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3 地下で渦巻く陰謀の巻 4

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

キャシャロット:カパード国でキラーに買われた元メイドの奴隷少女。

 呼吸音の正体——それはいくつも並ぶ藁布団で寝ている使用人達だった。広い部屋にカーテンの仕切り、それを挟んで男女に別れ、皆が眠りについている。

 離れは使用人達の宿舎だった。


(こんな所に地下への入り口だと?)

 キラーは疑問に思ったが、キャシャロットはずかずか中に入ると、入り口側の下り階段を指さした。



——城の地下——



 広い地下通路を歩くキャシャロット。宿舎で調達した酒瓶をお盆に乗せ、一(・)人(・)で黙々と通路を進む。

 時折、巡回の兵とすれ違うが、メイドが酒を運んでいるのを彼らは気にも留めなかった。

 やがて彼女は大きく豪華な扉の前で立ち止まる。中からは乱痴気騒ぎの喧噪が漏れ聞こえていた。

 彼女はノックして「失礼します」と言うと、扉をそっと押し開ける。


 果たして、中は主演の真っ最中。

 時刻は明け方ごろだが、窓も無い地下では気にもされないらしい。

 部屋には大勢の男達がワイングラスを手に歓談しており、中央には豪華なソファにもたれた少女が一人。


 少女は抜けるような白い肌に長い銀髪で、着ている物はどこか東洋風の上等な着物。金のティアラに赤い瞳と、ランプの灯りが頼りの地下世界において輝きがそこに集まったかのようだ。

 外見は幼く、ローティーンにしか見えないが、手には酒のグラス。種族的な特徴で幼く見えるだけで、本当は成人しているのだろう。

 両側頭部、獣人ならケモノ耳のある辺りには、白い石灰質の、緩やかに湾曲した短い角がついている。それはやはりこの少女が獣人の一種である証なのだ。


 そんな少女を取り巻いているのは‥‥褐色肌の男達。武装し帯剣しているが、無骨さはいっさいなく、どれもこれも見目麗しい美青年である。

 男達は一様に耳が尖っていた。彼らはダークエルフ‥‥悪や闇の勢力に属し、剣と魔法を両方得意とする、人類への敵対種族なのだ。



 ダークエルフの一人がキャシャロットに近づく。口に笑みを浮かべていたが、目は笑っていなかった。

「丁度、次の酒が欲しかったんだ。でもおかしいな。ここに立ち入って良い娘は皆覚えたつもりだが、君の顔には見覚えが無い」

 キャシャロットの肩が掴まれ、強引に部屋へ連れ込まれた。

 中央の少女が爛れた笑みを浮かべる。

「何かの手違いで来てしまったようじゃな。まぁたっぷり楽しんでおいき。二度と陽の当たる所へ出られぬ代わり、色と酒に思い切り溺れさせてあげるからのう」

 ダークエルフ達が笑った。整った顔だが、浮かぶ笑顔は陰湿だった。



 だがしかし。

 白い少女はその笑顔を凍らせた。彼女の背後から喉元へ刃を突き付ける者があったのだ!

「この娘がこの国のトップだな?」

「ええ、現カパード国の女王・セファラス様です」

 答えたのはキャシャロット。

 セファラス女王の背後に回り、喉に短刀を突き付けているキラーへ。



 キラーは地下に入ってからずっと、天井を這ってキャシャロットへ着いて来た。

 この部屋へは、皆の注意がキャシャロットへ向いている間に入り、真上から女王の背後へ跳び下りたのである。



「おい忍者。女王を人質にとったつもりか? ならばこちらはこのメイドに同じ事をするだけだぞ」

 ダークエルフの一人が抜刀し、キャシャロットの顔に突きつけた。

 しかしキラーの目も声も冷たい。

「そのメイドが死んでも俺の任務は失敗しない。だがこの女王が死ねば、貴様らはこの国を利用できなくなるのではないか?」


 剣を持つダークエルフがギリリと奥歯を噛んだ。

 キャシャロットは——何を考えているのか、平然と落ち着いたままだ。

 一方、セファラス女王は「ひっ!」と悲鳴をあげる。

「ど、どこの手の者じゃ? 金で動くなら話をしよう」


 キラーは腕を女王の首に回し、より強くホールドする。

「質問するのは俺だ。このダークエルフどもは魔王軍の残党だな?」

「あ、うん、まぁ‥‥」

「なぜ手を組んだ?」

「そ、そりゃ新帝王を決める次期じゃし。我が国は鉱石の産地だけど、最近は買い叩かれ気味だから、ここらで帝王になって言い値で買わせまくりたいなーって‥‥」


 女王の言い分に、キャシャロットがじ(・)と(・)目を向ける。

「なお値切られるのは各国とも台所事情が厳しいからです。主に魔王軍との長年に渡る戦いのせいで」


「だ、だから魔王軍が手助けてしてくれるなら、責任とらせる的な話で道理が通るかなって!」

 どこに通るのかわからない言い分を聞き、キラーは周囲のダークエルフを見渡した。

「このダークエルフどもが、その手助け‥‥戦力というわけか」

 女王の声がごにょごにょと小さくなる。

「あ、いや、これは私がイケメンいっぱい欲しかったから‥‥お楽しみ要員として派遣してもらったというか‥‥」


 キラーの刃が王女の肌に触れた。

「では魔王軍の手助けとは、どんな形でだ?」

 王女は「ひっ!」と呻き、慄きながらぺらぺらと喋った。

「どこかと戦争になったら聖勇士(パラディン)何人も用意してくれるって‥‥前から約束してたし! 今日、一人持って来てくれたし!」



 と、そこへ割って入る男の声。

「で、その一人が俺な」

 入り口から堂々と、王女の身を案じた様子もなく入って来たのは、キラーと同じ歳ぐらいの青年。

 ダークエルフ達と同じような武具を装備しているが、人間である。

 と、その青年がキラーを怪訝な目で見た。

「ん? なんか見覚えあるな‥‥お前も(・)ハイキング途中に召喚された奴の一人か?」


 それを聞いてキラーにはわかった。

(俺の、同級生!)

【登場キャラ解説】

地下国の女王 セファラス=グラーバー

 カパード国を治める、地下棲獣人達の女王。

 魔王軍残党と手を組み、自国の戦力を強化していた。ゆくゆくはヘイゴー連合の頂点に立ち、特産の鉱石を言い値で国内中に買わせる事を目論んでいた。


 享楽的な性格で、魔王軍残党から出向させたのは主に見目麗しきダークエルフの魔法戦士達。

 異界から召喚された強力な聖勇士(パラディン)も「ツラがマズいから」という理由で別室待機させる自分に正直な一面がある。

 戦(いくさ)となれば自らも専用機Sモールラットに乗り、防御命中型の特性と地下からの奇襲、異空間に適応の無い機体の能力を激減させる【酸素半減空間】という特殊結界を使って戦う。

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