5 タイガー抹殺拳の巻 10
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。
セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
「大した底力だ。打開策は見出したか?」
そう問うマックス王に、よろめきつつもキラーの返答は——
「実行できれば勝てる‥‥程度の物ならば」
「ほう‥‥」
王が感嘆の呟きを漏らした。
「では見せてもらおうか!」
言って王は跳ぶかのように距離を詰める。足払いでさえ届くかというほど離れている間合いから、まるで吸い込まれるかのようにキラーの体が抱えられた。
再び宙に跳ぶ両者の体。
キラーの体がひっくり返り、先刻同様、スクリューパイルドライバーに持ち込まれる‥‥!
滝汗をかいて焦るセファラス女王。
「いかん! 受け身をとってダメージを軽減しても、今のキラーではあの威力に耐えられん! キラーが死んだー!」
だがキラーは宙で振り回されながらも呟いた。
「邪道逆順反転(てん・てん・てん)‥‥!」
キラーと王の体が一瞬ブレたと見えるや、次の瞬間、キラーが王を抱えてパイルドライバーの体勢に入っている——!
驚愕するアリン。
「なにィー! 技のかけ手が入れ替わったー! なんでだァッー!」
「むう‥‥コンマのタイミングで技の勢いを制し、肉眼では見えない早業で手順を操作して仕掛け手と体勢を入れ替えたのか!」
マンドリオの分析と同時に、キラーの回転脳天杭打ちでマックス王がマットに突き刺さった。
おお、と感嘆するサイシュウ。
「特訓自体はしていたが、ついに実戦でモノにしやがったな!」
だがしかし。
マックス王はキラーのホールドから逃れ、跳ねるように立ち上がった。
「流石にあれだけでは致命傷になりませんか‥‥」
スフィル王子が下唇を噛んだ。
大技を受けたとはいえ初ダメージである。流石に倒せる筈もない。
だがノーダメージでもない——王の動きが僅かに精彩を欠いた事は、見る者が見れば歴然だ。
当然、キラーにもそれはわかっている。だから彼は王へと次の攻撃を仕掛けた。
高々と跳躍‥‥だがその高度は異常である。そして宙での加速も。
「あの動きは——二段ジャンプ! そして空中ダッシュ!」
驚愕するマンドリオ。
「え? なにそれ? え?」
驚愕するソフィア。
マンドリオは冷静に分析する。
「そうか‥‥キラー殿の、気流操作の応用か。跳躍した足元へ、気流を利用し空気中の原子を集め、それを精妙な技術で蹴れば決して不可能ではない」
「今思いついた事をとりあえず口にしてねーですか?」
キャシャロットは納得いかないようだが、マンドリオは分析しているだけなので彼に言っても仕方がないのだ。
宙を駆けて異常なほどの加速をつけたキラーは、そのまま王へと必殺の跳び蹴りを見舞う。
それは凄まじい勢いで王の胸板へ突き刺さった——が。
キラーの体は映像を逆再生するかのように跳ね返された!
筋肉の衝撃で威力を跳ね返す奥義は未だ健在なのである。
キラーの体はロープへすっ飛ばされた。
しかし宙で姿勢を変えると、彼はロープを真横から踏む。
そして反動を利用し、再び跳んだ!
「ロープワークだ! あれは敵の反射を利用した変形の三角飛び!」
マンドリオが驚愕する。
それに構わず、キラーの体は再び王へと跳んだ。
またマンドリオが驚愕する。
「反射されるのは承知の上‥‥さっきの跳び蹴りはあえて反射させ、その勢いを利用して次の攻撃を放つための布石!」
「でも繰り返してもまた反射されるのでは?」
スフィル王子が疑問を口にする——が、キラーが宙で分身した。
先頭のキラーが王の眼前に着地、飛び込みの勢いを乗せて拳を放つ。
横から回すような軌道の拳‥‥いわゆるフックである。
それは狙い過たず王の体を打った。
だが当然、その拳は王の体内から放たれた筋肉の衝撃で跳ね返される——
筈だった。
だがキラーの拳が着弾した次の瞬間、その肘を分身したキラーの拳が後ろから打っていたのだ!
「フックにフックを! 重ねた!?」
驚愕するセファラス女王の前で、分身の肘を次の分身が後ろから打つ! その肘をさらに次の分身が——!
次々重なるキラーのフックは、衝撃に反射される事なく次第に食い込んで行った。
またまたマンドリオが驚愕する。
「そうか‥‥衝撃が衝撃を押し、さらに衝撃が押す! 常に衝撃で押され続けては反射もできない! 破壊力はキラー殿の拳と王の体表でぶつかり、せめぎ合う‥‥!」
その言葉通り、凄まじい光と放電が拳と体の間でスパークした。それは気と呼ばれる物なのか、異界流なのか。
そして——
骨の砕ける音が響いた!
それは‥‥
「ゲーッ! キラーの右腕が砕けたァッー!」
アリンの悲鳴どおり、キラーの腕からだった。
顔を歪めるマンドリオ。
「むう。加わり続ける衝撃、その威力は‥‥加算ではなく乗数!」
「つまりあいつの腕にも負担が乗数的に加わるからな‥‥」
サイシュウも渋い顔をしていた。
だが——キラーは怯まない。膝をつかない。
なおも拳を繰り出す。全力で振りきる。
そして、光のスパークが爆発した!
DOGOOOOOOOON!
ついにたまらず後方に吹っ飛ぶキラー。
分身は全て消え、黒装束はズタズタになり、後ろに、仰向けに倒れる。
そして王は——その巨体は天高く舞っていた。
遥か上空から、頭を下にして、観客席へ墜落する!
その威力で何人もの客が吹っ飛び、観客席には大きなクレーターが生じた。
コースエン殺在武が静まり返った。
だがそこに‥‥
「種岩君!」
悲鳴のような声をあげ、ソフィアがリングに乗り込む。
倒れたキラーを抱え、ハイマウンテン勢に呼び掛けた。
「治療を! 早く!」
『警告、警告。試合が終わるまで手を貸してはいけません。キラー選手が失格、退場となります』
彼女にアナウンスが警告を出す。
しかしソフィアは、うっすら涙を滲ませて怒鳴り返した。
「うるさいわね! そんな事、どうでもいいのよ!」
「確かにそうです。今、回復魔法を‥‥」
呪文の詠唱を始めるティア姫。
アナウンスは、もはやそれを止めようとしなかった。
『では警告無視により‥‥』
「待て。その前に‥‥」
観客席のクレーター‥‥その中央から制止の声がかかった。
マックス国王が、満身創痍の体を引きずるように立ち上がったのだ。
よろめきながら、ソフィアに抱えられたキラーを一瞥する。
「‥‥ギブアップだ。どうせカウント内にリングへ戻る力は、もう私には無い」
王ははっきりと、そう告げた。
KANKANKANKANKAN!!!!
試合終了のゴングが鳴った。
観客席が歓声で沸き上がり、何も聞こえなくなる。
勝者を讃える声以外は。
〇 キラー — マックス王 ×
インチキ忍術で楽勝する場面が多かった作品なので、強敵相手のシーソーゲームを入れておいた。
インチキ忍術で戦う事は前提で。




