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ドSな俺と、ドMなアイツ  作者: 下弦 鴉
第四章 メインディッシュは体育大会
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109、お熱い夫婦の間の冷たい子!?

 あー、憂鬱だ。何もかもが憂鬱だ。窓を打つ雨音も、淡々と出来事を伝えるニュースキャスターの声も、包丁が何かを刻む音も、その全てが憂鬱だ。

 「なぁ慎吾、そろそろお父さんの顔も見てくれないか」

 あぁ、何より俺の視界に入ってこようとする、このバカが面倒で仕方がないな。

 「なぁなぁ慎吾、ダディーかパピーって呼んでくれないか」

 「ダンディーなうるせーパピー黙ってくれませんか」

 「何かが違うよ慎吾。父さんはただ慎吾が好きなんだ」

 意味わからねぇよ。ていうかベタベタするなよ気持ち悪い。ただえさえジメジメ蒸し暑いのに、こんなおっさんに纏わりつかれたら余計に気持ちわりぃんだよ。

 「なぁなぁなぁ慎吾、パパにも体育大会の日程教えてくれないか?」

 結局お前はなんて呼んで欲しいんだよ。ダディーかパピーかパパかはっきりしろよ。どれも呼ばねぇけど。

 「やだ」

 「ひどい! 父は悲しいぞ!」

 一人称ぐらい定めろや。

 「なぁなぁなぁなぁ慎吾ぉ」

 「あ゛~うっさい! 少しは黙れ、クソ親父!」

 俺の座っている椅子の後ろから、抱え込むように寄りかかってきたバカ野郎に右ストレートをいれようとしたら、うまい事よけられた。そしてそのまま腕をつかまれた。

 「放せ変態」

 「変態じゃない、紳士だ」

 意味わからねぇっての。

 「じゃあ放せバカ力」

 「バカじゃない、愛だ」

 だーから、意味わからねぇっての!

 「親父も応援に行くから、頼むから教えてくれ」

 「腕が痛い放せ」

 「放したら逃げそうだから断っておこうか」

 クソ親父め、無駄に勘だけは鋭くてムカつく。

 「放ねぇなら教えねぇよ」

 「……慎吾」

 「な、なんだよ」

 真面目な顔して近付いてくるな。怖いんだよお前の顔。分かってるのかこの野郎。てか腕痛ぇよ。

 「パパはな、ただお前を愛しているだけなんだ。純粋な愛なんだよ。純愛なんだ。だけどママも愛してるぞ。それでも慎吾もLOVEだ」

 だからどうした。というか、軽く惚気るな。てかなんで最後だけ英語にした。発音良すぎるだろ。

 「だから、だからな、パピーは体育大会に行きたいんだ!」

 「来るな」

 「そんな冷たい事言わないでくれよぅ」

 大の大人がこれくらいの事で泣くんじゃねぇよ。てかキモいよ。つーかそろそろ放せや。

 「慎ちゃん俊さん、ご飯できましたよー」

 キッチンから女神が降臨なされた! これで俺は解放される!

 「俊さん、また慎ちゃんにそうやってベタベタしてると嫌われちゃいますよ」

 「だけどなぁ麻理。こうしてないと慎吾が逃げていくんだ……」

 「大丈夫ですよ。反抗期なだけなんですよ」

 「そうなのか! そうなのか、慎吾!」

 「るせーな、耳元で叫ぶな」

 ふふふと母さんは笑うと、再びキッチンに戻り、料理を運んでくる。肉じゃがに焼き魚、小鉢にお漬物もある。鬱陶しいバカ親父を振り払い、母さんを手伝うために席を立つ。

 「ついて来るな」

 「ダディーもこっちに用事があるだけだぞ」

 じゃあ腰に手を回す必要はあるのか。どっからどう考えてもただの変態だろ。

 「俊さん、あんまり慎ちゃんばっかりかまってると、私拗ねちゃいますよ?」

 「大丈夫だよ麻理。私はいつでも麻理だけを愛している!」

 じゃあその手をどかそうか。俺を解放しようか。ていうか、子供の前で思い切り惚気るな。

 母さんが茶碗を手にとり、それぞれの茶碗に適量のご飯をよそっている間、俺は親父を足蹴りしながら味噌汁をよそう。手伝う気配を見せない背後のバカは、もう空気だと思って無視しよう。そうか、無視すればいいのか。

 「いただきます」

 「はい、召し上がれ」

 「あーんしてやろうか、慎吾」

 早く席につけ空気。いつまで俺の背中にい続けるんだ。

 「俊さんも召し上がってくださいな。冷めちゃいますよ」

 「……仕方ない、分かったよ」

 うむ、それでいいんだよ。

 「あぁ、ビール飲みますか?」

 「いや、いいよ」

 うぉ、いきなり普通の夫婦の会話か。さっきまでのバカらしい会話はなんだったんだ。

 それからしばらくはテレビを見ながら静かな食事が続いて、時々母さんとバカという名の空気が短い会話をするくらいで、何事もなくいつものように時間が流れた。

 『そーいやさ、知ってるか?』

 影薄の言葉が、全ての音を断ち切る。頭の中で響くこの声は、いつも同じ言葉を繰り返す。明日絶対影薄を意味なく殴ってやる。

 『超絶毒舌ストーカマニアが引越すらしいぜ』

 それは嬉しいこった。バカが1人減るだけで俺の気持ちが軽くなる事には変わりないからな。おまけにストーカーも消えるんだし、こんな吉兆はない。

 『アイツ、最近お前避けてただろ? 理由はそれなんじゃねぇの』

 だからなんだって言うんだ。アイツが俺を避けたいならそれでいいじゃないか。俺はアイツに避けられて悲しくなんかねぇし。逆に避けてもらえて清々する。鬱陶しいやつは嫌いなんだよ。

 「慎ちゃん?」

 それなのになんだよ。この事考えるとボーッとしちまうし、目の前がぐるぐる回ってるみたいだ。

 「ねぇ、慎ちゃん。大丈夫?」

 「え、何?」

 「ボーッとしてるから、どうしたのかなって」

 「あぁごめん。……ちょっと気になる事が」

 「恋か慎吾! どんな子だ!」

 「誰がそんな事言ったバカ親父」

 「バカじゃない、純粋なだけだ!」

 もういい、その台詞は聞き飽きたよ。

 「どうしたの? 学校で何かあった?」

 「いじめか! どいつだ!」

 「まだ何も言ってねぇだろ。大丈夫だよ、たいした事じゃないし」

 そう、全然たいした事なんかじゃない。砂漠の砂くらい小さなどうでもいい事だ。

 「でも、帰ってきてからずっとそうじゃない?」

 「そうかな? いつもどーりだよ」

 ただいまって言って、自分の部屋に戻って、明日の準備して、リビングでのんびりする。どれもこれも、いつものように流れすぎただけだ。

 「具合でも悪いのかしら。熱測ってみる?」

 「大丈夫だって、元気だよ。……ごちそうさま」

 「待って慎ちゃん、まだこんなに―――」

 母さん、ごめん。ちょっと食欲がないだけだから、大丈夫。全部美味しかったよ。




 あぁ、なんでこんな気持ちなんだ。どうして晴れない。どうして雨が降る。どうして傘をささない。なーんにもかわらねぇ。どうしようもねぇ。俺は何がしたいんだ。

 家を飛び出してなんになるんだろうな。親父はいつでも無駄に心配してるからいいけど、母さんには悪い事したかな。でも帰る気もあんまりしねぇわなぁ。雨ってこんなに冷たいものだったのか。

 「……ダーリン?」

 誰だよ、アイツみたいに俺を呼ぶのは。今はやめてくれないか? 今はアイツの話なんてしたくないんだ。アイツの声も顔も思い出したくねぇんだよ。ほっといてくれ。そっとしておいてくれよ。

 「ダーリン!?」

 もう全て、消えてくれ。


滑り込みセーフは、きっとこの事を言うのでしょう。

3月終わる前になんとか投稿成功! いやー、ホントよかったよかった。


そんなこんなでこんにちは。下弦です。ご機嫌麗しゅう。

月1と決めたはいいものの、曜日まで決めておかないとやっぱりグダグダ先延ばしにしてしまうようです。気付いてよかった、ホント。


そんなわけで、考えた結果。今日は水曜日ですが、次回からは土曜日に更新しようかと思います。第2か3くらいで。それくらいの方がいいかなぁと。


また約束破ったな! って思った方もいたかもしれませんが、ギリギリセーフなのでご容赦ください。たぶん次から頑張ります(ぇ


それでは、今回もグダグダ長文失礼しましたー。

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