6 神と英雄の巻 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
――金竜は遠い昔を語る――
暗殺者の死神デスサイズ。
怪盗の道具使いドラゴエモン。
忍者のマスターシャドゥ・秘鋭丸。
当時の勇者パーティは恐れ多くも、アイテムを寄越せと要求するために、世界で最も富の眠るエルドラ洞窟を攻略し、最深部へ乗り込んで来たのだ。
当然、金竜グゴルダーは怒りのブレスで焼き払おうとした。
勇者達はアイテムを持っていくため、ドラゴンを倒そうとした。
だが両雄を【隠れ身の神】が止めたのだ。
『【隠密結界縄】なら、私の持ち物だ』
そう‥‥洞窟に長期滞在するため、神もまた私物をいくつも持ち込んで宝箱に入れてあったのである。
あまりに所有アイテムが多く、金竜は要求される物を自分が持っていたかどうかもわからなくなっていたのだ。
「自分の持ち物かどうか確かめもしないで殺し合いしようとしてたんですか」
キャシャロットがジト目で指摘するが、もう過ぎた話だ。仕方が無い。
というわけで一旦争いは止まった。
しかし神もすぐにはアイテムを渡さなかった。初対面の相手にほいほい物をくれてやる奴ばかりではないのだ。
だが勇者達も引き下がらなかった。強大な魔王軍と戦うためには必要だ、と言って。
当時の魔王は己の居城までの12エリアに各12ずつ魔宮を配置し、各魔宮には12人の怪将軍が守りについていた。
魔王の玉座まで、実に1728人の精鋭を倒さねばならない。中ボス1728連戦を当時の人類は突破できないでいたのだ。
「物凄く適当な奴まで中ボス扱いされてんじゃないですかソレは」
キャシャロットがジト目で指摘するが、もう過ぎた話だ。仕方が無い。
だが勇者パテーティは活路を見出した。
戦わなければいいのである。
幸い三人全員が盗賊系の上級職であり、隠密は得意だった。魔王軍のモンスターを不意打ちで一方的に倒すのも日常茶飯事。
しかし1728人もいれば誰かは感知判定にクリティカル成功しやがるだろう、この確率勝負をなんとか捻じ曲げられないか‥‥と考え、情報を集めるうち、パーティ全体の気配を消し去る神宝の存在を知ったのだった。
「善玉悪玉の両方が汚ねー戦いですね」
キャシャロットがジト目で指摘するが、もう過ぎた話だ。仕方が無い。
話が話である。平和を取り戻したいのは金竜も神も同じだ。
悩んだ挙句、神々は勇者達が信用に値するか見定める事にした。
しばらく同居し、納得させてみろ‥‥という条件を出したのである。
「そこは普通、試練を出して判定する所じゃないんですかね」
キャシャロットがジト目で指摘するが、もう過ぎた話だ。仕方が無い。
そして、結果は。
なんと意外にも早くウマがあった。
人々を遠ざけたい金竜と神、人目を忍んで活動する職のパーティ‥‥相性は良かったのかもしれない。
三人はあちこちから集めた珍しい品をもっていた。長い冒険の末に、レアリティの割には役立たないクソアイテムやマニアックな使用法しかない微妙アイテム、各土地の雑な土産物を多数持っていたのだ。
三人はそれらの多くを竜と神へ贈った。三人にとって不要でも、近所への買い物しか外出しない竜と神には嬉しかった。
三人は家事もやってくれた。洞窟はダンジョンなので、モンスターや罠を配置・調整する作業が主だったのだが、三人は豊かな経験で手伝ってくれた。
各種バステや初見殺しを得意とするモンスターで洞窟は溢れた。それに照明消去や水没等の妨害系トラップを組み合わせ、正面から力押しする戦闘など皆無に近くなった。
暗殺者が「死ぬぜ‥‥力押ししかできないバカパーティはみんな死んじまうぞ」と断言する姿に、竜も神も感心するしかなかった。
魔法通信情報網の巡回も手伝ってくれた。
「敵」を叩くために一日中見張って粘着して三人が複数のIDを使いわけながら職業や家族構成にまで暴言を吐くディスりの嵐で埋める攻勢は、竜も神もこんな奴らは初めて見るぜと感心するしかなかった。
敵の息の根をとめるため一日中付け狙うような職業の者達なので、そういうのは得意だったのだろう。
こうして‥‥竜と神、勇者達、双方の間に友情が芽生えた。
「クソども同士の意気投合とか耳が腐りそうですね」
キャシャロットがジト目で指摘するが、もう過ぎた話だ。仕方が無い。
三人を見込み、ついに神は秘宝を与えた。【隠密結界縄】‥‥それで造った輪の中にいれば、外からは決して感知されない神の縄を。
勇者たちは魔王の居城へ向かった。
輪を内から握り、三人連なって砦の外を通り抜けて行ったのだ。
魔王軍の見張りも中ボスも砦外の徘徊モンスターも、三人に気づく事などできはしなかった。
「これは世間で言う電車ごっこですね」
キャシャロットがジト目で指摘するが、もう過ぎた話だ。仕方が無い。
砦の外は川あり谷あり壁あり砂漠ありの悪路だが、盗賊系上級職三人にとっては楽勝。嵩張ってクソ重い鎧を着たウスノロい戦士など一人もいない強みで、その全てを乗り越えた。
電車ごっこ状態のままついにラスボスの砦へ到達したのだ!
しかし‥‥そこに予想外の苦戦が待っていた。
世界を揺るがす魔王が、何の苦も無く倒せる筈がなかった。
敵の本拠地で、三人あまりに意外な事実を知った。
なんと、魔王も三人パーティだったのだ!
魔剣使いの巨漢戦士・アクスリック。
枯木のような老妖術師・デスウィザード。
そして屈強で邪悪な修行僧・ダイモン。
いずれ優るとも劣らない、同格三人による共同支配‥‥それがその時代の魔王軍だったのである。
設定解説
・暗殺者の死神デスサイズ
常に黒いフードマントを纏う、素顔も年齢も不詳の殺し屋。
最も価値ある獲物として当時の魔王の命を狙う。
乗機Sツインシザーズは高度なステルス機能を持ち、敵への不意打ちを得意とする(この回想には未登場)。
・怪盗の道具使いドラゴエモン
無限にアイテムが収納できるディメンジョンポケットを持つ、デブ猫獣人の怪盗。
最も価値ある獲物として当時の魔王の心臓を狙う。
乗機Sブルーラクーンドッグは高度な隠密能力を持ち、敵への不意打ちを得意とする(この回想には未登場)。
・忍者のマスターシャドゥ・秘鋭丸
鬼の面を被ってフンドシ姿の半裸で歩き回る、低ACのニンジャ。
依頼されたので当時の魔王の首を狙う。
乗機Sフーリンカザンは高度なバックスタブ能力を持ち、敵への不意打ちを得意とする(この回想には未登場)。




