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ドSな俺と、ドMなアイツ  作者: 下弦 鴉
第四章 メインディッシュは体育大会
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113/117

112、体育大会、開始!?


先週までに更新できなかったので、本日更新。

お待たせしました、やっと体育大会開催です。

無駄に長かった……うん。


ではでは、相変わらずぐーたらやってる彼らが活躍?する、本編へどうぞー。



 「いいかぁ、テメェら! 耳の穴かっぽじってよぉく聞けよ!!」

 なんなんだ朝からこのテンション。今何時かご存知ですか、先生。知らないなら教えるけどさ、まだ7時半なんだよ。普通の人は憂鬱な通勤・通学タイム中なんだよ。電車の中で寝ていたい時間なんだよ。部活だけど頑張ろうとか思っちゃってる時間なのだよ、先生。

 「人の一生は燃える事にある! すなわち、体育大会の存在そのものが人生なのだ!!」

 んなもん知るかよ。人生のまだ半分も生きてねぇ俺達が、今燃え盛ってどうするよ? 後半の人生考えようぜ。もう燃え尽きて炭だよ、真っ白い炭になってるよ。

 「体育大会で優勝する事は、某有名会社に入るより誇れる事だ!」

 いや、分かりにくいから。てかそこまで優勝誇れねぇだろ。ただの自慢程度だろ。普通にビリだったクラスの奴に、「俺達、○○点で圧勝だったんだよなぁ。で、お前らんとこどうだったっけ?」みたいに優越感を得るものでしかねぇんだよ。

 「萌えろ、いや、燃えろ漢ども! 今萌えずしていつ萌える!!」

 せんせー、ところどころイントネーションが違います。

 「必ず、必ずこの教室に優勝カップを持ち帰るのだぁぁぁぁ!!」

 バンっと黒板を叩いて熱弁するのはいいが、今の一撃で時計が傾きましたけど。もう一回叩いたら確実に落下してくるぞ。

 「なぁ、瀬川」

 「だが断る」

 「聞きもしないで断るのか!?」

 小橋の話を聞いて、俺が得した記憶がないからな。

 「なんだよ影薄マン」

 「影薄マンって役立たなそうなヒーローみたいなあだ名やめてくれないか?」

 「用件を2秒以内に言わなければ」

 「今日も無駄に熱い先生だな!」

 「おいこら、誰の台詞を遮ったと思ってるんだ薄影門左衛門うすかげもんざえもん

 「2秒以内って言ったの誰だよ!? てか、なんだその江戸時代にすらいなさそうな人物名……」

 「気にしたお前の負けだ」

 デコピンを喰らわせて黙らせる。お、そろそろ8時か。

 「全ての種目で勝てとは言わない。ビリだって構わない。だが、地道に得点、友情を積み重ねて目指すのは、優勝だ!」

 本人はいい事言ったみたいにドヤ顔してるけど、俺は微妙だと思うぞ。てか友情好きだな。


 ペンポコパーポー


 何この音! なんだよこのしまりのない音!!

 『全校生徒の皆さん、おはろーございます。これから、グラウンドへの移動をお願いします。1年1組から順番に、自分の椅子を持って事前に指定された場所へ移動してください』

 なんか聞き覚えがあるようなないような声がそう告げると、先生の火が一旦鎮火した。

 「よし、じゃあ各自椅子を持ってグラウンドに出ろよ」

 「はーい」

 つくづく思う、従順な生徒達だと。




 晴れ渡る青い空の下、と言えるような空模様でもなく。どんよりと重い雲が圧し掛かってきそうな空の下、とも言えない空模様。暑くもなく寒くもないから構わないけどさぁ、こんなに中途半端な感じだと、やる気って言うものがこみ上げてこないよな。

 「いえあぁぁっ! 体育大会だZE!」

 どこかのバカは、どこかのバカらしくテンションは上がっているようだが。

 「なぁ、」

 「ヤダ断る」

 「いや、まだ何も言ってないんだけど!?」

 「なぁつったじゃねぇか、なぁって」

 「その一言にどんだけの意味が含まれてんだよ!」

 「小橋を否定するに必要なもの全て」

 「酷くね? 即答って酷くね?」

 知るか。どーでもいいわい。どすっと椅子に腰掛けて、しつこい小橋を無視していたら、見知った顔がすぐ傍に。

 「おろ、やっふー瀬川。今日も不機嫌そうな顔してんな」

 「おう、狩燐。お前は今日も能天気だな」

 「ははは、だろ?」

 「いや、褒めてねーよ」

 今日も冷ぇーとか言いながら、椅子持って狩燐はどこかへ行った。

 「そうそう、瀬川」

 と思ったら何だ。

 「今日もお手柔らかに頼むよ」

 「こちらこそ、お手柔らかに頼む」

 今度こそいなくなった。うん、いなくなったな。

 「フフ、瀬川ちゃんおはよう」

 「……なぁ、斎賀。お前はもう高校生って設定でいい気がするんだ」

 「フフ、嫌よそんなの。瀬川ちゃんに会えなくなるでしょ?」

 俺は会えない方が嬉しい。

 「まあ、今日はお互い敵同士。頑張りましょうね」

 優雅に手を振って斎賀が去っていく。今度は狩燐みたいな展開にはならないようだ。

 「ダーリンダーリンダーーーリィィィン!」

 あーあー何も聞こえないぞー。俺の目には何も映ってない。そうだ、これは幻聴だ。幻覚だ。惑わされるな、俺。きっとあれだ、この前倒れた名残があるんだ。

 「瀬川、あれだけ話したがってたのに無視とか、お前はツンデレかよ」

 「なぁ、小橋泰三君よ」

 「泰助な」

 「お前はそんなに俺に殴られたいのか?」

 「殴られたいのは私です! だけどごめんね、ダーリン。体育大会が終わるまで、怪我はできないの!」

 うるさい幻覚。黙れ幻覚。

 「殴られたくねーよ」

 「じゃあそういう事を言うな、汚橋改造君」

 「小橋な。泰助な」

 知るかっつーの。

 「ま、そろそろ始まるぞ」

 「またねダーリン、愛してる!」

 「なぁ小橋、俺にはお前の声と変な声が聞こえるんだ。幻聴か?」

 「……俺の声まで幻聴扱いなのか?」

 え、違うのか。小橋ってしゃべらないだろ、影薄いし。

 「ほら、立てぇー。開会式始まるぞ」

 やる気のない声に急かされて、俺らは席を立つ。練習の時と同じように、ゆる~い入場音楽が流れ出した。体育委員長の号令が、拡声機を通って響いた。

 『選手、入場』

 俺の周りに変人が多いだけで、この学校全体的に変人が多いわけじゃない。いたって真面目なやつもいるし、がり勉だってそりゃあいるさ。

 行進だって、やる気のある奴はきびきび動いてるけど、俺と同類の奴らはだらだら動いているし。まあ、俺は内側にいるから目立たないけどな。

 えーと、行進の次は何だっけ。校長の挨拶か。来賓の紹介とか、挨拶とかマジでどうでもいいから席に速く戻して欲しいわ。それが終わったら選手宣誓。国歌斉唱。……ん、校歌が先だったっけ? ま、どっちでもいいや。後はハチマキの色に合わせて歌合戦が……あ、そういやハチマキ巻くの忘れてた。

 「校長先生から挨拶。堀塚校長先生、お願いします」

 へー、校長って堀塚って言うんだ。知らなかった。つーか、いつも真面目に聞いてなかったから知らなくて当然か。なんて、ポケットにしまっておいたハチマキを締めながら思う。

 で、まあ、案外さらっと挨拶とその他諸々が終わったわけで。

 「準備体操ほど俺が嫌いなものは森野ぐらいしか思い浮かばん」

 「さっくり小言いうな」

 アキレス腱をのばしながら、人の話もちゃんと聞く小橋はきっと地獄耳を持ってる。

 「お前、Gはいいのかよ、Gは」

 「あ、それもいやだ。準備運動と森野とGと変態親父と小橋が嫌いだ」

 「俺も含むの!?」

 音楽と掛け声が綺麗に途切れたところで、小橋の声だけが響いた。うん、楽しいわ。

 「ちょ、おま、はめたな!」

 しらねぇよ。自業自得だろ?

 「冷ややかな目で見られるのはお前だけで十分だろ?」

 「サイテーだ、お前サイテーだ!」

 何を今更言ってるのやら。さあ、あともうちょっとで終わるぞー。早く座りてぇ。

 「早く座りてぇとか思ってるんだろうけど、大縄跳びが全体の流れで2番目なのはご存知ですか」

 「知りたくなかった事実を今知らされて、猛烈に小橋を殴りたい気分だ」

 「人のせいにするとはさすが瀬川だな」

 「褒め言葉として受け取ってやるよ。恩は倍返ししてやるか乱心しろ」

 「乱心っておま……」

 読んで字の如くってやつじゃね。

 そんな感じにぐだぐだやってたら、準備体操も終わったし、後は退場だけ。しかし、休めると思ったのに、比較的に早く出番が来るとかどういう陰謀だよ。

 「まあ、本番くらい頑張ってくれよ。あの超絶毒舌女並にさ」

 退場中に小橋がアゴで差したのは、葛野木だった。

 「確かに毒舌だな」

 「げ、違う違う。隣の隣、あっちだよ」

 今更ながらに修正されても、俺にはそいつの姿なんて見えない。見たくもない。緑のハチマキが、やけに楽しそうに風の中を泳いでいるのだけは、視界の隅に移った。

 さあ、楽しくない体育大会の始まりか……。

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