112、体育大会、開始!?
先週までに更新できなかったので、本日更新。
お待たせしました、やっと体育大会開催です。
無駄に長かった……うん。
ではでは、相変わらずぐーたらやってる彼らが活躍?する、本編へどうぞー。
「いいかぁ、テメェら! 耳の穴かっぽじってよぉく聞けよ!!」
なんなんだ朝からこのテンション。今何時かご存知ですか、先生。知らないなら教えるけどさ、まだ7時半なんだよ。普通の人は憂鬱な通勤・通学タイム中なんだよ。電車の中で寝ていたい時間なんだよ。部活だけど頑張ろうとか思っちゃってる時間なのだよ、先生。
「人の一生は燃える事にある! すなわち、体育大会の存在そのものが人生なのだ!!」
んなもん知るかよ。人生のまだ半分も生きてねぇ俺達が、今燃え盛ってどうするよ? 後半の人生考えようぜ。もう燃え尽きて炭だよ、真っ白い炭になってるよ。
「体育大会で優勝する事は、某有名会社に入るより誇れる事だ!」
いや、分かりにくいから。てかそこまで優勝誇れねぇだろ。ただの自慢程度だろ。普通にビリだったクラスの奴に、「俺達、○○点で圧勝だったんだよなぁ。で、お前らんとこどうだったっけ?」みたいに優越感を得るものでしかねぇんだよ。
「萌えろ、いや、燃えろ漢ども! 今萌えずしていつ萌える!!」
せんせー、ところどころイントネーションが違います。
「必ず、必ずこの教室に優勝カップを持ち帰るのだぁぁぁぁ!!」
バンっと黒板を叩いて熱弁するのはいいが、今の一撃で時計が傾きましたけど。もう一回叩いたら確実に落下してくるぞ。
「なぁ、瀬川」
「だが断る」
「聞きもしないで断るのか!?」
小橋の話を聞いて、俺が得した記憶がないからな。
「なんだよ影薄マン」
「影薄マンって役立たなそうなヒーローみたいなあだ名やめてくれないか?」
「用件を2秒以内に言わなければ」
「今日も無駄に熱い先生だな!」
「おいこら、誰の台詞を遮ったと思ってるんだ薄影門左衛門」
「2秒以内って言ったの誰だよ!? てか、なんだその江戸時代にすらいなさそうな人物名……」
「気にしたお前の負けだ」
デコピンを喰らわせて黙らせる。お、そろそろ8時か。
「全ての種目で勝てとは言わない。ビリだって構わない。だが、地道に得点、友情を積み重ねて目指すのは、優勝だ!」
本人はいい事言ったみたいにドヤ顔してるけど、俺は微妙だと思うぞ。てか友情好きだな。
ペンポコパーポー
何この音! なんだよこのしまりのない音!!
『全校生徒の皆さん、おはろーございます。これから、グラウンドへの移動をお願いします。1年1組から順番に、自分の椅子を持って事前に指定された場所へ移動してください』
なんか聞き覚えがあるようなないような声がそう告げると、先生の火が一旦鎮火した。
「よし、じゃあ各自椅子を持ってグラウンドに出ろよ」
「はーい」
つくづく思う、従順な生徒達だと。
晴れ渡る青い空の下、と言えるような空模様でもなく。どんよりと重い雲が圧し掛かってきそうな空の下、とも言えない空模様。暑くもなく寒くもないから構わないけどさぁ、こんなに中途半端な感じだと、やる気って言うものがこみ上げてこないよな。
「いえあぁぁっ! 体育大会だZE!」
どこかのバカは、どこかのバカらしくテンションは上がっているようだが。
「なぁ、」
「ヤダ断る」
「いや、まだ何も言ってないんだけど!?」
「なぁつったじゃねぇか、なぁって」
「その一言にどんだけの意味が含まれてんだよ!」
「小橋を否定するに必要なもの全て」
「酷くね? 即答って酷くね?」
知るか。どーでもいいわい。どすっと椅子に腰掛けて、しつこい小橋を無視していたら、見知った顔がすぐ傍に。
「おろ、やっふー瀬川。今日も不機嫌そうな顔してんな」
「おう、狩燐。お前は今日も能天気だな」
「ははは、だろ?」
「いや、褒めてねーよ」
今日も冷ぇーとか言いながら、椅子持って狩燐はどこかへ行った。
「そうそう、瀬川」
と思ったら何だ。
「今日もお手柔らかに頼むよ」
「こちらこそ、お手柔らかに頼む」
今度こそいなくなった。うん、いなくなったな。
「フフ、瀬川ちゃんおはよう」
「……なぁ、斎賀。お前はもう高校生って設定でいい気がするんだ」
「フフ、嫌よそんなの。瀬川ちゃんに会えなくなるでしょ?」
俺は会えない方が嬉しい。
「まあ、今日はお互い敵同士。頑張りましょうね」
優雅に手を振って斎賀が去っていく。今度は狩燐みたいな展開にはならないようだ。
「ダーリンダーリンダーーーリィィィン!」
あーあー何も聞こえないぞー。俺の目には何も映ってない。そうだ、これは幻聴だ。幻覚だ。惑わされるな、俺。きっとあれだ、この前倒れた名残があるんだ。
「瀬川、あれだけ話したがってたのに無視とか、お前はツンデレかよ」
「なぁ、小橋泰三君よ」
「泰助な」
「お前はそんなに俺に殴られたいのか?」
「殴られたいのは私です! だけどごめんね、ダーリン。体育大会が終わるまで、怪我はできないの!」
うるさい幻覚。黙れ幻覚。
「殴られたくねーよ」
「じゃあそういう事を言うな、汚橋改造君」
「小橋な。泰助な」
知るかっつーの。
「ま、そろそろ始まるぞ」
「またねダーリン、愛してる!」
「なぁ小橋、俺にはお前の声と変な声が聞こえるんだ。幻聴か?」
「……俺の声まで幻聴扱いなのか?」
え、違うのか。小橋ってしゃべらないだろ、影薄いし。
「ほら、立てぇー。開会式始まるぞ」
やる気のない声に急かされて、俺らは席を立つ。練習の時と同じように、ゆる~い入場音楽が流れ出した。体育委員長の号令が、拡声機を通って響いた。
『選手、入場』
俺の周りに変人が多いだけで、この学校全体的に変人が多いわけじゃない。いたって真面目なやつもいるし、がり勉だってそりゃあいるさ。
行進だって、やる気のある奴はきびきび動いてるけど、俺と同類の奴らはだらだら動いているし。まあ、俺は内側にいるから目立たないけどな。
えーと、行進の次は何だっけ。校長の挨拶か。来賓の紹介とか、挨拶とかマジでどうでもいいから席に速く戻して欲しいわ。それが終わったら選手宣誓。国歌斉唱。……ん、校歌が先だったっけ? ま、どっちでもいいや。後はハチマキの色に合わせて歌合戦が……あ、そういやハチマキ巻くの忘れてた。
「校長先生から挨拶。堀塚校長先生、お願いします」
へー、校長って堀塚って言うんだ。知らなかった。つーか、いつも真面目に聞いてなかったから知らなくて当然か。なんて、ポケットにしまっておいたハチマキを締めながら思う。
で、まあ、案外さらっと挨拶とその他諸々が終わったわけで。
「準備体操ほど俺が嫌いなものは森野ぐらいしか思い浮かばん」
「さっくり小言いうな」
アキレス腱をのばしながら、人の話もちゃんと聞く小橋はきっと地獄耳を持ってる。
「お前、Gはいいのかよ、Gは」
「あ、それもいやだ。準備運動と森野とGと変態親父と小橋が嫌いだ」
「俺も含むの!?」
音楽と掛け声が綺麗に途切れたところで、小橋の声だけが響いた。うん、楽しいわ。
「ちょ、おま、はめたな!」
しらねぇよ。自業自得だろ?
「冷ややかな目で見られるのはお前だけで十分だろ?」
「サイテーだ、お前サイテーだ!」
何を今更言ってるのやら。さあ、あともうちょっとで終わるぞー。早く座りてぇ。
「早く座りてぇとか思ってるんだろうけど、大縄跳びが全体の流れで2番目なのはご存知ですか」
「知りたくなかった事実を今知らされて、猛烈に小橋を殴りたい気分だ」
「人のせいにするとはさすが瀬川だな」
「褒め言葉として受け取ってやるよ。恩は倍返ししてやるか乱心しろ」
「乱心っておま……」
読んで字の如くってやつじゃね。
そんな感じにぐだぐだやってたら、準備体操も終わったし、後は退場だけ。しかし、休めると思ったのに、比較的に早く出番が来るとかどういう陰謀だよ。
「まあ、本番くらい頑張ってくれよ。あの超絶毒舌女並にさ」
退場中に小橋がアゴで差したのは、葛野木だった。
「確かに毒舌だな」
「げ、違う違う。隣の隣、あっちだよ」
今更ながらに修正されても、俺にはそいつの姿なんて見えない。見たくもない。緑のハチマキが、やけに楽しそうに風の中を泳いでいるのだけは、視界の隅に移った。
さあ、楽しくない体育大会の始まりか……。




