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最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
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エヌマルイチの過去

エヌマルイチの声で、血まみれの子供の背をやさしくなでる老人の手が止まった。

老人はユックリ視線を上げた。

右手を粗末な布切れでぐるぐる巻きに止血処置をした男が立っている。

布は赤く染まり、わずかに血の雫が床に落ちている。


「ひどい傷じゃないか。東君」


認識番号でなく、名前で呼ばれたことにエヌマルイチは一瞬戸惑った。

「私を覚えておいででしたか?」


「忘れるわけがない。特に君のような優秀な部下は」老人は懐かしそうに笑みを浮かべた。


「あの時、室長のおかげで無事卒業ができました。感謝しています」


「感謝?……」


「で、ジョーカーはどこにいますか?」

エヌマルイチは但馬に尋ねた。


「ジョーカー?ここにはいないが…」


「そんなはずはない。ジョーカーがこの部屋に入るのを私はこの目で見ました」

エヌマルイチは少し語気を強めた。


「御覧の通りこの部屋は二十畳一間のガランとした部屋だ。逃げるところも隠れるところもない。

君の見間違いではないのか」


但馬は明らかに嘘をついている。


エヌマルイチはもう一度部屋の周りを見渡した。

部屋には、壊された大型のテレビ、天井まで連なった本棚、別室に通じるドア。その別室は部下が調べあげてるところだ。

但馬の言う通り逃げるところも隠れる場所もない。

別室を捜索した部下が戻った。

「部屋には誰もいません」


「そんな馬鹿な。絶対にいるはずだ。…消えるなんてありえない」

そう呟き、エヌマルイチは本棚を見つめた。

隠し扉…?エヌマルイチの頭にそんな言葉がかすめた。

「この本棚を破壊しろ。壁という壁を調べろ!どこかに隠し扉か、隠し部屋があるはずだ!」


「東君、君に話があるんだ。どうしても君に聞いてもらいたい話なんだ」

但馬は神妙な顔でエヌマルイチに話しかけた。


「ジョーカーの居場所を話す気になりましたか?」エヌマルイチは但馬の表情を

探った。


「君の父親の話だ」







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