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4 虜囚解放の巻 3

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。

セファラス女王:カパード国の女王。ハダカデバネズミ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

——アーマルベン国、沖の海——



 海面から伸びる潜望鏡が、波の間から、海岸にある港街を窺っていた。

 それを伸ばしているのは海中のCバエナガメラン。

 ブリッジのメインモニターには街の様子が映し出されている。

「あれがアーマルベンか‥‥」

 呟くキラーの声には怪しむような響きがあった。


「誰もいませんね?」

 キャシャロットが言う通り、街の中には人の姿が見当たらない。

「鎖国状態ですし、船が少ないし‥‥何か異常ですね」

 ティア姫の声には怯えがあった。

 そして彼女の言う通り、この国は今、外との交流を閉ざしているのだ。国境の関所は閉ざされ、艦が近づくと威嚇射撃を受けた。交渉しようにも回線を開かない。

 やむなくバエナガメランで海中に潜航し、首都に近づいてみた。

 そして観察してみると、人はいない。港の船も明らかに少ない。残っている船にも人がいる様子は無い。

 モニターを見つつ、サイシュウが溜息一つ。

「行ってみるかしないか?」



——翌日、昼前——



 街はずれ、都を囲む防壁のすぐ内側‥‥物陰の地面に穴が開き、そこから白い頭がひょっこり突き出される。

 それは変身したセファラス女王。獣人(ワー)ハダカデバネズミの能力で、防壁の外からトンネルを掘ったのである。

 人気(ひとけ)がない事を確認すると、セファラスは地上に出た。彼女が人間の姿になっている間に、後をついて来たキラー達もぞろぞろと地上に出る。

 キャシャロットが芋ジャージをセファラスに渡した。獣化状態から人の姿に戻ったセファラスは全裸だったからだ。彼女が着替えている間に、キラーは物陰から街の様子を窺う。



 港から入ろうとしても、バエナガメランの巨体で気づかれないのは無理だ。

 よって離れた所から上陸し、壁の外からセファラスにトンネルを掘らせて中へ入る事にしたのだが‥‥とにかく誰にも気づかれない場所と時間を選んで行動した結果、潜入するだけで一日が経過してしまった。



 視界に広がるのは街はずれの寂しい路地で、誰もいない。

 貧民街の傾いた家屋が並んでいるが‥‥そこにも人の気配が無い。

「どういう事だ? どこかに強制連行でもされたのか?」

 首を傾げるアリン。



※「連行」という言葉には連れていかれる者の意思を無視する意も含むので、「強制」という語をつけるのは「頭痛が痛い」的な重言ではなかろうか。



 だがキラーは言葉の意味を考えるよりも耳を研ぎ澄ます。

 そして、身振りで皆について来るよう促した。

「どうしたのだ?」

 訊ねるマンドリオに一言。

「声が聞こえる」

 サイシュウが「ふむ」と呟いた。

「行ってみるか」



 着いた所は大きな酒場。表通りに面した中々立派な店‥‥だが、その裏口である。

 そこまで来ると、中からの煩い馬鹿騒ぎが全員に聞こえていた。

「港から見える範囲に人がいなかっただけなのか?」

 アリンが呟く‥‥と、いきなり裏口が開いた。

 ふらふらと出てくるのは、明らかに酔った二匹のゴブリン。粗末な革鎧は魔王軍の雑兵が使っている物だ。

 二匹は壁に向かってズボンを下し、連れ小便しようとして——当然、キラー達に気付いた。


 実はゴブリンが振り向いた時、キラーは咄嗟に姿を消したのだが、他の者がその場に残っていれば同じ事だ。

「おお? 誰だ!」

「テメーら! どこかの冒険者どもか?」

 巻き散らしながら喚きだすゴブリン。

 すぐに店の中から、手に手に得物を握った下級の魔物兵どもが現れた。総勢二~三十匹はいる。

「ヘッヘッヘ、何をしに来たのか知らんが‥‥」

 涎を垂らして笑うトロール鬼の兵士。雰囲気からしてこの場の大将だろう。


 だがその首が後ろから刎ねられた。

 魔物どもが「えっ」と驚いて見たのは、倒れるトロールの後ろに立つキラーの姿。


 バックスタブ——盗賊系の攻撃技で、物陰を利用して敵の後ろから奇襲する攻撃。当然、ニンジャのキラーも使う事ができる‥‥そこらの盗賊とは段違いの威力で。


 それを皮切りに、サイシュウ・アリン・マンドリオの三人も魔物兵に打ちかかった。



「お、おかしいだろ! 普通は大勢に見つかったお前らが逃げ回る所じゃねーのか!?」

 死屍累々となった路地裏で、最後のオーク兵が泣き叫んだ。

 他の魔物兵はあっさり全滅。キラー達四人の方が遥かに腕が立つ事、半端に狭い路地裏では人数が多くてもたいして役に立たなかった事。そのせいで戦いは一方的だった。

 キャシャロットが変身するには狭いし、セファラスは生身での戦闘を苦手としているので、この二人は戦闘に加わらなかったが、全く問題になっていない。

 オーク兵にキラーは刃を向ける。

「投降して俺達に従え。断ればお前は死ぬ」


 一瞬の迷いもなく、得物を放り投げて膝をつき気持ちの悪い愛想笑いを浮かべて諂うオーク兵。

「ウェッヘッヘ。尻でもお親玉の居場所でも、何でも差し出しますぜ。大将」


 直後。オーク兵の眉間に矢が刺さった。


 倒れるオーク兵。振り返るキラー達。

 路地の向こうにダークエルフの弓兵がおり、その後ろには魔王軍の鎧を着た魔物の兵どもが‥‥!


「増援か。まだまだ来るようだな」

「フン、ここで全滅させるまで遊んでやろうか」

 マンドリオが呟き、アリンが笑って剣を構える。

 しかし‥‥



「こっちだよ」

 横手の路地から声がかかった。

 フードマントの小柄な人物が、ついて来いと身振りで招いている。


 皆が戸惑う——が、キラーだけはフードマントの方へ走った。

 それを見てフードマントは入り組んだ路地の中を走り出す。

「迷っている暇は無いな」

 サイシュウはそう言い、フードマントとキラーを見失うまいと走りだした。他の者は顔を見合わせた後、全員でそれに続く。

 魔物兵どもの怒声を背に、路地での追いかけっこが始まった——。

設定解説


・キャシャロットが芋ジャージをセファラスに渡した


もちろんファンタジー異世界のインタセクシルに芋ジャージがあるとは思えない。

だが「日本語で表現するならそうなる」という服ならまぁ有っても不自然ではないだろう。

なおなぜ替えの服として渡すのがコレなのかは、渡したキャシャロットが私服にしているからだと思われる。

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