3 地下で渦巻く陰謀の巻 5
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。
オールバックに横を刈上げというヘアスタイルの、目つきの悪い少年。
彼はキラーへ訊いてきた。
「お前、スターゲイザーに塔へ召喚された奴だろ?」
「‥‥あんたもか。そしてその手下になったと?」
肯定しながら訊くキラーに、少年は口元をニヤつかせる。
「まぁな。この連合を征服する、手柄立てた奴には金も地位も望むまま‥‥とか言われてよ。どうせ家も地元も卒業したらすぐ出るつもりだったし、丁度いいやと思ってな」
オールバックの少年はセファラス女王へ視線を移した。
「いいザマだな、女王サマ。俺がイケメンじゃねぇからって別室待機なんぞ命じやがって。クソが」
そう言って左腕を突き出す。
「【大地の領域、第三の段位。土と砂は波となる。波は敵を飲み込む】——アースプレス!」
呪文の詠唱である。
床が砕けると土砂が舞い上がり、キラーと女王へ降り注いでもろともに圧し潰した!
狼狽えるダークエルフ達。
「貴様、女王に!?」
「うるせぇ、落ち着け! あいつなら大丈夫だろうが!」
怒鳴るオールバック。
すると彼のすぐ側の床が砕け、地面の中から白い獣の顔が突き出される。
「だからって攻撃魔法なんぞ撃ちよって‥‥」
不満げにそう呟く声は、確かにセファラス女王だ。
しかし無毛で厚い皮、つぶらな瞳、巨大な出っ歯。
女王は獣人ハダカデバネズミだったのである。
※カパード国は地下棲の獣人達の国だ。
キラーは現在地を「城の地下道」だと思っていたが、実は逆で、城は元々大きな地下道であり、地上部分の大半は倉庫なのである。
女王が逃げた一方で、キラーは下半身が土砂に埋まった状態でうつ伏せに倒れていた。
オールバックはキラーへ一切の躊躇なく攻撃を仕掛けたのだ——真魔怪大隊の魔法戦士として。
彼がニヤニヤと笑う。
「さあ、降参するよな?」
顔も上げず、キラーの答えは一言。
「断る」
「あっそう。じゃあバイバイだな」
オールバックはあっさり言うと剣を抜いた。
数人のダークエルフと共にキラーへ近づき‥‥その身を刺し貫く!
途端、爆発が起こった!
あがる絶叫、吹き飛ぶ土砂!
「なんじゃー!?」
爆風に頭を揺さぶられて叫ぶ女王。
土煙の中、キラーはゆっくりと立ち上がった。
至近距離で爆炎を浴び、致命傷を負って倒れた周囲の犠牲者達を冷たく見下ろす。
「邪道爆殺人形(けい・けい・けい)‥‥」
※土砂から出ていた上半身は、土に黒い布を被せただけの偽物である。
その中に爆薬を仕込み、キラー本人は土砂の中に身を潜めていたのだ。これは空蝉の術という古来からの忍法の応用である。
死を偽装しての罠など、ニンジャにとっては基本中の基本。
ニンジャの世界では常識など一切通用しない——常識は通用しないのだ!
無残に転がる魔王軍のダークエルフ達。
キラーは黙ってそれらを見渡した。
一切の油断なく完膚なきまでに吹っ飛ばしたのはまぁ良かったが‥‥同郷人のオールバックがどれなのか、ちょっと見分けがつかなくなっている。
(‥‥まぁ、情報は女王に聞けばいいだろう)
冷静な結論に至り、キラーは女王へ視線を移した。
「聞きたい事がある。この国の窮状だが、魔王軍に金でも渡しているのか?」
「一応、イケメンどもと聖勇士の人件費を‥‥」
「どんだけふんだくられればこの国はこんな貧乏になるんです?」
震えながら巨大な出っ歯をガチガチ鳴らす王女の言い分を聞き、キャシャロットがジト目で呟いた。
「あと、まぁ、帝王になって言い値で売る時のため、今は鉱石の輸出をストップして貯めこんでるから‥‥ちょっと関係あるかも‥‥」
「余計な出費して収入は途絶えてんですか」
震えながら巨大な出っ歯をガチガチ鳴らす王女の言い分を聞き、キャシャロットがジト目で呟いた。
そんなキャシャロットへ、ダークエルフの一人——キラーに近づかず爆発へ巻き込まれなかった者——が剣を突き付ける。
そしてキラーへ叫んだ。
「き、貴様が人質を失った事に変わりは無いぞ! こっちにはまだこのメイドが‥‥」
直後、そいつを含めたダークエルフ達が、黒い塊に激突して吹き飛ばされた。
その黒い塊は‥‥広い部屋の大半を埋め、壁や天井に亀裂を走らせる、体長10メートルを超える巨体。
それはクジラだ。顎の下から突き出た太い二本の足で立ってはいるが、それ以外は長方形の頭を持つクジラである。
しかしその体はするすると縮み、すぐに全裸のキャシャロットになった。
潰された家具から適当に服——女王の私物――を引っ張り出すと、彼女は遠慮なくそれを着る。
キャシャロットは獣人抹香鯨だった。頭の横の、肉厚な黒い耳に見えた物はヒレだったのだ。
奴隷屋に自分を気軽に売れたのも、剣を突き付けられて平然としていたのも、いつでも逃げ出せる自信があったからである。
ついに全滅した魔王軍からの派遣戦士達。
女王は頭だけを地面から出した状態で叫んだ。
「ち、ちくしょう!」
そして地中に引っ込んでしまう。
フリルの多い装飾過多なドレスを着て、キラーを見上げるキャシャロット。
「逃げられましたね」
「こちらも出るぞ。魔王軍と手を結んでいる事はわかった。この城を制圧する」
そう答え、キラーは傾いた部屋の入口へ身を翻した。
大型のクジラって陸にあげたら自重で内臓潰れて死ぬらしいな。
完全に浮力ありきの体になっていて、陸ではそもそも生きていけないとか(まぁ種類にもよるんだろうが)。
よってワーマッコウクジラという生物が地上で変身したら死ぬんじゃないかと思うが「骨が変形・皮膚が変質・サイズも変化」するようなバケモノが物理法則に従っているとも思えないので気にしない事にした。
足も体の真ん中ぐらいの位置から生えている事にしたぞ。
クジラの「腰」はもっと後ろにある筈なんだがな。




