103、やる気のなさは、限りなく!?
大変長らくお待たせいたしました。ついに『ドSな俺と、ドMなアイツ』再始動です!
どれだけの人が待ち望んでくださったのかは不明ですが、これからはちまちままた更新を再開していきますので、どうぞお楽しみに!
それでは、久しぶりに本編へどうぞ!
「おはよ、瀬川」
「おう、誰だ」
「ちょ、おま、酷くねぇか!?」
誰かわかんねぇもんは分からないよな。うんうん。分かりたくもない。てか、マジで誰だ。
「小橋だよ小橋!」
「あー、はいはい。隣のクラスの小橋武朗君ね」
「それこそ誰だよ!」
あれ、違うのか。じゃあ知らねぇな。無視でいいや無視で。
つー訳でだ、ただ今絶賛登校中。朝の日差しが和らぐ季節、つまり秋になったよ。つい最近まで太陽の野郎はガンガンに働いてたけどさ、疲れたみたいだから弱ってやんのな。夏に頑張りすぎるからいけねぇんだよ。大体バカなんだよ、ああいう熱いやつは。
「おーい、無視か?」
まだ衣替えの季節じゃねぇが、長袖で暑くはないな。ちょうどいいくらいだろ。まー、俺はまだ半袖でいい。クリーニングから長袖が返ってきてねぇからもあるけど、なんか面倒なんだよなぁ、長袖。
「瀬川ー。瀬川きゅーん」
「んだよ気色悪いな。てか誰だよ」
「小橋だってさっき言っただろ!?」
「あぁ、同じクラスの小橋武朗だろ?」
「隣のクラスじゃなかったのかよ!」
「そんな事言ったかも知れねぇな」
「言ったよ! 確実に言ってた!」
朝からウゼェな。ウゼェといえば、ストーカーが珍しく貼り付いてこないな。バカでも風邪引くのか? もしくは死んだのか?
「なぁ瀬川」
「んだよ」
「確か今日からじゃなかったか?」
「何がだ」
「体育大会の練習」
「知るか」
「いや、知るかじゃねぇだろ。担任張り切ってたじゃんか」
「忘れた」
「お前反応が冷たいな」
「そだな」
「お前、やる気ないだろ」
「ねぇな」
「……お前に聞いた俺が馬鹿だった」
今更気付いたか、武朗君。
そう、俺は体育大会が嫌いだ。嫌いなものランキングで言うと、ゴキ○リの次の次の次くらいに嫌いだ。あと音楽会とか言うふざけたやつも嫌いだ、同じくらいに。まあ、文化祭も嫌いだけどな。
簡潔に言えば、学校行事が全体的に嫌いなんだよ。だって面倒じゃねぇか。いいじゃねぇかよ、好きなやつが好きなやつだけで盛り上がってりゃぁよ。俺は動きたくねぇんだよ。働きたくもねぇんだよ。できるだけ自分のペースで生きていたいんだよ。分かってくれよコノヤロウ。
「んで、それがどうしたんだよ」
「いや、練習サボったら担任がすごそうだなぁって」
「あー……。まあ、大丈夫なんじゃね?」
「安直だな」
「考えるのが億劫だ」
「そこまで言うようになったか」
「俺は自由がほしい。ふりーだむ!」
「今は自由じゃねぇってか」
「それなりに自由だな」
校門が見えてくる。青葉が散りつつあるが、まだ頑張ってる青葉は枝に踏ん張って張り付いてるし、力尽きたのは教頭に箒で排除されるだけだ。
「そういや、珍しくあの超絶毒舌女と会わなかったな」
「超絶毒舌女かどうかは知らねぇが、ストーカーに会わないで始まる1日ほど素晴らしいものはねぇよ」
下駄箱に自分の靴を入れる。何気なく会話を弾ませていた、隣の小橋も同じように靴をしまって、上履きに履き替えた。そしてようやく、俺はピンときた。
「あ、お前小橋か。小橋泰助か」
「今更気付いたのかよ! てか、まだ俺だと知らずに話してたのかよ! つーかいつまでそのネタ引きずってんだよ!」
「いいか野郎共! 体育祭は汗と涙があってこそ成り立つ! そこに人は感動を覚えるのだ!」
黒板にでかでかと『萌えよ、体育祭!』などと書きなぐった担任は、満足げに胸を張る。いろいろとつっこみたいんだが、今注意した方がいいのか? ていうか、己のミスにやつは気付いているのか? ていうか帰っていいか?
「せんせー」
「なんだ!」
名もなき登場人物Aが挙手をして、黒板を指差す。
「萌えじゃないんじゃないですかー? 燃えるんじゃないんですかー?」
静まり返る教室。言っちまった、アイツ言っちまったよ。みたいな空気に満ち満ちている。あー、帰りたい。帰って今週号のジャ○プが読みてぇ。
そそくさと担任は動き出した。名もなき女子生徒Aは静かにそれを見守る。ていうか、クラス全体で先生を目で追う。やつは黒板消しを手に取った。さりげなく萌えの字を消し、堂々と燃えに書き換えた。そして、さりげなーく体育祭から体育大会へと換えた。
「お前らが出る種目は、クラス対抗リレー・大縄跳び・学年競技・騎馬戦だ」
そして当たり前のように話を進めやがった。何の問題もなかったかのようにサクサク進める。んだよ、つまんねぇな。
「学級委員、あとはてきとーに決めてくれ。俺はちょっと……職員室いってくる」
んでもって逃げた! アイツ逃げたよ絶対! この教室に居辛くなって逃げやがったよ!
ガラガラ、カシャン
「じゃー、適当に決めるか」
神郷が伸びをしながら席を立つ。それに合わせて阪下も立った。
「クラス対抗リレーは全員参加みたいだね」
「んだなぁ。じゃ、これは順番決めるだけで良さげ?」
「長くなりそうだから、最後に考えよう」
「おけおけ。大縄も全員みたいだな。じゃー、騎馬戦と学年競技か」
「そうだね。ところで、学年競技って何だろ」
「ちょっと待てよ」
パラッパラッ パシ!
「これだこれ。短・長距離、男女3人ずつ計6名。ハードルも3人か。あとは……大ムカデってなんだ?」
「大ムカデって知らないの?」
「知らないな」
「長いロープにね、一定間隔で手ぬぐいがついててね、それを足首に巻きつけてね、ゴールまで足並みそろえて走るんだよ」
「ほえー。転んだら痛そうだな」
「そうだねぇ。……他にはないの?」
「二人三脚くらいだな。これは2組だけでいいって事は、男女合わせて8人か」
「じゃあ、短・長距離、ハードル、大ムカデ、二人三脚を決めればいいのね」
「そーゆー事だな」
さすが学級委員というかなんというか。静かだから2人の会話しかねぇし、しみじみとうちのクラスの学級委員はしっかりしてると思ったよ。担任はボロボロだけどな。
その後は阪下がカリカリと黒板に競技名を書いていく。神郷が競技名をいい、希望者を募る。挙手がされなかった種目は、体育委員と相談し、足の速い者は短・長距離走へまわされ、体育のハードルで成績が良かった者はそっちへまわされた。放課後だったし、練習期間でもあるからと、熱心なやつらは校庭へと出て行った。
「瀬川君はどっちがいい?」
「どっちもやだ」
「そこをなんとか頼むよ、姫君」
「文化祭のネタを引きずんな」
俺はもちろん決まってない。やる気がねぇんだよ、どうしようもねぇだろ?
「短距離にすればよかったのに、譲っちゃうから決まらないんだよ?」
「走る事のどこが楽しいんだ。疲れるだけじゃねぇかよ」
「ゴールテープ切れると嬉しいでしょ?」
「何も感じねぇ」
「え、そ、そんな事はないよ! 一番になったって、嬉しいでしょ?」
「べっつにぃ」
「えぇぇ……」
「分かれ、阪下。瀬川はこういうやつなんだよ」
人聞き悪いな。
「じゃあ、俺と」
「断る」
「まだいい終わってねぇし!」
「お前と二人三脚? はっ、笑わせんな」
「ひでぇ!」
小橋撃沈。そういや、コイツも出る種目決まってなかったな。器用貧乏だからしかたねぇか。
「いいじゃない、二人三脚。2人とも仲良いし」
「はぁ!?」
「どこがだよ、どこがどう仲良く見えんだよ」
「え、え?」
戸惑うなら言うなよ。てかなんで神郷は笑い転げてんだよ。
「それが嫌なら大ムカデだよ?」
目線で残ったやつらを見る。普段根暗で話さないようなやつばっかりが集まってやがる。体育会系のやつもチラホラと混ざってるが、あの中に入りたくない。だからと言って、
「小橋と二人三脚も屈辱だな」
「おいおい、屈辱って何だ!」
「しまった、いつの間にか心の声が」
「わざとだろ? わざとなんだろ!?」
気にするな。気にしたら負けだと思え。そうだ、お前は強い子だ。大丈夫、俺がいなくてもお前は生きていけるさ。俺はそう信じてるぜ。
「しかたねぇな。二人三角でいいよ」
「二人三脚な」
「そーそー、それそれ」
「二人三角って、何やるんだろ……」
「2人でどれだけ上手く三角が書けるか的な?」
「よく分かんないよ、瀬川君……」
「気にすんな。んじゃ決まりって事で」
どっこらしょい。
「あれ、練習していかないの?」
「俺達仲良しだからさぁ、練習とかいらねぇのよ。絆っつーか、そういう紐でもう繋がれてんだよ、何年もな」
「おーい、カッコ良い事言って帰ろうとしてるぞ」
「うるさい黙れ小橋武朗君」
「だからそれ誰なんだよ!」
「さーな」
「てか帰んな! 練習していけー!」
逃げたもん勝ち。帰ったもん勝ち。何事も先に行動した方が勝者なんだよ、小橋武朗君。




