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2 状勢激動の巻 11

登場人物の簡易紹介(誰かわからない奴がいた時だけ見てください)


キラー:主人公。召喚された元高校生。クラスチェンジアイテムによりニンジャとなった。

ストライク:森で見つけたカメレオン。

ディナル:キラーとその邸宅を世話する専属メイド。外見年齢は十代。

——ハイマウンテン城・中庭の隅にあるキラー邸——



 やや古ぼけた一軒家のコテージに、キラーは戻って来た。

 中に入ると‥‥


「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 メイドのディナルが笑顔で明るく出迎えた。

 スカートの端をちょこんとつまみ、茶目っ気たっぷりに軽く一礼。

 足の上の方、割と際どい所まで見えてしまう。ストッキングと、それを吊るすガーターベルト。その上の白い太ももまで‥‥が、本人はそれを気にしている様子は無い。


 明らかにスカートが短くなっていた。


 そんな彼女を前に、キラーは‥‥部屋の中を見渡していた。

「内装が変わったか?」


 そう、丸太が剥き出しの殺風景な壁にはタペストリーが、窓にはカーテンが、床には絨毯が。

 見た目が良くなった事に加え、室温も快適になっている。


「はい。少しでも明るい感じにしようと思いまして。私(・)が(・)選びました!」

 笑顔のまま、スカートを上げたまま自分の選択である事を強調するディナル。

 代金は国から出ているが、物を選んだのが彼女なのは本当だ。

 キラーがコリーンを一蹴した手柄を経理に主張し、早くも維持費を吊り上げる事に成功したのである。

 彼女も己の仕事に日々励んでいるのだ。


 しかし一転、スカートを上げたままディナルの顔に陰がさす。

「でも、どうして国を支えるキラー様の住居が、こんな陽当たりの悪い所なんでしょう。いっそ城下町の一等地でも、キラー様には相応しい筈ですのに。一体誰がこんな場所を決めたのか‥‥」

「ああ、それは俺だ」

 事もなげに言うキラー。


「え!?」

 スカートを上げたまま目を丸くするディナル。

 キラーは窓の外へ視線を移す。その先は中庭、いつかの建屋が並ぶ一画。

「馬小屋の横か城仕えの鍛冶師の作業場の近くなら、ここより陽当たりは良かったんだが。臭いとか音とかがちょっとな。かといって城から離れては素早い行動ができない。だから消去法でここになった」

「そ、そうなんですか‥‥」

 スカートを上げたまま、ディナルは呻くように呟いた。

 頷くキラー。

「まぁ俺は忍者だから陰にいるのは道理だろう」


 一転、ディナルはスカートを上げたまま慌てて愛想笑いを見せる。

「え、いや、その、キラー様が選ばれたなら間違いないですね! 明るさは私の笑顔で補います‥‥なーんて、ね」

「そうだな」

 ちらと横目で見てキラーは頷いた。

 喜んでいる様子も冗談に付き合う気配も無い。


(反応、薄‥‥)

 スカートを上げたまま、笑顔の下でディナルはちょっとだけ悪態をついた。


「ところで飯だが‥‥」

 キラーが切り出した話題に、ディナルはスカートを上げたまま慌ててテーブルを見渡した。

 何も置かれていない。当然だ。今日は装飾を選んで取り付けるのに忙しかったのだから。

 玄関から入った大部屋は奥にキッチンもあるが、まだ火も入れていなかった。

「あ、あ、はい、今から急ぎますね!?」

 内心大焦りではある。だがディナルはスカートを上げたまま努めて笑顔を見せた。

 頭の中、必死に早く作れるメニューを考える。


 だが、キラーは小さく頭(かぶり)を振る。

「いや。今日は月が昇る頃に戻るからゆっくりでいい。俺の分は作りおいてテーブルに並べていてくれ」

「え? 何か御用事ですか?」

 スカートを上げたまま混乱して訊き返すディナルに、キラーは頷いた。

「ああ、訓練があるんだ。サイシュウさんを待たせているから、じゃ」



 キラーはコテージから出て行った。



 残されたディナルはしばし呆然とし——ぎりぃ、と奥歯を噛む。

「ちっくしょう。それはそれで、あーんして食べさせる新婚もどき作戦が実行できねーやんけ。メシぐらい時間通りに食えよ。洗い物が翌日に残っちまうじゃねーか」

 ここでようやく、一瞥もされなかったスカートを下ろす。

 視界には入っていた筈だが、全く歓心をひけなかった事に敗北感と苛立ちを覚えながら。

「くっそぅ‥‥でも弱小国家に身を寄せる腕利き勇者とか、これ逃したら次いつかわかんねーし。私がこれ以上歳とってから来られても若いオンナに獲られるに決まってるから今しかねーし」


 どすどすと大股で木製の冷蔵庫——最上段の空間に氷を入れるタイプだ。魔法仕掛けで冷気を維持する高級品は、まだ予算が足りない——を開けた。

 中にはいくつもの食材が既に準備されている。

 その中からシャケを引っ張り出すと、キッチンのまな板へ乱暴に置いた。

「もっと従順をアピールすっか? でも要求そのものがねーんだよな。何が楽しみで生きてんだ、キラー様はよー」

 無駄に力を籠めてシャケを切りながら苛々と呟くディナル。


 彼女の戦いはまだ続く——。

設定解説


・室温も快適になっている


ハイマウンテン国の首都は標高が高めなので、気温はやや低い。夏でも涼しいのは良いとして、冬は寒い。

よって住居は暖房を重視する事になる。

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