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3 地下で渦巻く陰謀の巻 1

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

サイシュウ:ダンジョンで出会い、仲間になった異世界の上級冒険者。

ソフィア:共に召喚された吉良の同級生。日米ハーフの少女。

ティア姫:吉良が身を寄せるハイマウンテン王国の姫君。

サンタナ王:ハイマウンテン王国の王。

スターゲイザー:主人公達を地球から集団転移させた魔術師。

アリン:コリーン国の女騎士。クマ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

マンドリオ:ニスケー国の将軍。ゴリラ獣人。キラー達に敗れて軍門に降る。

 ハイマウンテン城の一画に新たな施設が誕生した。

 それは風呂。石造りの建屋の中に専用の浴場が造られたのである。


 その日はソフィアとティア姫が利用していた。

 石の床に設けられた浴槽の湯に、白くきめ細かい上品な裸身を浸し、姫がほんのりと頬を朱に染めている。

 食生活が良いのか、出る所が柔らかく出ている、なかなか豊かな体だ。

「いいお湯ですね。ホント生き返ります」

 その横でソフィアがぐぐっと体を伸ばした。肢体が熱い湯の中でほぐれる、その心地よさに身を委ねる。

 こちらはやや細身だが均整のとれた肉体であり、健康的な体である。

「しかしなんでニスケー国の連中、浴場なんて建てたのかしら?」


 するとそれに答える声が。

「そりゃあ我々の最も貴重な文化の一つですからな。公衆浴場はニスケー国都市の最重要施設の一つ。整備費を着服した大臣が市民の一揆で命を落した例もありますぞ」

 それは浴槽の外で体を洗っている、ニスケーの将軍マンドリオだった。

 ゴリラの獣人だけあって見事に発達した筋肉の塊がはっきり見て取れる。獣化前だというのに、その筋肉はピクピクと蠢いていた。


「!?!?!?」

 驚愕して大きな瞳を真ん丸にするソフィア。

 なぜこの男が浴室にいるのだろうか?

 だが泡を食って疑問を口にするのが遅れたせいで、先に口を挟まれてしまう。


「おい! 温泉の起源はコリーン国だぞ! 宗主国づらするな! 三等国家のくせに!」

 湯舟の中で徳利を傾けていたアリンだった。

 職業戦士だけあって引き締まっており、しなやかな筋肉のはっきり見える立派な体。それでいて胸はなぜか女らしく豊かなのは不思議だが。

 そんな彼女は顔も体も赤く火照っている。当然、酒のせいである。



※コリーン国の大王城壁画には、半裸の男達が組みあっている姿が描かれている。

 コリーンの学者が唱える説によれば、これは温泉の起源の証拠である。

 この場面のアリンは間違いなく酔っぱらっているが、その主張は無根拠な事ではないのだ。

(根拠が正しいかどうかはまた別の話とする)



「ちょ、ちょ、ちょ‥‥」

 驚愕してどもってしまうソフィア。

 なぜこの熊獣人(ワーベア)は男がいるのに動じていないのだろうか?

 だが彼女が動揺していると、先に姫が口を開いた。


「でもこれで戦(いくさ)は一段落つきましたね。後はどこかで次の帝王が決まれば平和になります」

 ほっと一安心、という顔の姫。

 男がいる事に全く動揺はしていない。


 よってキラーは澄ました顔で同じ湯船に浸かっている。

 かつては弱々しく、頼りなく、悪い意味で柔(やわ)かったその体は、今や細い針金で編んだかのような強靭な筋肉が余す所無く皮膚の下に張り巡らされた、同体格における望みうる最高の傑作となりつつあった。

 肩のストライクは体色を橙色に染めている。

 キラーは考えていた。

(平和、か。望ましい事ではある。だが武勲は上げられなくなるな。しょせん戦いで得られる物には限りがあるという事か?)



「ちょ!? ちょ、ちょー!」

 跳び上がらんばかりに驚いて、全裸を晒しそうになり、慌てて湯に沈むソフィア。

 まるでバネ仕掛けの人形だ。



 だが彼女がブッたまげていると、ゴリラが口を挟んだ。

「どうでしょうな。カパード国に潜り込ませた間者からの話ですと、旧魔王軍の魔物を取り込む動きがあるそうですぞ」

 冷静に筋肉ピクピクさせて話すマンドリオ。

「それは魔王軍の残党を、という事かよ?」

 冷静に訊くのは、その隣で頭を洗っているサイシュウ。

 ともすれば猫背で卑屈にさえ見える外観ながら、裸体を見れば頑丈に組み上げられた屈強そのものの体。背筋のぶ厚く堅い事は一目でわかった。

「そこまではわかりませぬ。ただの敗残兵の寄せ集めかもしれません。しかし戦力を増強している事は確かでしょうな」

 冷静に筋肉ピクピクさせて答えるマンドリオの、しかしその目は鋭かった。


「ならば詳しく知りたいのだが」

 冷静にキラーが要求すると、冷静にマンドリオが頷く。

「了解です。間者どもから最新の情報を集めるとしましょう」


 キラーには気になる事があった。

 旧魔王軍の魔物‥‥それを聞いた時、自分達をこの世界に召喚した魔王軍残党を思い出したのだ。

 異界の人間を戦力として召喚した者達である。いつまでも大人しく潜伏しているとも思えない。

 手を組む国がもしあれば、そこに飛びつくのでは?



※なおそろそろご理解いただけると思うが、このヘイゴー連合内の入浴文化において、男女の混浴はさほど珍しい事ではない。むしろ性別ごとにきっちり分けられている施設の方が少ない。

 一応、個人的に恥ずかしがって嫌がる者は普通にいるし、異性の裸体をじろじろと見るのはマナーの悪い行為だとされてはいる。



「ではティア姫。俺はニスケーに行ってきます」

 キラーの目は暖かな湯に相応しくなく鋭い。

「え? キラー様がこの国を離れるのですか?」

 驚き戸惑う姫。彼女の中では、ここで守りに入ってもらえる予定だったのだが‥‥。

「ならオレも行ってみるか。魔王軍との縁は浅くねーしな」

 頭の石鹸を湯で流しながらサイシュウもその意を口にする。

「え? サイシュウ様まで?」

 驚き戸惑う姫。彼女の中では、ここで守りに入ってもらえる予定だったのだが‥‥。

「よーし、次はカパード攻めか! 私も祖国のため、手柄を立ててやるぞ!」

「ふむ。我らも黒字を目指さねばな」

 息巻くアリンにマンドリオが同意する。

 彼らもやる気だ。



※結局、ハイマウンテン国が敗戦国に要求する賠償額は「戦(いくさ)にかかった戦費と同額」と決まった。

 さらに、共闘した国にはその中から報酬も出す、と。

 よってコリーン国もニスケー国も、支払いを請求はされるのだが、他国との戦いに参戦していればいずれ報酬金で元をとれる筈なのである。



「え、え? あの、皆さん、なんか戦う気になってます‥‥?」

「なってるみたいね」

 困り果てる姫の横で、ソフィアが深い溜息をついた。

女の裸ばかり熱心に描写するのは多様性の時代に遅れているかと思い、男女無差別に描写しておいた。

無駄な事をした。

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