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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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34:最終話

 「はぁーっ」

 「ちょっと、誰もいないからって、寛ぎすぎよ、ルナ?」

 「だってぇ……」

 「その言葉遣いも!」

 私とミーナの睨み合いが続く。


 しかし、負けるのは当然、私の方。

 「分かっているわよ……。少しくらい羽目を外してもいいんじゃない? 今、ここには、私と貴女しかいないのですもの!」

 「忙しいのは、分かります。ですが、貴女は、この国、ヴィルヘルム王国の王子妃になるんですよ? どこにどんな目や耳があるか……。ラインストーン公国の城で十分思い知ったではないですか!」

 まだまだ、ミーナの小言が続く。


 始めの方こそ、ちゃんと耳を傾けていたが、内容がいつもと同じようなものへと移ると、聞き逃すようにしている。


 だって……本当に、息をつく暇もないほど忙しいのよ?

 確かに、フィリップスと結婚できるのは嬉しいけれど、その準備がこんなに大変だったなんて!

 はっきり言って、駆け落ちでもして、結婚式とかすっ飛ばしたくなってきた。


 おまけに、フィリップスとゆっくり話す時間もないし……。

 剣の稽古をつけてくれるという話もそのままだし……。


 「ちょっと聞いているの、ルナっ!」

 ひゃっ!

 いきなりミーナの怒声が響き、驚く。

 でも、そこへノックする音に救われる。


 侍女より王子殿下がお越しです、と告げられた。

 助かった……。


 私は、勿論、フィリップスを通すように侍女へ告げて、お茶の準備も合わせて頼む。

 侍女は、一礼して部屋を出た。


 ミーナの目は、あとで……と告げていたが、私は、素知らぬ顔をする。


 程なく、フィリップスが部屋の中へ案内されてきた。

 私は、にこやかに彼を迎え……。

 いつの間にか彼の腕の中に閉じ込められ、口を塞がれていた。


 「……っぷ! ちょ、ちょっと! いきなりなんですの?」

 「うーん? ちょっと充電しておこうかと……?」

 フィリップスは、答えるとすぐに抱き付き、口づけを交わす。


 私は、彼の腕の中で、流されるものかと、必死で抵抗する。

 いや、本当は、彼の腕の中で流されたいのだが、いかんせん、ここは、人が多すぎる!

 恥ずかしすぎるではないか!


 私が、声をあげようと口を開いた瞬間に、フィリップスの舌が入ってきた。

 歯列に沿って舐めた後、口腔内を一巡りし、舌を絡めて吸われた!


 ビリッと腰に電気が走り、膝がガクガクする。

 フィリップスは、それを見越していたのか、易々と片腕で私の腰を支える。


 何も考えられない……そう思った時、突然、口づけが終わった。

 最後に大きなリップ音を立てて……。

 私は、暫くボーっとしていたのだろう、目の前の人物、つまり、フィリップスが私の名前を呼んでいた。


 「……ルナっ! ルナっ!」

 やっと、焦点をフィリップスに合すことができた。

 「ひどいっ! いきなりっ……!」

 私は、恥ずかしいやら何やらで、顔が真っ赤になっているのが、自分でもわかった。


 それで、言葉が続かない代わりに、フィリップスの胸をドンドンと叩いた。

 フィリップスは、余裕でかわしていたけど……。


 後ろの方から、わざとらしい咳払いが聞こえた。

 「ゴホンッ、エッヘン! フィリップス殿下!」

 フィリップスの従者、プリウスが声をかけた。


 「分かってるって! ルナ、時間がなかなか取れなくてすまない。だが、これも、もうしばらくの辛抱だから、頑張ってくれないか?」

 フィリップスは、プリウスに言葉を返した後、私に向かって真摯に話しかけてきた。


 「忙しいのは、十分承知しています。だから、大丈夫と言いたいけれど、寂しかった……」

 言葉の途中でフィリップスに抱き寄せられた。

 「ルナ、あまり俺を煽らないでくれ……」


 『勝手に殿下が盛っているんじゃ……」

 と呟くミーナの声が聞こえた。


 フィリップスの耳にも届いたはずだが、彼はそのことを見事に無視した。

 「ルナ、君にこれを渡そうと思ってここに来たんだ」

 フィリップスの手でネックレスをつけられた。


 胸元を確認すると、そこには、無色透明でありながら、光を反射し虹色に輝やいてみえる大きなダイヤモンドがかかっていた。

 「きれい……」

 「よく似合っているよ……。これは、王妃となる人に渡される、王家の至宝なんだ。貰ってくれるかい、ルナ?」


 王家の至宝と聞き、ダイヤモンドから目を離し、フィリップスの目を見つめる。

 「それでは、これは、王妃マリィ様のものなのでは?」

 「いや、これは、王妃が世継ぎの王子を産んだら、その息子に受け継がれるものなんだ。だから、これはもう、ルナ、君のモノなんだよ」

 フィリップスが微笑む。


 私もフィリップスへ微笑みながら、彼の首へ両手をまわす。

 「ありがとう……大切にするわ。私たちの息子へ託す日がくるまで……」

 フィリップスの耳元でささやいた後、身をかがめてくれた彼の唇へ自分のそれを合わせた。


 すぐに離れるつもりだったのに、フィリップスの両手に阻まれ、口づけしたまま、離れられなくなった。

 フィリップスの舌が、私の唇をツンツンとつつく。

 まるで、ここを開けてと言っているかのようだ。


 私は、それに答えて唇を開けた。

 するりと、私の口の中に滑り込んできた舌を迎え入れる。

 おずおずと、彼の舌に絡めるように、自分の舌を這わす。


 ビクッと彼の身体が震えたのかと思ったが、気のせいだったのかもしれない。

 ギュッとフィリップスに抱きしめられて、口づけも深くなっていく。


 フィリップスに酔わされたかのように、身体中の力が抜けていく……。


 どのくらい二人きりの世界に籠っていたのか、分からないが、気づけば、部屋の中は二人きりだった。

 そのことをフィリップスに聞くと

 「気をきかせてくれたんだよ……」

 と言われた。


 実は、フィリップスが全員を目力で追い出したのだったが、そのことを知ったのは、結婚式も終わり随分経ってからだった。

 ミーナとの思い出話の中で、『そう言えば……』と暴露されたのだ。


 これから起こる出来事……良いことも悪いことも、二人で乗り越えていこう……。

 フィリップスが傍らについていてくれるのなら、どんな困難でも大丈夫だと信じることができる。


 時には、立ち止まり、後退することもあるかもしれないが、それもまた、二人にとって人生のスパイスとなるのだろう。


  だから、信じて前に向かって歩いて行こう!



今まで、お付き合い頂きまして、ありがとうございました。

何とか、完結することができましたのも、読んで下さっていた皆様のおかげです。

2月から、ムーンライトの方でも連載を開始したため、同時進行は、正直大変でした。

なので、番外編は当分無理かと思う次第です……。

もしかしたら、書くかもしれませんが……?


応援、本当にありがとうございました。

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