4 虜囚解放の巻 7
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
スフィル王子:アーマルベン国の王子。キラー達に加勢した縁で仲間に加わる。
法螺貝の音が響き‥‥そして魔法戦士は首を傾げる。
「なんだ? 何も起きないじゃねーか」
だが直後、艦が激しく揺れた!
副操縦士の半魔族が悲鳴のような声をあげる。
「船底に穴を開けられました! か、格納庫に浸水!」
「なにィ!?」
魔法戦士は目を剥きつつも操作盤を叩き、格納庫の様子を映す。
格納庫は渦巻く海水に満たされ、収納していたケイオス・ウォリアーはことごとく水没していた。水流で傾き、倒れ、ぶつかり合っている。
当然、その中には魔法戦士が与えられた機体も‥‥。
「なんでだ? どうしてだ? 俺の専用機が!?」
魔法戦士はますます目を剥いた。
魔法戦士は怒りに燃えた目を、高波で水浸しになった海岸へ向ける。
「クソッ! ハイウェーブ砲で奴らを押し流しながら出せるだけの機体を出せ!」
腹立ちまぎれが無い事もないが‥‥まだ全ての機体が使用不能になったわけではない事、だが今すぐ出撃させないと手遅れになる事、出撃させるならできるだけの援護をすべき事‥‥それぐらいは考えての指示だ。
魔法戦士の指示通り、Cマリンボーズは開けた大口から新たな高波を放った。
再び海岸を押し流そうと迫る高波。
しかし——
「なにィ!? 波が消えた?」
驚愕する魔法戦士。
巨大な波が、文字通り、かき消えてしまったのだ!
海岸に立つSサンライザーの中で不敵に笑うサイシュウ。
「オレの反則能力を以てすれば、な」
彼の機体だけはバリアで無効化し、高波を浴びていない。そのバリアを生み出す彼の能力の本質は『対象を消去する』力‥‥敵の能力や攻撃を消し去る事さえできるのだ。
敵の厄介な武器や能力を無力化する事で常勝無敗を誇り、かつてこのヘイゴーの地で最強と呼ばれた男の力はいまだ健在である。
高波が通じなかった魔法戦士は、完全に冷静さを失った。
「クソッ、出撃だ、出撃! 奴を叩きのめせ!」
副操縦士の半魔族が躊躇いがちに意見する。
「出る所を狙い撃ちされるんじゃ‥‥」
「全滅はしねーだろ!」
そう怒鳴る魔法戦士を見て、半魔族は諦めて指令を出した。
なんとか操縦席に乗り込めたケイオス・ウォリアーが数機、艦から出撃する。
だがその側の海中から飛び出す影が一つ。
小型のニンジャ型機、ヒエイマル!
敵艦の底に穴を開けたのかこいつである。法螺貝の音を鳴らして別の方向に注意をひきつつ、ステルス機能で戦闘MAPに表示されずに海底から忍び寄り、穴を開けて敵機の大半を使用不能にしたのだ。
破壊工作が成功した今、ついに姿を現した。
そして宙で、その五体がバラバラに分裂する!
「分離!?」
驚く魔法戦士を尻目にパーツが飛んで行く先は、空で翼を広げるSゲイルイーグル!
高波に襲われた時、キラーは素早く空へ避難していたのだ。
ヒエイマルだったパーツは稼働し、形を変え、ゲイルイーグルを取り囲むと、不可視の力で引き寄せられる。
肩へ腕へ、踵へ靴底へ、胸部へ背中へ、そして頭へ――イーグルの五体にニンジャ型機のパーツが装着された。
ヒエイマルはまたもイーグルの鎧となった。
合体したイーグルへ天から稲妻が降り注ぐ。
それを翼で受けたイーグルは電撃の球と化し、敵艦へと急降下した。
「サンダーボルト‥‥ダイバー!」
イーグルが離脱し、雷球のみが敵艦へ着弾!
稲妻が爆発し、艦を、その一帯を飲み込んだ。
高電圧大電流の嵐の中、やっと出撃した敵の機体が次々と粉砕される――!
副操縦士の半魔族がヤケクソ気味に報告する。
「全滅しました!」
「このウスノロがァー! もういい、逃げろ!」
魔法戦士は怒鳴った。こっちもヤケクソだった。
だが不運。
マリンボーズが旋回すると、海上に立つ機体が待ち構えていた!
「逃がしはしないぞ!」
その声はスフィル王子。
乗る機体は青い鎧の騎士。右手には三又槍、左手には束ねたネット。そして頭は巨大なT字の金属塊。
「おお、あれはSハンマーヘッド! 修理が終わっていたんだね」
艦のブリッジでエウリュア女王が喜んだ。
王子の愛機であり、この国でも最も強力なケイオス・ウォリアー。真魔怪大隊との戦いで大破し、敗走を余儀なくされていたのだが、王子が海岸の洞窟に隠して密かに修理していたのである。
その操縦席で王子も変身していた。獣人シュモクザメの姿を露わにし、全身の肌が鮫肌になって頭部が金槌のような形になる。
「カセブカバッシャー!」
怒りの声と共に機体の頭部が90度回転。破壊のオーラが生じ、その頭部で渾身の頭突きを見舞った!
マリンボーズの装甲が紙のごとくひしゃげて凹み、その内側へ浸透した破壊力が内部機構を打ち砕く!
強打されて揺れるマリンボーズ。
さらに上空からイーグルの手裏剣が無数に、海岸からはサンライザーの破壊光線が放たれた。
戦艦Cバエナガメランもようやく大勢を立て直し、波打ち際からプラズマ火球を吐く。
ハイマウンテン勢の総攻撃で、マリンボーズはあちこちから火を吹いた。
なおもう三機ほどハイマウンテン勢はいるが、それらは高波にさらわれて海底でもがいているので、攻撃に参加するのはちょっと無理だ。
まぁキラー達だけでも威力は十分。マリンボーズのブリッジモニターに表示されているHPがついに0となる。
「く、クッソー! ケイオス・ウォリアーに乗れれば‥‥」
無念に歯軋りする魔法戦士。
だがマリンボーズは一際大きな爆炎をあげ、半分が吹き飛び、ゆっくり沈没していった。
上空ではイーグルが腕組みしながら、敵艦の最期を見下ろす。
その操縦席でキラーが冷たく呟いた。
「闇の中で寂静せよ」
設定解説
・ケイオス・ウォリアーに乗れれば‥‥
乗れなかった以上は無駄な仮定だ。
実戦において、敵の得意手や切り札は使わせない事が肝心。あえて全力を引き出してやる手心などニンジャには無い。
真のニンジャは完全なる非情なのだ。




