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私とミーナは、これまでと同じく、騎乗して城へ向かった。
王妃様からは、馬車へ一緒に……と誘われたのだが、陛下の目が『断れ!』と言っていたため、遠慮させて頂いた。
それに、馬へ乗る方が、何かと気が楽だった。
仮に、馬車へ乗ったとして、王城へ着くまで、どうやって間を持たせるというのか……。
途中で何度か休憩をとったが、宿からほどなく目的地へと着いてしまった。
別に何かあると疑ったわけではないが、肩すかしをくらったかのように、問題もなく王城入りした。
王様と王妃様も同行しているのだから、何かあったら、反対に困るのだが……。
やっと、王子と再会できると思っていたのだが、生憎彼は、今朝方問題が起きた辺境区へ行き、留守にしていた。
そのため、そのまま王城の中の一室へ、私は案内された。
ミーナは別の部屋へと案内されたため、今この部屋には、私一人だった。
王子……フィリップスが不在だったことは、残念でもあり、助かったとも思ってしまった。
この期に及び、怖じ気づいているのだろうか?
自分から、望んでこの国へ来たというのに……。
不安がないと言えば嘘になる。
出会ったときには、子どもだった。
子どもの戯言だと、笑われたらどうしよう?
自分でもおかしいと思う。
たった一度の逢瀬でこれ程、惹かれるとは。
離れている間、半身がかけてしまっているような気がしてならなかった。
会えば、この焦燥感も鎮まるのだろうか?
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「どういうことだ? わざわざ、呼びつけておいてこの様は!」
「まあまあ、仕方がないでしょう。その時には、『戦争勃発か?』というほどの緊迫感があったと言っているじゃないですか! それが、丸く治まっているならば、言うことないでしょ!」
俺は、胡乱気に己の従者へ目を向ける。
そりゃ、平静のときならば、いい気晴らしになった……くらいにしか思わないさ、俺も!
だが、今日は、ルナが王城入りすると聞いていたため、一刻も早く会いたいと思い、迎えと称して、途中まで迎えに行くつもりでいたのだ。
それが、朝早く起きて準備していれば、都合がいい、とばかりに、この辺境区まで連れ出されてしまったのだ。
しかも、ルナたちが通るであろう道とは反対側になるため、途中で会うことも敵わない。
これも、王子である自分の使命と思い、馬で飛ばして来れば、何の変哲もない、領民同士の単なるいざこざだったのだ。
それも、領地と領民のことをロクに把握していない衛兵の無知さのせいだった。
仕方がない。
ここまで来た以上、領地の管理がどうなっているのか、実際に視てから王城へ帰るとしよう。
この辺境区は、王国にとっても要となる街である。
視ていて損はないだろう。
これまでと違い、ルナは王城に居る。
やっと、己の手に入れられる。
ルナ、会ったら、覚悟しとけよ?
絶対に手放すつもりなどないからな!
すれ違いでした。
次回、やっと再会するはずです。




