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3 地下で渦巻く陰謀の巻 9

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

ディナル:キラーとその邸宅を世話する専属メイド。外見年齢は十代。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。マッコウクジラ獣人。

——ハイマウンテン城・中庭の隅にあるキラー邸——



 やや古ぼけた一軒家のコテージに、キラーは戻って来た。

 中に入ると‥‥


「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 メイドのディナルが笑顔で明るく出迎えた。

 軽く一礼してから背筋を伸ばし、両の手を胸の前で握る。

 その上着も短くなっており、ヘソの辺りの腹部が露出していた‥‥が、本人はそれを気にしている様子は無い。


 スカートも短いままなので、白い肌の見ている部分がまた広がった事になる。


 だがそんな事は全く気にした様子はなく、キラーは隣にいるキャシャロットを紹介した。

「新人だ。今日から仲良くやってくれ」

「よろしく」

 キャシャロットは丁寧に一礼。顔を上げてから三白眼で先輩を上から下までじろじろ眺める。

 その顔にはどこか呆れたような様子もあった。


「あ゛あ゛あ゛あ゛!?」

 大口を開けてディナルがわななく。

 大きな瞳は見開かれ、小さな後輩を信じられない——というより信じたくない——思いでいっぱいだ。


「?」

 怪訝な顔をするキラー。

「‥‥」

 ジト目を向けるキャシャロット。

 そこでディナルはハッと我にかえり、滝汗を流しながら大慌てて笑顔を作る。

「わ、わっかりましたぁ! うわーカワイイなー。私、妹が欲しかったんですぅ。よろしくね!」

「よろしくです」

 そうは言うものの、キャシャロットは呆れているようだった。

 特に動じるような事もなく、キラーは奥のテーブルに向かう。

「中で経緯を話そう」



——その日の夕刻、キッチンにて——



 キラーには「お疲れ様でした、お休みなさい」と声をかけて部屋へ送り、キャシャロットには「遠征の後でしょう? お手伝いは明日からお願いね」と言って寝室に送って休ませて。

 ディナルは一人、夕食を作っていた。


 ギリギリと奥歯を噛み、憤怒で額に血管を何本も浮かせながら。


「なんなんだよ同僚ってよー! 英雄に寵愛されて立場も収入も爆増の楽チン生活計画に邪魔者が来てるじゃねーかッ! ミニスカもヘソ出しも効かねーしよー!」

 涼しい地方なのに露出を増やした苦労が全く報われず、その怒りがマスを捌く手に無駄な力を籠める。

 だがマスを微塵切りにする前に、彼女は「ハッ!」と嫌な事に気づいた。


「まさか‥‥幼女が趣味だったのか!?」


 だとすれば彼女は大きく不利である。

 種族の特徴により、彼女は歳の割には若く見えるのだが‥‥流石にミドルティーンぐらいの外見にはなっている。

 そして嫌な予感は膨らみ、別の可能性にも「ハッ!」と気づいた。


「或いは同郷から来たというパツキンの女か?」


 だとすれば彼女は大きく不利である。

 同郷の仲間意識に変わる武器がディナルにあるかどうかは怪しい所だ。ソフィアは人付き合いも良くするようなので、キラーにも職場で親しく接しているだろうと思えた。

 そしてさらに嫌な予感は膨らみ、別の可能性にも「ハッ!」と気づいた。


「ま、まさか! 特訓といってしょっちゅう一緒にいるあの猫背HAGEか!?」


 だとすれば彼女は大きく不利である。

 キラーが同性愛者だった場合、もはや打つ手は無い。勝負の土台にもいなかった事になる。

 嫌な予感は膨らみ続け、様々な可能性が焦りと怒りをとめどなく湧き上がらせる。ビキビキと浮いた血管でディナルの額はもはやマスクメロンだ。

「お、おのれ‥‥どいつが私の敵なんだ? 次の手はどう打てば?」


「とりあえずイカ焼きを晩御飯に加えましょう」

「オイエッーっーッー!?」

 後ろから唐突にわいた声に、ディナルは奇声をあげて仰け反った。

 驚きのあまり頭部だけ獣化し、ぬ゛ぬ゛っとホライモリの細長い頭を回して振り返る。


 キャシャロットがジト目で下から見上げていた。


「なんなら私が作りますが。いいですか?」

 慌てて頭部を人間の物に戻すディナル。

 チャーミングだと自分で思う笑顔を必死に作り、首を上下にブンブン振った。

「いいい、良イネ! ワタシもイカヤキがタベたイナー。大好物ウ!」

「心からの同意、ありがとうございます」

 上ずった声で同意してくれる先輩をジト目で見つめつつ、キャシャロットは一礼した。



 その後、ディナルが料理を作る横で、キャシャロットは慣れた手つきで上手にイカを切り、串を打って焼いた。

 イカ焼きだ(・)け(・)を三人まえ完璧に仕上げると、キャシャロットはそれをテーブルに並べる。


「そろそろご主人様を呼んできますね」

 ディナルが他のメニューを仕上げたのを確認し、キャシャロットはそう言ってキラーの部屋へ向かおうとした。

 だがその前にと、くるりと振り返って一言。


「上手くいくといいですね。頑張ってください」


 冷めたような呆れたような顔で言うと、今度こそキラーを呼びに行った。


 ディナルは歯軋りする。

 額は再びマスクメロンになっていた。

「グギギギギ‥‥」


 彼女の戦いはまだ続く——。

ディナルもキャシャロットも、種族は違えど幼形成熟するという外見特徴がある。

だから十代の頃のディナルも今のキャシャロットと外見年齢は変わらなかった。

しかし実年齢の差から、この話の時点では二人の見かけにも差が生じている。

それでもディナルの外見・身体特徴は実年齢より10歳以上若いのだが‥‥。

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