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4 虜囚解放の巻 9

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

ディナル:キラーとその邸宅を世話する専属メイド。外見年齢は十代。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。

——ハイマウンテン城・中庭の隅にあるキラー邸——



 広間のテーブルで、メイドのディナルは自ら作った豪華な料理に舌鼓を打っていた。

 涎を垂らしながら、ほど良く焼けたブ厚い肉の塊にナイフを入れる。

「ステーキ! 血のしたたるステーキッ!」

 目を輝かせてまだ熱い肉をフォークで口に運び、小さな口を大きく開けてはガツガツと食った。

「あー美味(うめ)え。キラー様が連戦連勝、向かう所敵無しだから予算も増える一方だわ。余裕のある生活ってマジ素敵。選択大正解やわー」

 新鮮な大盛りサラダにもフォークを入れ、バクバクと威勢よく食っていく。

「そのクセ本人は任務でしょっちゅう家あけるし。家事が楽で助かること。あー最高のご主人やね、マジで惚れそうやでー」

 再び柔らかいステーキを頬張ると、うっとりと肉と幸せを噛みしめた。

「うめぇうめぇ。上質の肉に相応しい、我ながら最高の焼き加減や!」



「それはいい。俺達にも後で頼む」

「ヴォオオッ!?」

 突如として後ろからかかるキラーの声に、仰天して奇怪な叫びをあげるディナル。

 危うく食ってる途中の物を口から吐き出しかけたが、それは間一髪でなんとか堪えた。

 慌てて立ち上がり、椅子を蹴飛ばさんばかりの勢いで振り返る。


 いつもと変わらぬ様子のキラーと、ジト目で見上げるキャシャロットが立っていた。

 

「というか私が作りましょうか。急かすのも何ですし。ディナルさんほど上手く焼けるかはわかりませんが」

 そう言ってキラーを見上げるキャシャロット。

 滝汗を流しながらディナルは必死に口中の肉を飲み込み、焦りながら必死で二人に話しかける。

「おおおお、お帰りなさーませぇー! キャシャロットちゃん、里帰りはどうだったかナー?」


 故郷の事を訊かれたキャシャロット、それには何も答えず広間を見渡す。


「調度品が増えてますね」

「う、うん、一流の方に相応しい物をと‥‥」

 食器棚やサイドテーブル、ランプやティーセットなどを見て言うキャシャロット。

 ディナルはちょっと焦りながらも頷いた。


「材料の質も徐々に上がってますね」

「う、うん、予算はおりてるから‥‥」

 テーブルの上の食べかけの料理を、そのブ厚いステーキやサラダの具の数を見て言うキャシャロット。

 ディナルはちょっと焦りながらも頷いた。


「ディナル。この家の事は任せているが‥‥」

「は、はひ! 上からの許可はもらってますので!」

 キラーが声をかけると、ディナルは跳び上がるかのように背筋を伸ばした。


「いつもすまないな」

「!?」

 キラーが礼言うと、ディナルは大きな目を丸くした。

 彼女の予想した反応とちょっと違ったらしい。



——その後、ディナルが食事を終える頃——



 結局、キャシャロットがキラーとの二人分の夕食を作る事になり、キッチンで作業をしていた。

 ディナルは食事を途中でやめて自分が作ろうとしたのだが、二人に「食事を中断してまで気を遣わなくていい」と止められたのだ。


(正直、食べづらい‥‥)

 ディナルとしては気まずさを感じてしまう話だ。

 まぁステーキとサラダは残さず全部平らげたが。

(で、でも、二人が私以上に大きなステーキを食べればいいだけよね?)

 まだそれだけの材料が十分にあった事を思い出しつつ、彼女は高価なワインをあけて飲んでいた。

 気まずさを感じながら。量的には遠慮なく。


 そしてカートに乗せて二人分の食事を持って来るキャシャロット。

「焼けましたよ」

「そうか」

 頷くキラー。


 そしてワイングラスを叩きつけるように置いて思わず立ち上がるディナル。

 彼女は叫んだ。

「イカ焼きやんけ! ステーキちゃうんかい!」


 イカの切り身入り小麦粉料理の方の、粉もん料理のイカ焼きである。

 ジャンボサイズの物がでかい皿に。それが二人分。


 テーブルについて、もりもり齧り食うキャシャロット。

「あーうめー」

 キラーも口元を覆う布をおろし、静かに食べだした。

「いけるな」


 一応、イカもそれなり以上の物ではある。

 無論、上物の肉と比べる程ではないが。


 デカいステーキを見た後で、なぜこの夕食で平気なのか。

 ディナルには主人が理解できなかった。

(何が楽しみで生きてんだよキラー様よぉ!)


 彼女の戦いはまだ続く——。

設定解説


・血のしたたるステーキ


ステーキ皿の赤い汁は、肉汁であって血ではない。

考えてみれば血まみれの肉をそのまま出す店はないわな。

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