その頃、別の場所にて 4
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
――人里離れた山中の塔——
大きな部屋の床、中央に魔法陣がある。数人の人間が同時に余裕をもって入る事のできる物が。
それが輝き――魔術師が一人、魔法陣に現れた。
光が収まり、彼は外へ出る。それを迎えるのは、部下の一人・黒い毛並みの虎獣人戦士。
虎獣人は魔術師——真魔怪大隊首領・スターゲイザーに頭を下げた。
「お疲れ様です。どうでしたか?」
「思い通りにいかん国もあるな。予想の範疇ではあるが」
スターゲイザーは面白くなさそうだ。
頷く虎獣人。その顔にははっきりと苛立ちが見える。
「あの国はいう事を聞かないだろう、とは思っていました。我が故郷ながら忌々しい国です」
世の中、郷土愛に満ちた者ばかりではない。
中には故郷を良く思わず、見切りをつけた者もいるのだ。
そんな獣人には、元魔王軍残党に身を寄せる者も。
スターゲイザーは他の地域の進捗を尋ねる。
「上位竜はどうなっている?」
「まだ捕らえられません。あの女に口を割らせる事さえできていれば‥‥」
恐縮する虎獣人。
進行が芳しくない事で不興をかわないか恐れている、が‥‥スターゲイザーには怒る様子などなく、腕組みして「ふうむ」と静かに呟いた。
「見つかりさえすれば、今の私なら捕獲できる自信はあるのだがな」
その言葉を、虎獣人は全く疑っていない。
上位竜はある種の神だ。
だが、今のスターゲイザーは‥‥その力は、ある種の神なのだ。
だから虎獣人は、首領に竜神の居場所を報告できない不手際を改めて詫びた。
「すいません。聖勇士に指揮を任せて続けさせています」
首領スターゲイザーは、そこでふと思い出したようだった。
「聖勇士と言えば‥‥ハイマウンテン国に逃げ込んだ奴が思った以上に面倒を起こしているようだな」
それについては虎獣人も知っている。
首領自らが召喚した者達だ。本来ならこちらの手駒になる筈だった者達なのだ。
そいつらが厄介な奴と手を組んだ事を、虎獣人は知っていた。だからそれを報告した。
「元最強部隊のカマセイル隊が味方についたようでして‥‥」
そうでなければ、どこかで冒険者として小さな仕事を細々する事しかできなかっただろう。
一緒に召喚された連中が何人か、真魔怪大隊にもいる。平和な世界から来た甘ったれたガキどもだ。そいつらを見るに、元カマセイル隊の戦士さえいなければ何の脅威でも無い筈だ。
虎獣人はそう思うのだが‥‥スタゲイザーは考え事をしながら呟く。
「本当にその程度なら恐れるには足らないのだがな」
「は?」
首領が何を言いたいのか。
虎獣人にはわからない。
「場合によっては放ってはおかん。情報を集めておけ」
結局、それがスターゲイザーの指示だった。
「は、はっ!」
了解する虎獣人。
元カマセイル隊の戦士は魔王軍との最終決戦に乗り込み、最強最後の四天王を討ったメンバーの一人である。警戒するに越した事はない。
「一度帰宅する。明日の日の出には戻る」
そう言ってスターゲイザーは部屋を出て行った。
虎獣人は頭を下げたままそれを見送る。
首領がどこに住んでいるのか、彼は知らない。
この塔以外のどこか。それは確かだ。
詮索などする気は無い。まだ命は惜しいのだ。
かつて世界を滅ぼしかけた魔王軍の、いかな魔術師をも超えた魔力を身に着けた魔術師。
ただそれだけで、虎獣人には、そして真魔怪大隊の者達には十分だった。
スターゲイザーの家を城にするか洋館にするかダンボールハウスにするか、この話の時点ではまだ考案中だった。




