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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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いつも読んで頂いてありがとうございます。


 時は少し、遡る。


 **********


 「へぇ、こんな子ども騙しの罠を張ってくれるとはね! 俺も舐められたものだな!」

 「そんなことないわよ? ちゃんと、銀狼特製の罠にしたんだから! でも、良かったわ、引っかかってくれて! 貴方なら、わざとでも引っかかってくれるって、信じていたわ!」

 私は、自信あり気に笑みが浮かんだ。


 「チッ! 俺としたことが、油断したな!」

 「ふふっ、油断……ねぇ……。まっ、そういうことにしときましょうか! それよりも、時間がないから、早々にここは引き上げたいのよね。だから、早く移動しちゃいましょう? ミーナ、お願い」


 私の言葉に頷いたミーナが詠唱を始め、予め書いておいた転移魔法陣を作動させる。

 フィリップス王子たちの部屋へと。



 **********



 魔法陣の作動と共に、両手両脚を縛った状態の銀狼と私たちは、フィリップスたちの目の前に立っていた。


 「ねっ、私の言ったとおりだったでしょう? 賭けは私の勝ちよ!」

 目の前のフィリップスに向かって告げていた。


 私の言葉に、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたフィリップスを無視して、続けて言葉をかける。

 「……ということだから、次の作戦も、私の案で決まりね!」


 「その前に、こいつらの始末はどうする?」

 「そうねぇ……持ち主に返してもいいけど、それだと、貴方たちは全員、始末されちゃうわね?」

 私は、今までの恨みつらみもあり、意地の悪い表情を浮かべてしまった。


 銀狼を除いた男たちの表情がこわばる。

 「貴方は不安にならないの、銀狼? 自分が処刑される段階になっても、そのニヤついた表情でいられるかしら?」

 「俺は、死なないさ! 殺せないからな」

 銀狼が不敵な笑いを浮かべる。


 「ふーん……」

 銀狼を目をすがめて視る。


 「ルナッ! 決着をつけるのなら、早い方がいいんだろっ?」

 突然、横からフィリップスが話しかけてきた。

 「そうね、今は夜中だけど……。寝ていたとしても、起きて貰えば、いい話だし! じゃあ、行きましょう!」


 ミーナを先頭に、私が続く。

 そして、銀狼の縄を引っ張って歩かせたのは、勿論、フィリップスだった。

 「どこへ連れて行くんだ?」

 「行けば、分かるわよ。そこには、貴方が喉から手が出るほど欲しがっている物もあるしね」

 銀狼の方をチラリと見ると、青ざめてみえた。


 あら、驚かせてしまったかしら?

 でも、このくらいの手札を見せなければ、釣られはしないだろう。


 私たちは、宿の裏側に出ていた。

 フィリップスの従者であるプリウスは、不満そうな顔をしている。

 自分の一緒に行って、フィリップスを守りたいのだろう。

 だが、この転移魔法陣では、4人が限界だった。

 だから、仕方ないではないか! 


 私とミーナ、フィリップスと銀狼が中央に集まり、隠していた魔法陣を浮かびあがらせる。

 今度は、遠方に飛ぶ必要があるため、私とミーナの二人で詠唱を始める。

 私の増幅魔法を魔法陣自体と詠唱の魔力、そして、ミーナ自身へと重ねさせていく。


 魔法陣が発動し、私たちは、違う場所へ立っていた。


 「あら、お父様、夜中だというのに起きていらしたのね? それとも、お年寄りは、早く目が覚めるものなのかしら?」

 私たちが、転移してきた場所……それは、ラインストーン公国国王の執務室だった。


 目の前にいたのは、父王と宰相であるグリンラス卿だった。

 そして、その周囲には近衛騎士も控えていた。


 「飛んで火にいる夏の虫とは、お前のことだな、ルナ? それにしても、お前のその口調……品のない! やはり、育ちが知れるな!」

 私を見つめる瞳と口調は、冷たい。


 私は、皮肉な笑みを浮かべた。

 「貴方は、そこまで私のことを知らないでしょう? 何にも見てこなかったくせに!」

 「知っているさ。お前が母親と同じ、卑しい女だということはな!」

 父王は、無表情に告げた。


 王の言葉に、フィリップスが憤る。

 私は大丈夫だから、口出ししないで、という意味を込めて、彼へ向かって微笑む。

 すると、渋々、彼も頷き返した。

 銀狼は、大人しく縄に繋がれたまま、高みの見物を決めこんでいるようだった。

 顔つきがニヤついていた。


 私は、父王へ向かって言葉を告げる。

 「私の母ってことは、お父様の妃でしょう?」

 「お父様などと呼ぶでないっ! 余はお前の父などではないわ! ましてや、あの女を妃になどしたことなどもない! あれは、誰にでも脚を開くあばずれだ! そんな女など、余の妃などであるはずがなかろうっ! 余の妃は、後にも先にもただ一人、ライオネルの母、サーシャのみ!」


 父王は、あっさりと私の出生の秘密を口にした。

 始めのうち父王は、したり顔をしていた。

 しかし、私がさほど驚いていないことが、不審に思うのか、徐々に怪訝な顔つきとなる。


 「あらっ、知らないふりはいけないわね、お・と・う・さ・ま?」

 私は、わざとゆっくり言葉を紡いだ。

 父王の無表情が崩れ、怒りの表情となる。


 「私自身も嫌だけれど……私のこの身体には、確かにラインストーン公国国王の血が流れていますわ! それは、お父様も否定できないはず。そう、貴方は、単なる生物学上の父であるだけ。本当の意味での父親などではないわね? だから、私も貴方に従う必要など無いのだわ!」

 私は、父王をわざと怒らせるように挑発の言葉を続けた。


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