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ルナ姫の受難  作者: 東吉
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 「私、お父様と話をつけてくるわ! そして、ちゃんと理解してもらう!」

 「どうやって? 今まで、話し合って理解してくれるような人なのか?」

 フィリップスの言葉に、現実を突きつけられたようで、折角の決意も萎んでしまう。


 ここは、先程の宿で、ライオネルは、王城へと帰ったのだった。

 今回は、着いたばかりの時とは違い、フィリップスの従者であるグリーンとミーナも同席している。


 「殿下の仰る通りだと思います。私が申すのもなんですが、ルナに対する陛下の対応は、実の娘へのそれとは違うと思います」

 「それは、そうよ! お父様は、国王だから、責任が違うのよ、きっと……。でも、ミーナの父である辺境侯は、立派な父親だと思うわ。世の父親の鏡だと思う。私に対しても、ミーナと同じように育ててくれたんですもの! 理想の父親像だと思うわ!」

 ミーナの両親は、私の育ての親だ。

 もっとも、ミーナの母は、私の乳母でもあるのだから当然だが……。

 

 ああ、自分でも、何を言っているのか分からない!

 頭の中がぐちゃぐちゃになる。


 「ルナ、落ち着いて! 大丈夫だから! そう……じゃあ、ちょっと、おさらいしようか」

 「おさらい?」


 フィリップスがふわりと笑いかけてくれる。


 「そうだよ。情報を整理する時には、とても役に立つんだ。それで、問題の解決に繋がることもあるしね」

 「何から話せばいいの?」

 「そうだな……ルナの生まれる前のことは分からないから、その後のことで、分かる範囲で話していこうか」



 **********




 そこで出た話を要約していくと……。


 私は、何らかの理由で、生まれた時から父と双子の兄ライとは別々に暮らしていた。

 虚弱体質という理由は、嘘だ!

 父王が私とは一緒に暮らしたくなかった、私を視界に入れたくなかったからだ!


 私が、実は、正妃サーシャの娘ではなく、その姉ミーシャの娘だったことに起因するのではないか?

 マリィ様が漏らしてしまったことは、実は、国のトップシークレットだったのだろう。

 ただ、マリィ様とミーシャが親友だったことで、秘密が漏れてしまったのだろう。

 もともと、国交のない国同士だったし……。


 だけど、色々な疑惑が残る。

 ミーシャのことが嫌いなら、何故父王は、彼女に手を出したりしたのだろうか?


 男って……女なら誰でもいいの?


 これには、男性二人の反論があり、保留されることになった。


 確かに父王は、亡くなった正妃であるサーシャのことを今だに愛していた。

 再三の再婚の勧めにも全て断っていたのだから。

 サーシャに生き写しと言われるライのことは、溺愛している……。


 私は、私の実母である、ミーシャに生き写しだと、マリィ様が仰っていらした。

 ミーシャのことを嫌悪していたから、私のことも……。

 なら、何故、手を出したりするの?

 そこが分からない!


 だから、その点については、考えないことにした。


 ミーシャは、もともと、強力な魔力の持ち主であったそうだが、記録には何も残っていなかった。

 これは、隠されているのだと思われた。


 ラインストーン公国は、その昔、巫女姫となる人物が国を守っていたとされていた。

 今は、伝説でしかなく、何十年も空位となっているはず……。

 巫女姫の条件など知る由もないが、一つだけ確かなことが言える。


 伝説のように、国全体を防御できるような魔法を使うのならば、膨大な魔力が必要だということ。

 神官や神殿は、現在でも存在している。


 母ミーシャが、最後の巫女姫だったとしたら……?

 その娘である、私が巫女姫に仕立て上げられるかもしれない?


 だけど、そうなっても、大きな問題が一つある。

 私には、その膨大な魔力など存在しないということ。


 確かに魔法は使えるが、私の場合、治癒魔法と増幅魔法しか使えないのだ。

 攻撃魔法や防御魔法なんて使えない。


 私を巫女姫に立てても、何の役にも立たないのだ!


 そのことは、ミーナとその家族、そして、ライくらいしか知らないだろう。

 だから、神殿側が拉致しようと狙っていても、おかしくはない。


 ライは、そのことを警告したかったのだろうか?


 

 何だか、スッキリ整理できた気がする。

 分からないことはそのままだけど……。


 とりあえず、闇雲に突き進むわけにはいかないため、これで良かったのだと思う。

 早速、次の作戦を皆で練る。


 神殿の方は、命までは狙わないだろうから、まず、銀狼の方を先にどうにかすることにした。


 名付けて、『銀狼捕獲作戦!』


 これまでのツケを払わせなくちゃね!



 

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