7 神技炸裂の巻 1
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
「心配です‥‥間に合わなかったらどうしましょう」
「今はできる限り急ぐしかないわね。同盟国からの援軍もあるというし、信じるしかないわ。それにしても‥‥狭いわね」
憂うティア姫に密着しながら、ソフィアは顔を顰めた。
二人とも裸である。
何故ならここはCバエナガメランの浴室だからである。
そして浴槽はぎゅうぎゅう詰めであり、湯に浸かっているというより、密着している利用者の間に湯がある、という状態だった。
「まぁ皆が一緒に入るからですな」
落ち着いているマンドリオだが、こいつが一番場所をとっている。
「後回しにされると入れないかもだから仕方ないにゃー」
少しでも体を伸ばそうとしながら、シャンマウが溜息一つ。
本来、艦の浴室は数人ずつが交代で使う。インタセクシルであっても、こういう場合、男女は別々にする。
だがハイマウンテン国に急行している現状、そんな使い方だと後の方の者達に利用する時間は無い。こういう時は身分の高い者を優先し、下位の兵士達は仕方なく我慢するのがこの世界の普通なのだが。
名無しの一般兵士達は普通通り我慢させられている一方で、白銀級機に乗っている連中はほとんどが遠慮しようとしなかった。
まぁ各国からの代表のような形で来ているので、同じ立場の者達に譲ると格下になった気がして面白くないのかもしれない。
となると最も立場が上のティア姫が独断で決めてしまえばいいのだが‥‥彼女自身が「我慢して皆で使う」を選んでしまったのである。
誰かを選び誰かを弾く、という事をしたくない彼女の性格のせいで、返って面倒な事になってしまっているのだ。
もぞもぞと動いて隙間をこじ開けようとするシャンマウの正面で、スフィル王子が真っ赤になって下を向いた。
「あ、あの、あまり体を伸ばされると‥‥」
位置と角度的に、彼には健康的な肢体が前面から全部見えてしまうのだ。
しかしシャンマウは平気な顔。
「嫌にゃー。スフィルがアリンにひっつけばいい。そこちょっと隙間があるし」
「いや、そんな!」
抗議するスフィル。
シャンマウの言う通りにすると、アリンの前面に背中を押しあてる事になるからだ。
だがアリンが怒鳴った。
「なんだと! 私を汚いとでも思っているのか! 入浴の起源はコリーンだ、嫌なら出て行け!」
「わ、わかりました! 出ます!」
王子は立ち上がろうとした。
実は彼は入浴に乗り気ではない。ただティア姫が「各国からの出向者さん達、皆一緒に‥‥」と言ってしまったので、なし崩しに入れられてしまったのである。
しかしアリンは吠えた!
「貴様ァー! 汚いと思っていたと認めたな! 後進国人がァー!」
怒りに目を吊り上げてアリンが掴みかかる!
立ち上がろうとした王子に、後ろから!
後ろから密着されて鷲掴みにされた王子は悲鳴をあげた!
「ちがくて! ちょ、ちょっと、そこは、あ、ダメ、あッー!」
後ろと下からの刺激に少年が悶える!
「わいせつ禁止」
キャシャロットが脳天から鯨油ブレスを発射した。
アリンの真横にいた彼女は、クソ狭い中で暴れられて猛烈に苛ついている。そのせいかブレスの勢いはいつも以上だ。
一瞬でアリンの顔面、そして上半身は白い粘液に埋もれる。窒息してもがきながら、アリンは浴槽の外へと倒れた。
アリンのいなくなったスペースにセファラス女王が滑り込む。
「ちょっと広くなって助かったのう」
「あの‥‥アリン様を助けなくていいんですか?」
痙攣を始めたアリン|(油塊)を見て、ティア姫は心配そうである。
そこへ浴槽の外にいるキラーが、体を洗いながら声をかけた。
「構わない。むしろ助けないでくれ」
「あ、はい」
ティア姫は大人しく従った。
「ゴメンね。ちょっと慌ただしくなっちゃってて。ご主人様を探すために艦に乗ったのにね」
頭の悪い騒ぎの中、ソフィアはシンディへ申し訳なさそうに話しかけた。
シンディは恐縮する。
「い、いいえ! それに悪い事ばかりではないと思います。ハイマウンテンの勢力が広がれば、情報も集まり易いかもですし」
詫びられたのを、馬鹿な騒ぎではなく、戦場へ向かう件についてだと解釈したシンディ。
そんな彼女へ、ふと思いついてキラーが声をかける。
「ご主人の名をまだ聞いていなかったな」
「タイキ様です。先の魔王軍と人類が戦っていたときに召喚された聖勇士で、今は自分の力を活かす場所を得ようとなされています」
シンディの目には、その主人への思慕と、離れた寂しさが両方浮かんでいた。
「ふーん‥‥サイシュウさん、聞いた事はない?」
ソフィアが浴槽の外へ訊ねる。
キラーの横で頭を洗っていたサイシュウは、ちょっと考えるも、首を横にふった。
「ねーなぁ。あんま名の売れてる奴じゃなかったんだろ」
その時、キラーは旅の途中で見かけた青年魔術師を思い出していた。彼も聖勇士であり、自分の腕を揮う場所を探していた筈だ。
(‥‥そんな都合のいい偶然が、とも思うが。一応確認してみるか)
キラーはシンディに尋ねる。
「もしかしてご主人は魔術師か?」
一転、笑顔になるシンディ。
「はい! 魔法の腕前も、調査や解析の技術も超一流です! 私のアイテム変換術も、手助けのためにご主人さまから習いました」
「習えばできるというのも凄いわね。お役立ちなスーパーメイドじゃない」
ソフィアが感心すると、シンディは「えへへ」と照れ笑い。
「そんな事‥‥恥ずかしいです」
なんとなく和やかになった浴場だが、そこへ警報が鳴り響く!
「え? いくらなんでも、まだ着くわけが‥‥とにかく急いであがりましょう」
ソフィアが促すと、各人、次々と浴槽から出た。
狭い所にぎゅう詰めだったので、それはそれで手間取ったが。
(‥‥まぁ後で聞けばいいだろう)
キラーはシンディの主人についてもう少し確認したかったが、今は優先すべき事がある。押し合いへしあいする浴槽を背に、一際早く浴場から走り出た。
そろそろ後半に突入。




