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いつも読んで下さってありがとうございます。
何とか、本日更新できました。
神官の口から、何故、銀狼の言葉が出る?
神官が言うのには、その銀狼が刺客として、私を狙っていると云う。
父王が差し向けた……。
もともと、銀狼は巫女姫の影の護衛として存在していた。
しかし、巫女姫、つまり、私の母が亡くなったことで、役割が無くなってしまった。
しかも、父王は、神殿の力を削いでいたため、本来ならば、神殿・巫女に仕えるべく銀狼を王の暗殺集団として、取り入れたのだと云う。
銀狼と呼ばれる者は一人だが、その後継者、銀狼に従う者もいることから、集団となっているらしい。
私の知る銀狼は、母の護衛だった銀狼とは別人。
つまり、弟子に当たるらしい。
大体、皆が『銀狼』なんて、ややこしい!
そう神官に告げると、『銀狼』は通り名で、本来の名前は、別にあるらしい。
とりあえず暗殺の件は、銀狼をこちらに取り込んでことで、解決したと考えてもいいだろう。
父王の誤解も解けたと……。
今更、本当の父娘の関係をどうこうするつもりもない。
今はまだある魔法も、何年か、何十年か先には、幻となるのだろう……。
それまでは、この平和の世を満喫してもバチは当たらないのではないか?
私は、私!
思い出していた内容と決別するため、目を閉じてからゆっくりと瞼を開く。
目の前にある現実を捉えるために。
父王は、ライオネルに支えられている。
私の傍らには、フィリップスがおり、その数歩後ろを銀狼が控えてくれている。
私たちを守るために……。
私は、息を吸い込み、言葉を吐き出した。
「帰りましょうか」
「ああ、帰ろう……」
フィリップスが返事をしてくれる。
そして、彼の手が私の肩を包む。
反射的に彼に寄りかかり、彼の体温が移り、心まで暖かくなった。
フィリップスを見つめ、意図せず微笑みが浮かぶ。
彼の方も私を見て微笑み、頷いた。
「ルナ! 元気でね! そいつとのことが嫌になったら、何時でも帰っておいで!」
ライが私に声をかける。
「ありがとう、ライ。でも、そんなことないから! 結婚式には呼ぶわ! ライも元気でね。お父様のこと……お願いね……」
「絶対にルナを幸せにする!」
フィリップスの肩を持つ手に力が籠もる。
私たちは、ライへ向かって手を振った。
魔法陣が浮かび上がり、私たちを飲み込むようにして転移魔法が発動した。
移動した場所は、勿論王宮ではなく、出発した宿屋!
魔法でホイホイ、よその国へ移動できるようなら、簡単に城を落としてしまえるでしょう?
それに、そんなに長い距離を移動させるような魔力を持っていないし……。
もっとも、いざという時のために、最初からリターン魔法も組み込んでいたのだけど!
私や他のことで、急を要した時には、発動するようにしていたのだ。
時間の経過によって、勝手に元居た場所へ連れ戻すという仕組みだ。
勿論、最初の組み立ての時に魔力を注いでいるため、帰りの魔力は必要としない。
このことは、フィリップスには伝えていた。
だから、故郷の城に戻ることを許してもらえたのだった。
次、最終回です。




