は連合とは別の勢力が入り込んで戦っているわけであり、降参した後の処遇がどうなるかは不透明な筈である。
姫の判断は甘いと言われるべきであろう。




