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5 タイガー抹殺拳の巻 12

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

ディナル:キラーとその邸宅を世話する専属メイド。外見年齢は十代。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。

——ハイマウンテン城・中庭の隅にあるキラー邸——



 ディナルは自室、ベッドの上にいた。

 ゴロゴロと転がりながら、スプリングと布団の感触を満喫する。黙っていれば美少女のその顔はだらしなくニヤけていた。

「んほー、柔らけー。ふかふかー。幸せ―。上物の寝床はやっぱ違うわー」

 高級な材木で造られた高級ベッド。高級な羽毛をふんだんに使った高級布団。今日届いたばかりの上質な家具で、彼女は幸せの絶頂だった。


 キラーが勝利を重ねてハイマウンテン国での評価も上がる一方。それによって金銭的な報酬も、増額しながら何度も支払われていた。いくらハイマウンテンが小国とはいえ、個人が贅沢をするのに十分以上の額ぐらいは出ている。

 よってディナルは自分が欲しかった高価な家具を購入しているのだが‥‥別に彼女だけで着服しているわけではない。ベッドも布団も、キラーやキャシャロットに同じ物を注文してある。


 大の字になって目を瞑り、ニマニマと笑うディナル。

「まー使ってみてこの良さを実感してくれりゃ、あの二人も文句は言わんやろ。次は何にすっかなー。やっぱ空調関係やろねー。ストーブを魔法式の一級品にするか、クウラアとかいう冷房用の装置にすっか? あっはー、快適になり過ぎてキラー様が部屋の中で寝っぱなしになったら私の責任かぁ?」


「まぁ中では寝ていないが‥‥」

「ヴォオオッ!?」

 キラーが答えると、ディナルは奇声を上げてベッドから転がり落ちた。


 焦って跳ねるように立ち上がるディナル。

 目の前には、いつ帰ったのかキラーとキャシャロットが‥‥!

「おおおお、お帰りなさーませぇー! うぇ、ウェスパレス国はどうでした‥‥って!?」

 ディナルはキラーの黒装束(ニンジャガーブ)がいつになくボロボロ、あちこち裂けている事に気づく。

「ええっ!? ケガ? されてます? て、手当を‥‥」

 慌ててタンスに跳びつき、救急道具を探し始めた。


「落ち着いて。ここへ帰るまでに治療していないわけありませんから」

 キャシャロットに言われ、ハッと我に帰ったが。


「あ、あの、丁度いいというのは変ですけど、ベッド新調しましたから‥‥じっくり静養してください。食事も精がつく物を考えますので!」

 主人の体を気遣って言うディナルに、キラーは落ち着いて答える。

「ありがとう。ベッドでは寝ていないが、休息はとる」


「あの? さっきも部屋の中で寝てないと言われましたか?」

 首を傾げるディナル。

 キラーは落ち着いて答えた。

「ああ。天井裏の梁の上で寝ているからな」

「なんで!?」

 驚愕するディナル。

 キラーは落ち着いて答えた。

「平衡感覚を保ったまま寝るためだ」



※ニンジャは野宿の際に木の枝の上で寝る事もあるし、敵地の天井裏で寝る事もある。

 そんな時に落下していては仕事にならないので、細い物の上で落ちないように寝る訓練を日頃から生活に取り入れているのだ。



「じゃあベッド要らないんですか!?」

 目ん玉ひん剝きそうなディナル。

 キラーは落ち着いて答えた。

「いや。敵が寝込みを襲う時に欺くため、寝ているふりはする。だからベッドは必要だ」



※就寝時間になると、キラーは布団の中に別の布団を丸めて入れ、あたかも中で寝ているかのように装う。

 常在戦場‥‥平時から敵の夜襲に備えているのだ。



「あと今回の戦利品だ。大部屋にでも飾っておいてくれ」

 そう言うとキラーはベルトを取り出し、呆気にとられているディナルに手渡した。

 黄金の豪華なバックルに虎の顔が掘られている逸品である。

 混乱したまま「?」と首を傾げるディナルに、キラーは胸を張る。

「ウェスパレス軽量級チャンピオンのベルトだ」

「国外の名声もそろそろ高まりそうですね」

 頷くキャシャロット。


 ずっしり重いベルトを受け取りながら、ディナルは一人悩んでいた。

(わかんねー。お仕えすればするほどわかんねー) 


 ディナルには、英雄に仕えようという目的意識はあった。

 だがそれがニンジャであった事に対しては、認識が未だに浅いと言わざるを得ない。

 ニンジャの世界では常識など一切通用しない——常識は通用しないのだ!


 彼女の戦いはまだ続く——。

設定解説


・ストーブを魔法式の一級品にするか、クウラアとかいう冷房用の装置にすっか?


魔法のある世界なので、薪をくべなくても熱を生じる魔法式のストーブがある。

もちろん値の張る高級品である。

またクーラーも存在する。冷風を噴き出し、室内の温度を低下させる、地球の物とだいたい同じ設備である。

もちろん魔法を利用しており、値の張る高級品である。

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