その頃、別の場所にて 5
自分もメイドを雇って身の回りの世話をさせる身分になりたいもんだ。
まぁ実際にそんな給金を惜しみなく支払える財産を得たら、人を雇わず仕事だけ辞めて家でゴロゴロする生活を一生送りそうだが‥‥。
——遠くに大きな森の見える、田舎村の郊外——
小川の辺に小さな民家がある。
その側に光が煌めき、中から青年が現れた。紫のローブに、何かのオーブを飾った杖。複数の指輪をはめており、宝飾品の首飾りは魔力を持つ護符だろうか。
短い黒髪にあまり特徴のない容貌の、魔術師風の青年は、家の戸口へ真っすぐ向かう。
青年が戸口へ辿り着く前に、中から戸が開けられた。
少女が姿を現し、魔術師の青年を見て顔を輝かせる。
「おかえりなさい!」
着ている物はいわゆるメイド服だ。
緑の髪に透き通るような翠の瞳をした少女。
頭にはカチューシャを付けている、が‥‥その両端には金属製のアンテナが、獣の耳が立つかのように生えていた。
そんな少女に、魔術師の青年は優しく微笑む。
「ああ、帰ったよ」
「お風呂の用意しますね。すぐにご飯もしますから」
嬉しそうにそう言うと、少女は青年の手をとり、家の中へ誘った。
——その夜——
「‥‥今までありがとう」
大きなベッドでそう言う青年に、同じベッドの中で、少女は泣き声で問う。
「どうしても、なんですか?」
「ああ。そろそろ大詰めに入る。僕は勝つつもりだ。でもそのために、ここには当分帰る事はできないだろう」
そういう青年の声は、その意思のように固い。
だがしかし。
「私、いつまでだってお待ちしますよ?」
少女がそう訴えると――青年の固い声に、僅かに弱さが混じった。
「そのいつまでなのかが、僕にも見えないんだ」
青年はベッドの中で少女を抱き締めた。
「ありがとう。今までありがとう。君に会えただけで、この世界に来れて良かった」
少女の耳元で、そう囁く。
少女としては、納得したわけではない。しかし‥‥
「私は‥‥」
と、何か言いかけた少女に、青年は訴えた。
「何も言わずに僕を行かせて欲しい。お願いなんだ」
(ずるいですよ)
少女は思った。
青年は知っているはずだ。
彼がお願いしたら、少女は断れない事を。
翌朝。
青年は家から出て行った。
少女はそれを見送った。
「いってらっしゃいませ」
そう言う少女に、青年は‥‥
「今までありがとう。でも、もう自由にしていい」
背中越しにそう言って、家から去るだけだった。
RPGのフィールドに家建てて住んでる人達を見ると「モンスターに襲われねーの?」と疑問に思わないでもない。
まぁ周辺に出て来るモンスターより遥かに強いからそんな所に住んでいる、で解決するんだろうが。
爺さん婆さん(クソ強高レベル)が野良仕事のため外に出ると慌てて逃げていくモンスターどもに、なんでそんな危ない所に住んでいるの?と聞いてやるべきなのだろう。




