108、高ぶるのは体育教師だけじゃない!?
今日は朝から少し肌寒く、霧雨が優しく地面んだ濡らしていた。午後からその雨は強くなり、雷までなり始めやがった。そのため、今日の放課後するはずだった全体練習は体育館で行われる事になってしまった。別に今日じゃなくてもいいだろうに。全校生徒が集まると、体育の授業では広く感じるココも、狭くなったようだった。
「は~い、じゃ~静かにしてねぇ」
やけに間延びする声の主は、マイクを両手で持ってステージ中央に立っている。
「おら、静かにしろー!」
先ほどの声とは打って変わって、野太いバスボイスが静寂を促す。
ざわめいていた空間が、少しずつ静けさを取り戻していった。ステージから見て、左に1年生の1から4組は終始静かにざわめきがおさまるのを待っていたが。
「こんな狭いトコで何させる気なんだろな」
「行進くらいだと思うけどな」
小橋に囁くと、そう返してきた。
行進なんて練習しなくてもいいだろ。そう言おうとしたら、あの間延びする声に先を越された。悔しいが、前を向いて言葉を飲み込んだ。
「これからねぇ、各学年ごとに行進の練習をしてもらいまぁす~」
ほら、やっぱりな。そう小橋が得意げに言うものだから、後ろを振り返らずに蹴飛ばした。
「何すんだよっ」
すねあたりに当たったのか、なかなかいい蹴りごたえがあった。ざまぁみやがれ。
「それじゃ、3年。お前ら後輩に手本を見せてみろ!」
太い声が指示を飛ばす。動く事を許された俺達生徒は、またざわめきを取り戻した。それぞれの担任が指示を飛ばし、2年はステージ向かいの倉庫などがある壁に、1年はそのままギュッと体育館右側に並ばされた。
「いいか、良く見てろよ! 特に1年は先輩の無駄のない動きを見て、お前ら自身もそうやって動けるようにするんだぞ!」
「あの先生さ、無駄にハードル上げるよな」
「それはあれだろ」
横目に小橋の不服そうな顔見て続けた。
「体育の先生の性ってもんじゃね?」
「性ねぇ……」
考えるように少し間をあけて、小橋は溜め息を吐いた。
「まぁ、そうかもなぁ」
あぁ、そうだよ。大体の体育の先生は、体の8割が情熱と変な成分でできてるんだよ。
「てか、さっきの痛かったんだけど」
「あ?」
「あ? じゃねぇよ!」
「じゃあ『い』か」
「あいうえお順を聞いてる訳じゃねぇ!」
「じゃあなんだよ。なんの『あ』だよ。しりとりか? それともいろは歌か?」
「もういい……」
はん、影薄の分際で俺様に口で勝てると思うなよ。
「よーし、さすが上級生だ! これくらい出来て当然だな! 俺はお前らならできると信じていたぞ!」
まあ、そんなこんなでお手本とやらは終わっていたらしく。
「……見逃した」
「まあ、どうせまた説明すんだろうしいいだろ」
「よーし、3年は元に位置に戻れ! 今度は全体でやるぞ!」
壮大な小橋のため息をかき消すかのように、ステージからまたウザったい声が次から次へと指示を飛ばしていく。
「とりあえず、流れに身を任せてれば何とかなるだろ」
「それもそうだけどな」
そう思ってんならぐちぐち言ってんじゃねぇっての。
「そーいやさ、知ってるか?」
「何をだ? お前の本名か?」
「そりゃ知ってるだろうが!」
「え!?」
「え!? じゃねぇよ! こっちがえって言いたいわ!」
「言えばいいだろ」
「……お前ってホント時々ムカつくよな」
「時々か。しょっちゅうじゃなくて安心したよ」
また元の位置に戻った頃には、また別の行動を命令され、忙しなく動く。人というものは常に口を閉じている事ができないのか、動く度に声がする。またかよ、とか。雨止まないね、とか。
「今日の給食、デザートにヨーグルトだよ! これで今日も生きていけるよ、やったね!」
なんて、聞き覚えのあるアホな声がアホらしく馬鹿な事を言っている声もする。別に気になった訳じゃない。断じて気にしてなどいないが、さりげなく視線をそちらにやると、アホな顔したアホが行く先を塞いでいた。
「おい、アホ」
「影薄じゃ……アホじゃねぇ!」
「お前、いつも俺が同じパターンで会話を始めると思うから、そうなるんだぞ」
「いつも影薄ばっかじゃねぇか」
「他にもいろいろ言っただろ。小橋とか泰助とか」
「それ本名だから! あだ名じゃねぇから!」
「なん……だと……!」
「もういいよその反応! 飽きたよ、疲れたよ!」
そうしているうちに、声は雑音に紛れて消えた。探すつもりは元からないが、肺に溜まった空気を思い切り吐き出したい気分だ。
「おや、ため息とは珍しいですな、お姫様」
「古いネタほじくり返してんじゃねぇよ。てか、さっき言いかけたのはなんだ?」
狭い体育館を、その倍近くある校庭に見立てて、体育大会当日の応援席の場へと俺達は誘導された。男女に分かれて背の順で4列縦隊。俺はその2列目の一番右端。隣には影薄だ。てか、行進とやらはまだか。
「ん? あぁ、超絶毒舌ストーカマニアが引越すらしいぜ」
誰だそれは。
そんな思いとは裏腹に、心臓が跳ね上がった。
「アイツだよ、アイツ」
小橋がアゴでしゃくった先に、さっきアホな事を言っていた声の主が体育座りをしていた。周りの友達と楽しそうに会話している。
「アイツ、最近お前避けてただろ? 理由はそれなんじゃねぇの」
たかだかそれだけの理由で、この俺様を避けていただと? そんなの許せる訳もねぇな。
「いつだ?」
「何がだ」
「引越し」
「さあな。三大行事が終わるのが先か、引越すのが先かってトコロか」
んだよ、そんな曖昧な情報なら仕入れてくるな。間の抜けた音楽が調子外れに体育館中に響き渡る。あのウザったい声が威勢よく号令をかける。
「まあ、お前にとってはストーカーがいなくなるんだし、いいんじゃね?」
影薄の声も叫ぶ教師の声も、間抜けた音楽さえ遠く聞こえた。
「おい、どうした。反応できないほど嬉しいってか?」
「あぁ、そうだな。今日の給食のデザートにヨーグルトが出るくらい嬉しいよ」
「は? お前、ヨーグルト好きだったっけ」
「大嫌いだよ」
「ますます意味がわかんねぇよ」
もう今は何もかもどうでもいい。この高鳴る心臓を抑えつけるので精一杯だよ、全く。
ホントすみません、お久しぶりです。生き残っていた下弦鴉です。
土下座で……許しませんねその目は!
えぇ分かっていましたとも。えぇ確信犯ですごめんなさい許してくださいマジ申し訳ございませんでした。
なんかもう、毎回謝ってばっかりなきがします。たまには強気に出てみようか。出れないだろうけど。
というか、更新すればいいって話ですよね。分かってますとも。
と、言う事で(どういう事だよ)
この作品、『ドSな俺と、ドMなアイツ』は月1更新とさせていただきます。
勝手で申し訳ございませんが、今の更新状態と執筆の進行状態から見てその方が自分的にも読者様にも良いかなと思った結果です。
月1で何曜日に更新するかはまだ未定ですが、これから考えて行こうと思います。
それでは、久々の更新でしたが、これにて失礼しようとします。
またの更新をしばしお待ちくださいませー><




