6 神と英雄の巻 1
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
シャンマウ:ウェスパレス国の女グラップラー。ネコ獣人。
――ハイマウンテン城・大浴場——
湯舟の中、ティア姫が厳かに告げた。
「お父様もついに決心されました。ヘイゴー連合を平定します」
「‥‥え? やっと?」
湯舟の中でちょっと呆れ気味のソフィア。
「今までそんな気がなかったのか!?」
湯舟の中で驚愕するアリン。
「なかったじゃろ。成り行きとなし崩しで場当たり的に戦ってただけにしか見えんかったわい」
湯舟の中で他人事のように言いつつ、セファラス女王は手ぬぐいを頭に乗せていた。
あまり良い反応が得られないティア姫が涙ぐむ。
「うう‥‥すいません」
「ま、まぁ、とにかく帝王?とかいう地位につくのね?」
慌ててソフィアが確認すると、ティア姫は涙目ながらもこくりと頷いた。
「はい。上位竜に認めてもらって、それを後ろ盾にしたいと‥‥」
「なるほど。なんとなくファンタジーっぽいわね」
納得するソフィア。
このまま戦い続けるよりはスマートな案に思えた。
だがアリンが首を傾げる。
「でも竜が後ろ盾になるのか?」
「‥‥え? 上位竜って何の権威にもならないの?」
ソフィアは驚いた。
いかにも強そうな情報、何かありがたそうな名前だったのに、味方につけても何も評価されないというのか。
少し離れた所で湯に浸かるキラーが、そこで口を挟んだ。
「じゃあ上位竜とは今までどんな関わりだったんだ?」
「強い神竜が沖にいる。色々情報を知ってたりアイテムを持ってたりする。たまに腕の立つ冒険者が会いに行く。そんな関わりですな」
答えたのは隣で湯に浸かるマンドリオだ。
それを聞いて、ソフィアは一番離れた所をキープしているスフィル王子へ声をかけた。
「‥‥海の国は崇めてたりしないの?」
「は、はい。特に何も」
目を逸らしつつ、赤い顔で頷くスフィル。
怪訝な顔でさらにソフィアが尋ねる。
「‥‥‥強力なドラゴンがいるとわかっていて、恐れも頼りも信仰もしないの?」
「悪さをした子に『ドラゴンが食べにくるよ』と脅かしたりはしますが。でも底引き網漁をやらないのはドラゴンと無駄に争わないためなので、そういう意味では生活にダイレクトな影響はしています」
目を逸らしつつ、赤い顔で頷くスフィル。
怪訝な顔でさらにソフィアが尋ねる。
「‥‥‥‥今まで帝王を決める時にもいっさい無関係だったの?」
「はい。全然関係ありません」
目を逸らしつつ、赤い顔で頷くスフィル。
そんなスフィルの隣に、体を洗い終えたシャンマウが遠慮なく飛び込んだ。
スフィルが「うわっ!?」と仰天するのも平気で、彼女はけらけらと陽気に笑う。
「ドラゴンのパワーをちらつかせて帝王になるなんて卑怯だしにゃー」
ヘイゴー連合の者達がいっせいに頷いた。
ティア姫以外。
「‥‥王様の案、いきなり不評だぞ」
マンドリオの横で浸かっていたサイシュウが投げやり気味に言うと、ティア姫がまた涙目になる。
「そ、そんな‥‥」
しかしそんな中、アリンが笑顔で頷いた。
「だが竜に会いに行くのはいいと思うぞ」
「で、ですよね!」
目を輝かせるティア姫。
そしてアリンは立ち上がった。
スフィルが「うわわっ!?」と仰天しつつ露わになった割と豊かな胸から必死に目を逸らすが、そんな事は全く気にせず、アリンは拳を力強く握る。
「私達が倒してドラゴンスレイヤーになるんだ。それなら皆喜んで強さを認めるぞ!」
「そうだにゃ!」
同じく立ち上がって、笑顔で拳を振り上げるシャンマウ。
ソフイアは目を丸くし、左右の二人を交互に見る。
「え? え? 上位竜って倒していいものなの!?」
「あいつら、神の一種だったと思うが」
そう言うサイシュウの口ぶりは、どうでも良さそうではある。
しかしマンドリオも不敵に笑った。
「ゴッドスレイヤー‥‥まさに帝王に相応しい称号と言えますな」
「な、なんでそんなに倒したいの!? その竜、こっちから喧嘩売らなければ無害なのよね?」
ソフィアの丸くなった目はなかなか戻れそうにない。
湯舟へ必死に視線を落とすスフィル王子が、穏やかな意見を差し挟んできた。
「そうですよね。これまでは上手く共存してきましたし。ならば色々なアイテムを持っているそうなので、何か一つ貰えないかあたってみましょう」
「?」
それに何の意味があるのか。わからないソフィアは首を傾げる。
しかしセファラス女王は納得したようだ。
「ふむ。魔剣の一本でももらえば、上位竜が認める強者だという証になるな。サンタナ王の思惑も概ね満たす事ができるじゃろ」
「そ、そうなるの?」
ソフィアが困惑して訊くと、ティア姫も困惑して唸った。
「どうなんでしょう‥‥」
「初めて会うけど何かくれって要求して、はいどうぞとくれますかね?」
キラーの隣で湯に浸かるキャシャロットが、あまりやる気なさそうに疑問を口にする。
だが突っ立ったまま、アリンは威勢よく声をあげた。
「ダメなら討伐だな! やるぞ! 竜退治の起源はコリーンだ!」
「腕がなるにゃー!」
シャンマウも立ったままガッツポーズを見せていた。
セファラスもマンドリオも次々立ち上がり「おー!」と腕を突き上げる。
ティア姫はやっぱり困惑していた。
ソフィアは溜息をついていた。
サイシュウは興味なさそうだった。
そして‥‥キラーは自分の肩にいるストライクが、体色をゆっくりと、だが次々と変えている事に違和感を覚えていた。
(なにやら落ちつかないようだが‥‥どうしたんだ?)
設定解説
・私達が倒してドラゴンスレイヤーになるんだ
交渉して焼き殺されるのは嫌だと思っていたアリンだが、全軍一丸となって戦うなら、自分は生き残れるだろうし手柄になるだろうしドラゴンの財宝を手に入れて死ぬほど壺を回せるだろう‥‥と考えての発言。
真の戦士にはクレバーな計算高さが必要だ。
なおこれは狡猾で卑怯な奴が真の戦士だという理屈ではない。




