104、サボりとプリン!?
おそらく穏やかだろう空の下、流れる汗が美しく輝いていた。「イチ、ニ! イチ、ニ! イチ、ニ!」と威勢のいいかけ声と共に、足並み揃った心地よい足音が鳴り響く。また別の場所では、パンッと乾いた音が始まりを告げ、準備万端で構えていた走者達が一斉に走り出した。誰もが前へ、一番へと懸命に走る。やがて彼らの前に夢を託す仲間の姿が現れる。今の順位を守るために、さらに順位をあげるためにと助走を始めるのだ。そして合図と共にバトンを受け取り、次へ夢を託すために駆けるのだ。
汗と努力と友情が、冷えた秋空の下で今、鈍く輝き始めたばかりなのだ。彼らは走り、奪い合い、支え合うだろう。来るべき日に、この手で優勝と言う名の栄誉を掴み取るために。
「で、それなんだよ」
「知るか」
「知るかっておま……。渡されたんだろ、先生から」
「とりあえず読んでくれ。そう言われたから仕方なく読んでやっただけだ」
「何なんだろうな」
「だから、知るかってぇの」
珍しくこの小説らしからぬ始まり方で、間違えたと思ってページ閉じたやつ。間違いじゃねぇからな、正解だから安心してまた開いてくれ。
「んで、お前は何で制服なんだよ」
「お前こそ何で体育着なんだよ」
「いや、何でじゃねぇからな!?」
いやいや、疑問だろ。授業が終われば帰るだろ、制服で。部活があるやつはそっちに行けばいいし。だから俺は制服なんだ。帰宅部の小橋が体育着なんて着てる方がおかしい。
「朝も言っただろ、今日は体育大会の練習するから、ちゃんと着替えておけよって」
「今日も平和だ飯がうまい」
「意味分からねぇから! 会話成り立ってねぇから!」
「んだよ、平和のどこがいけねぇんだよ。飯がうまいとか最高じゃねぇか」
「そうだけど、そうなんだけど違うんだって!」
「じゃ、俺帰るから」
「待て待て待て待て!」
「るせーな」
俺は帰りたいんだよ。疲れたんだよ。もうやる気すら起きねぇんだよ。
「とりあえずさ、ちょっとだけでいいんだ。ちょっとでいいからやってこうぜ」
「んだよ。お前、そんな趣味だったのか」
「はぁ? いや、意味分からねぇって」
「俺をそんな目で見ていたなんて思わなかったぜ。これからはちょっと距離置くわ」
「おい、お前変な事想像してんじゃねぇよ!」
「お前こそ変な事考えてんじゃねぇよ。からかっただけだ馬鹿野郎」
隣のアホをはたく。とりあえず2発。
「おま、何すんだよっ」
「調子狂うんだよなぁ」
「何がだ? てか俺を2回も叩いた理由になってねぇぞ」
はぁ、疲れた。帰って寝るかぁ。いや、昨日母さんが買ってきたプリンを食ってからにするか。いや待てよ。プリンは昨日食べた気がするな。クソジジィが俺の大切なプリンを食おうとしてたから、先に食べたような……。いやいや、あれはくずきりか。んや、あれは先週のか。じゃあ今冷蔵庫にあると思われる、俺様のおやつはなんだ?
「そして無視か。てか何が調子狂うんだよ」
「るせーな。黙ってろプリン小太郎」
「プリン小太郎ってなんだよ! つーか何考えてたんだよ!」
耳元でぎゃあぎゃあ、ぎゃあぎゃあとうるせぇな。ガムテープでも貼っておくか。
「おや、瀬川。サボりかい」
どっこらしょい。なんてジジ臭く腰掛ける学級委員(♂)。
「ねぇ、僕の紹介なんかおかしくないか?」
「心を勝手に読むな」
そして男3人並んで座る。左から神郷、俺、プリン泰助。グラウンドへ出る昇降口の、ちょっとした階段に腰掛け続けて早数分。何もしてないのは俺らだけ。他はせっせと練習してるよ。
「で、何はなしてたんだ?」
「さあ」
「じゃあ小橋が独り言言ってたのか」
「そーだな」
「そかそか」
「納得するとこじゃねぇだろ!? 瀬川が反応しめさねぇから俺が一人でしゃべってるみたいになってるだけだろ!?」
「つまり独り言だろ」
「つまり独り言だな」
「……お前ら揃って俺をいじめて楽しいか」
「楽しいな」
「僕は真似してるだけだね」
「薄情者め」
知ったこっちゃねぇよ。
「そーいやさ」
神郷は何かひらめいたようだ。俺たちの方を見て、目を輝かせている。
「あー、なんだ。なんだっけ?」
「聞くな。てか何も考えずに発言すんな」
「言論の自由は僕にもあるよ」
胸を張って言うな。なんか腹立つ。はぁ。
「なぁ、さっきからなんでため息ばっかついてんだ?」
「お前の問いに答えたくない」
「それはどういうことだ!」
「だからさっきっからいってんじゃねぇか。耳元で叫ぶな、プリン橋」
「プリン橋ってなんだよ? 俺か、俺なのか?」
「今日も平和だ和食がうまい」
「だから意味分からねぇって!」
「あぁ! 思い出した思い出したっ。最近お前に絡んでこないよな、隣のクラスのあの子」
ニコニコするな、気色悪い。とりあえず小橋はほっといていいか。勝手にブルーになってりゃいい。俺は関わりたくない関わるつもりもない。
「あの子ってストーカーの事か」
「そうそう。森野だっけ?」
確かそんな名前だった気がするな。
「いつもなら瀬川にひっついてさ、漫才繰り広げてたじゃんか」
ひっついてるのは認めるが、漫才なんかしてねぇぞ。
「最近静かになったなぁと思ったら、瀬川が平和そうに毎日を過ごしてるせいだったんだな」
なんだそれは。俺が平和に毎日過ごすのはいけないって言いたいのか? なぁそうなのか? どうなんだこのやろう!
「何かあったのかねぇ」
ふっと視線をグラウンドに走らせる学級委員(♂)。その先で、それぞれ違うハチマキを巻いた生徒達が楽しげに談笑していた。
「なぁ、(♂)っていうのはやめにしないか?」
「心を読むのやめたら考えてやる」
「なぁ、俺は空気なのか? プリンなのか?」
「お前はプリンだ。大丈夫だ、子供には人気がある」
「そうだ、お前はプリンだよ。給食で時々でると嬉しいあれだよ」
「いやそこは一応人間だと言って欲しかったんだけど?」
「お前に決める権利はない」
「まあいいんじゃね? 人間よりは影濃いよ、プリン」
「プリンどんだけすげぇんだよ!」
あ゛ーーー! 耳元で叫ぶなっつーの!
「お前は一度死んでプリンになれ、そして帰ってくるな」
「酷くね!?」
「安心しろ、僕がおいしいプリンにして出荷してやるから」
「いやそれも酷くね!?」
キーンコーンカーンコーン
お、珍しく通常のチャイム音。まあ、普通ならこれが正しいわけなんだが、あまりにまともすぎると気持ち悪いな。
「瀬川もさぁ、毎日暇そうだよな」
「暇そう? 俺が?」
平和そうの間違いじゃねぇのか?
「なんだかんだで気になっちゃってるんじゃね、森野」
「んなわけねぇよ」
「瀬川がそういうならそうかもな」
ういこらしょい。なんて変な掛け声とともに立ち上がる。ワサワサとグラウンドの生徒達がこちらに向かってくる。今日の練習はここまでか。
「さー、帰って飯食って寝るぞ」
「結局俺ら練習してなくね?」
「明日があるさ」
「明日もしないだろ」
「時と気分とノリとテンションと空腹具合で決める」
「面倒くさいやつだな」
「お前も面倒くせぇよ、プリンのくせに」
「まだそのネタ引きずんのか!」
「じゃ、俺帰るわ。またな、神郷、プリン」
「おう、また明日なー」
「待て! せめてプリンを修正しろ! そして俺の話を聞け!」
やなこった。プリンはプリン。それ以上でもそれ以下でもなく、プリンだろ?
そんな事考えていたら、視界の端に見覚えのある顔。自然と視線が追っていく。楽しそうに笑う奴は俺を見ていない。別に気になったわけでもなく、ただ自然と目が追っただけだ。
一人の帰り道。静かで平和だ。ただ少し、風がやけに冷たく感じるだけで。
なんだか書き方がとっても変わった気がするのは、この前完結させた小説のせいなのだろうか……。
ハイテンションが、ハイテンションが足りない! もっとこう、煮えたぎるようなテンションが! そう、テンションが!
なんて言ってても解決するわけでもないので、ちょっとシリアスを織り交ぜてみて、『この子、こんなキャラじゃない!』なんて思ったり思わなかったり。
さぁて、もう10月も終わりなのにこれから体育大会編へ突入するこの小説。寒くてキーボートをうつ手が震えるよ。違うキーを打つよ。余計に押しすぎるよ。誤字しまくってるよ。どうしようもないよ!
それでも地味に更新します。だって書く事は嫌いじゃないですから。
それでは、またいつか更新した時にお会いいたしましょう!




