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「私、お父様と話をつけてくるわ! そして、ちゃんと理解してもらう!」
「どうやって? 今まで、話し合って理解してくれるような人なのか?」
フィリップスの言葉に、現実を突きつけられたようで、折角の決意も萎んでしまう。
ここは、先程の宿で、ライオネルは、王城へと帰ったのだった。
今回は、着いたばかりの時とは違い、フィリップスの従者であるグリーンとミーナも同席している。
「殿下の仰る通りだと思います。私が申すのもなんですが、ルナに対する陛下の対応は、実の娘へのそれとは違うと思います」
「それは、そうよ! お父様は、国王だから、責任が違うのよ、きっと……。でも、ミーナの父である辺境侯は、立派な父親だと思うわ。世の父親の鏡だと思う。私に対しても、ミーナと同じように育ててくれたんですもの! 理想の父親像だと思うわ!」
ミーナの両親は、私の育ての親だ。
もっとも、ミーナの母は、私の乳母でもあるのだから当然だが……。
ああ、自分でも、何を言っているのか分からない!
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
「ルナ、落ち着いて! 大丈夫だから! そう……じゃあ、ちょっと、おさらいしようか」
「おさらい?」
フィリップスがふわりと笑いかけてくれる。
「そうだよ。情報を整理する時には、とても役に立つんだ。それで、問題の解決に繋がることもあるしね」
「何から話せばいいの?」
「そうだな……ルナの生まれる前のことは分からないから、その後のことで、分かる範囲で話していこうか」
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そこで出た話を要約していくと……。
私は、何らかの理由で、生まれた時から父と双子の兄ライとは別々に暮らしていた。
虚弱体質という理由は、嘘だ!
父王が私とは一緒に暮らしたくなかった、私を視界に入れたくなかったからだ!
私が、実は、正妃サーシャの娘ではなく、その姉ミーシャの娘だったことに起因するのではないか?
マリィ様が漏らしてしまったことは、実は、国のトップシークレットだったのだろう。
ただ、マリィ様とミーシャが親友だったことで、秘密が漏れてしまったのだろう。
もともと、国交のない国同士だったし……。
だけど、色々な疑惑が残る。
ミーシャのことが嫌いなら、何故父王は、彼女に手を出したりしたのだろうか?
男って……女なら誰でもいいの?
これには、男性二人の反論があり、保留されることになった。
確かに父王は、亡くなった正妃であるサーシャのことを今だに愛していた。
再三の再婚の勧めにも全て断っていたのだから。
サーシャに生き写しと言われるライのことは、溺愛している……。
私は、私の実母である、ミーシャに生き写しだと、マリィ様が仰っていらした。
ミーシャのことを嫌悪していたから、私のことも……。
なら、何故、手を出したりするの?
そこが分からない!
だから、その点については、考えないことにした。
ミーシャは、もともと、強力な魔力の持ち主であったそうだが、記録には何も残っていなかった。
これは、隠されているのだと思われた。
ラインストーン公国は、その昔、巫女姫となる人物が国を守っていたとされていた。
今は、伝説でしかなく、何十年も空位となっているはず……。
巫女姫の条件など知る由もないが、一つだけ確かなことが言える。
伝説のように、国全体を防御できるような魔法を使うのならば、膨大な魔力が必要だということ。
神官や神殿は、現在でも存在している。
母ミーシャが、最後の巫女姫だったとしたら……?
その娘である、私が巫女姫に仕立て上げられるかもしれない?
だけど、そうなっても、大きな問題が一つある。
私には、その膨大な魔力など存在しないということ。
確かに魔法は使えるが、私の場合、治癒魔法と増幅魔法しか使えないのだ。
攻撃魔法や防御魔法なんて使えない。
私を巫女姫に立てても、何の役にも立たないのだ!
そのことは、ミーナとその家族、そして、ライくらいしか知らないだろう。
だから、神殿側が拉致しようと狙っていても、おかしくはない。
ライは、そのことを警告したかったのだろうか?
何だか、スッキリ整理できた気がする。
分からないことはそのままだけど……。
とりあえず、闇雲に突き進むわけにはいかないため、これで良かったのだと思う。
早速、次の作戦を皆で練る。
神殿の方は、命までは狙わないだろうから、まず、銀狼の方を先にどうにかすることにした。
名付けて、『銀狼捕獲作戦!』
これまでのツケを払わせなくちゃね!




