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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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 「今まで、育ててきてやった恩を仇で返す気か!」


 私は、父王の言葉にわざとらしく、驚いてみせる。

 「育てた? 恩? 言葉の意味が分からないわね。そんなことより、貴方は、もっと、慌てた方がいいかもしれなくてよ?」

 「何だ、その言い様は! 不敬であるぞ!」


 「くすっ……何を今更……? 私は、この国最後の巫女の娘……」

 父王の顔色が一瞬だけ変わった。

 だが、私以外は誰も気付いていない。

 よく観察していなければ、分からないほどの表情の変化。


 自分を見て欲しい、気に入って欲しい。

 どうすれば、ライオネルを見るように、私のことを優しい目で見てくれるのか。


 そんなことばかり考えていた頃、父王の顔をずっと見ていた。

 だから、父王が今、どんな感情を隠しているのか、誰よりもわかる。

 それほど、見てきたのだ。


 それが、こんなところで役に立つとは……。

 運命とは皮肉なものだ……。


 「何を言っている? お前の母は、娼婦だった」

 父王にこれ以上、母を侮辱させない!


 「これ以上、母の悪口は聞きたくないっ!」

 父王の言葉を途中で遮っていた。

 これまで、一度として、したことのない反抗。


 そう考えると、口の端が歪んだ。

 「私の母、ミーシャは、歴代の巫女の中でも、特に魔力が強かった。そもそも、巫女と国王は対等の立場のはず。それを、貴方に貶める資格などないわっ!」

 「それは、神殿側の言い分! 巫女と王が対等のはずなどなかろう!」


 「やはり、認めるのね? 私の母が巫女だったことを!」

 ニッコリ微笑んで見せる。

 「……っ!」


 「私は、ミーシャのたった一人の娘ですもの。他者にはできなこともできるのよ? 例えば、死んだ者を召喚するとか……? 貴方が愛した唯一の妃、サーシャもできるかもしれないわね? だって、彼女たちは双子だったのですもの。血が濃いから、できるかも……?」

 父王の顔を見ると、恋い焦がれる顔をしていた。


 私は、思わず笑っていた。

 「バッカみたい! そんなこと、できるわけないじゃない!」

 わざと下町のはすっぱな娘の口調をする。

 父王を怒らせるために。


 「貴様……!」

 父王が近くにいた騎士の剣を取った。

 

  

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