3 地下で渦巻く陰謀の巻 3
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。
ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。
サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。
スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
——その日の夜。ロクに客もいない、壁の痛みが目立つ宿屋の一室で——
キラーが連れ帰ったメイド娘を見てサイシュウが呆れる。
「はあ? なんだそいつは。そんな奴のどこ見て金出す気になって買ったんだ」
「うるせー奴ですね‥‥」
娘は大きな目玉でギョロリと睨んだ。
サイシュウが駄目だしをしたのは、彼の好みの体型とほぼ反対だからだ。
見た目はローティーン、頭が大きく背が低い寸胴。黒いメイド服を来てはいるが、どうにも幼く見える。
首下までの長めのボブカットにした黒髪には、両サイドに獣人らしく垂れた三角の肉厚な耳のような物がある。
大きな三白眼をギョロギョロと動かして一行を窺いつつ、ギザ歯でガジガジとイカ焼きを齧り食っていた。
「王城に勤めていたそうなので」
キラーが説明すると、メイドの少女はイカ焼きを咀嚼し、飲み込む。
「キャシャロットです。よろしく」
そして今度はイカ焼きの包みを取り出すと、それを貪り食い出した。
※奴隷少女は甘い物を食わせれば懐く、という知識により、キラーは屋台で菓子を買おうとした。
するとキャシャロットは迷う事なくイカ焼きの屋台にキラーを引っ張って行ったのである。
なおイカの丸焼きに串を刺すイカ焼きと、小麦粉の生地に卵とイカの切り身を入れて焼くイカ焼きの両方が別々の屋台で売られていたが、キャシャロットは迷う事なく両方を買わせた。
「なるほど、城にいた人間から情報を得たかったのですな」
マンドリオは納得したようだが、アリンは疑いの目をキャシャロットへ向ける。
「でもなあ。プロの間者でも闇に葬られたんだろ。メイドが魔王軍の動向なんて知ってるか?」
「それらしい奴らなら見ましたよ。スパイが始末される所を目撃しましたし」
イカ焼きを食いちぎりながら、キャシャロットはあっさりとそう告げた。
驚きでキラー達の動きが止まる。
イカ焼きの残りを齧ったまま、キャシャロットはギョロリと一行を見渡した。
「案内すればいいですか?」
——王城の堀にて——
「あそこの下に潜れば抜け穴があります」
夜明け前にキャシャロットが案内したのは、城の堀からすぐ側の川へと繋がる水路だった。
指さす先には網状に組まれた鉄格子があり、堀と川を隔てている。
侵入者除けの鉄格子なので、当然、人が通れる隙間ではない。
「底付近に錆びて弱った箇所がありまして。格子が外れて人が通れる隙間が一カ所あるんです。気づいているのは私だけでしょうが」
「そうか‥‥なぜそんな抜け穴に気づいた?」
キラーが不思議に思うのも当然。浅い川ではないので、底など地上からは見えない。わざわざ水の底へ潜らねば気づかない筈だ。
しかしキャシャロットは澄ました顔で――
「そりゃそこから出ましたから。魔王軍残党を見た日、宿舎に戻っても殺されるかもしれないと思いまして。しかし出て行こうにも、夜だったから門も閉まっていたし。で、日が昇るまで隠れてようと水に潜ったんですが、そこで見つけたという次第です」
サイシュウが首を傾げる。
「捕まったわけじゃねぇのか。ならなんで奴隷屋で売られていたんだ?」
「着のみ着のままで出てきましたから、路銀が無く。ついでに次の就職先も探そうと、まぁ手っ取り早そうな所へ身を売りました」
「じ、自分からか‥‥」
キャシャロットの話に、アリンやマンドリオも驚きと哀れみの目を向けた。
この世界の奴隷にも種類や上下があり、離職や居住の自由が無いといった程度の暮らしをおくる者達もいる。身に着けた知識や技能次第では、その有用性を認められ、悪くない待遇の住み込み労働者として暮らす者もいる。
しかし「他人に所有されて生殺与奪の権利を握られている者」ではある。なんだかんだで大半は、息をしている道具か言葉を喋るペットだ。それでも自分から奴隷として身を売るのは、その方が死よりはマシと考えるほど困窮した者ぐらいなのだ。
だがキャシャロットは平気な顔だった。
「で、いつ行きます?」
自分への視線を気にもせずそう訊いてくる。
「格子が一本外れていたって、俺は通れないでしょうな」
「わ、私も鎧があるから‥‥」
マンドリオとアリンが難色を示す。
「オレの能力なら邪魔な格子を数本消して通れるが‥‥そもそも水に潜りたくねぇ。行くとなればキラーとこの娘だけになるぜ?」
サイシュウはそう言ってキラーを窺った。
キラーは――
「潜入も忍者の仕事だ。行きますよ」
迷いも躊躇も無かった。
——城の庭——
誰もいない事を気配で探り、キラーは堀の壁を登りきった。そこは城の庭、茂みの中だ。
肩にはストライク。そして背中にはキャシャロット。
※庭から堀の水面までは5メートル以上の差がある。逃げる時は飛び込んだキャシャロットだが、入るとなると堀を登る手段が無かったのだ。
よってキラーに背負われる事になったのである。
茂みから外を窺うと、目の前には離れの小屋の壁。そしてそこには裏口が。
「小屋の中の地下通路から城へ行けます」
キラーの背中でキャシャロットが囁く。
一度頷くと、キラーは裏口へ、足音一つ立てずに駆け寄った。
当然のように鍵がかかっている。
当然のようにキラーは数本の針金を取り出し、鍵穴へ突っ込むと、一分もしないで開錠してしまった。
忍者は盗賊系の上級職なので、盗賊の技能も習得しているのだ。
キラーは音もたてずに扉を開ける。
暗闇の奥から響く微かな呼吸音を、キラーの耳は捉えていた‥‥。
【登場キャラ解説】
元奴隷のメイド キャシャロット
カパード国でキラーに買われた元城仕えのメイドだった奴隷だったメイドの少女。
親のせいで実家が傾いたため行商人の所へ丁稚奉公に出るも、その商人によって隣国で売られ、城仕えのメイドとなる。
だがそこで魔王軍残党が入り込んでいるのを見かけてしまい、危険にあうよりはと城を脱走。行く充ても無いので奴隷屋に自らを売る。そこを主人公・キラーに買われ、彼に仕えるメイドとなった。
常に落ち着いた性格で、滅多に取り乱さない。
特殊な石からアイテムをランダム生成する魔法の壺を作る技術があり、一部の味方への戦力供給も行う。




