3 地下で渦巻く陰謀の巻 2
登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)
キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。
ストライク:森で見つけたカメレオン。
サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。
アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。
「えらく荒れた国だな‥‥」
そのサイシュウの呟きが、キラーの感想そのままだった。
艦を国境の外へ残し、旅の冒険者パーティに扮して――まぁフードマントを羽織っただけだが――カパード国へ入ったキラー、サイシュウ、アリン、マンドリオの四人。
ここも都市と呼べるのは一つしかない小国であり、その首都までも国境から半日かからなかった。
それにしてもなぜ都まで来たのか。
それはニスケー国の間者とコンタクトできなかったからである。
潜り込ませていた間者が二~三人いたのだが、誰とも連絡がとれなくなっており、国境まで呼び出そうにも応答が無かった。
さては敵に始末されたかと疑いつつ、この四人が都の様子を探りに来たのだ。
だがその都は——
荒れた岩山に囲まれた、乾いた風が寂しく吹いている街。
大通りになのに人は少なく、並ぶ商店の棚は半分ほどが空だ。
歩く人々も俯き加減で、表情は暗い。
路地や公園には、何人もの浮浪者や仕事のない日雇いが座り込み、薄汚れた酒瓶を手にしていた。
屋台の飲み屋で、突っ伏した男が泣くような声で喚く。
「もう我慢できねぇ! 一揆だ! 蓆旗を立てるんだ!」
「よせよせ、強訴は死罪じゃぞ」
そう慰める店主の顔も暗い。
埃と砂が混ざる風の中を歩きながら、アリンが「はぁ」と溜息をつく。
「こんな所が戦なんてやれるのか?」
「まともにやれんからこそ、水面下で妙な事をしているのかもしれぬ」
マンドリオは依然として警戒の目を周囲に向けていた。
そんな中、キラーは一つの店を見て、驚きに足を止める。
店の看板によれば——
「奴隷屋‥‥?」
こんな物が大通りに店を構えているとは?
だが他の三人に驚いている者はいなかった。
「珍しいか? キラーの故郷には無かったのか」
アリンの言葉でキラーは合点がいった。
この世界では、奴隷制度は特に問題視される物ではないらしい。そういう文化なのだろう。
「一応言っとくが、合法な国は少数派だぜ」
サイシュウはそう付け加えた。
しかし横から聞き覚えの無い声が、さらに一言添える。
「この連合内に限れば、許可してる国の方が多いがね。獣耳の少女も当然のように売っているよ」
声の方へ振り向いたキラーは、魔術師風の青年をそこに見た。
紫のローブに、何かのオーブを飾った杖。複数の指輪をはめており、宝飾品の首飾りは魔力を持つ護符だろうか。
そんなファンタジー世界の魔術師を地で行く格好ながら、その容姿は‥‥短い黒髪にあまり特徴のない容貌の、キラーと同世代であろう青少年。
(量産型のライトノベルの主人公みたいな顔だが‥‥)
しかしキラーが気になったのは、格好でも容姿でもない。
彼からはっきりと感じる――異界流。しかもその強さ・濃さは‥‥
(俺と同等以上、か? 少なくとも下という事は無い)
己自身、既にそうそういないレベルに達している自覚はあるが。それでもキラーはそう感じとった。
「あんたも転移者‥‥聖勇士なのか?」
キラーが訊くと、相手は頷いた。
「やっぱりあんたもか。奴隷屋を見て驚いているから、もしやと思ったが」
言って辺りをぐるりと見渡す。
「僕は‥‥勤め先を探している所さ。この国は売り込みを受け付けていなかったし、余所者に金を出せる状態でも無さそうなんで、まぁ無駄足だったがね。あんたも他所に行った方がいい」
「‥‥忠告、どうも」
キラーが礼を言うと、相手は背中越しに軽く手をふり、どこへともなく去って行った。
魔術師が立ち去ると、サイシュウは店を覗き込む。
「さて、忠告通り奴隷屋で女あさるか」
「?」
わけがわからないキラーに、サイシュウは呆れたようだった。
「いや、異世界転移者としては行くだろフツー。美少女獣人奴隷に甘いモン食わせて餌付けすっぞ」
——奴隷屋店内——
粗末なランプに照らされた店内には、子供から中年まで、様々な男女がいた。
檻の中の椅子に座り、値札のついた首輪をはめられ、くたびれた顔で声がかかるのを待っている。
タヌキみたいな顔をした穴熊獣人の店主が揉み手をしながら期待した視線を向けていたが‥‥
「金出すほどの奴はいねーな。あばよ」
女の奴隷の、胸だけを見て、サイシュウはそう言って出て行った。
「ケイオス・ウォリアーの操縦ができて、死ぬまで戦っても構わない奴はいないようです。私もこれにて」
マンドリオもアテが外れたという顔で出て行った。
「この程度か。やはり奴隷屋の起源はコリーン国だな」
アリンもそう言って勝ち誇りながら出て行った。
何に勝ったのか、基準は何なのか、その起源は自慢できる事なのか、疑問は多々あったがとにかく行ってしまった。
※コリーン国の大王城壁画には、半裸の男達が組み合っている姿が描かれている。
コリーンの学者が唱える説によれば、これは奴隷の起源の証拠である。
梯子を外された形で店内に残されたキラー。
その肩でストライクが体色を赤く変える。
しかし出て行こうとするや、眼前に青筋を立てた店主が立ちはだかった。
「おいおい、冷やかしにしてもタチもクチも悪過ぎねーか? 一人ぐらい買っていけよ。アヤつけるために入ってきたんかアンタら」
なぜ己がとばっちりを食らうのか、真剣に悩むキラー。
だが店主の態度が一転、急にヘコヘコしだす。
「いや、マジで最近売れ行き悪くて困ってんのよ。値段もかなり勉強してんだろ? な? 若い娘もいるからよ」
苦労は偲ばれるが己には言って欲しくなかったキラー。
だが店主は縋りつくように必死に訴える。
「中には貴族屋敷や王城に勤めてた元メイドさん、なんてのもいるんだぜ。なのに戦で焼け出されたり人員整理で首になったりして、ここに落ちて来たなんて。メチャ泣けるだろ? な? 買って可愛がってやろうや」
キラーの目が一転、真剣で鋭い光を放った。
「‥‥元王城のメイドだと?」
設定解説
・胸だけを見て、サイシュウはそう言って出て行った。
女性を胸囲のみで判定しているかのようなサイシュウだが、実はそうではない。
本当に一番好みのタイプは、無条件で自分にベタ惚れして完全肯定し続けて全身全霊で尽くしてくれる同年代の女性である。
ただ発見可能な難易度の問題で、二番目に優先される胸囲での判断が多くなるだけだ。




