再会
「俺が殺らなくても、ドアの外にいるあんたの仲間達がヤッてくれるさ」弘基の言葉に老人への哀れみは微塵もなかった。
但馬は返答の代わりに、絨毯をめくり床下の地下通路を開けた。
「この階段を降りれば地下迷路へと通じる。さあ、行くんだ。奴らが部屋に入ってくる前に」
ドアの隙間から火花が飛び散るのが見える。どうやら変形したドアの一部分を焼き切ろうとしているようだ。
弘基は闇へと続く階段を見降ろした。
「安心しろ。中に入れば人感知センサーのライトが自動で点くようになっている。くれぐれも分かれ道の順番を間違えないようにな。
入る順番を間違えれば、センサーが働き一酸化炭素ガスが自動的に出る仕掛けになっている。三分でガスが地下全体に充満する。ガスが出始めればサイレンが鳴る。そうなったら、息を止めて進むしかない。迷路を抜けるには君の足なら十分もかからないだろう。もう一度言うが右、真ん中、左の順だ。忘れるな」
弘基はゆっくりと地下の階段に足を下ろした。途中で弘基は立ち止まり、振り返りざま見上げた。
そこには、自分を見つめる老人のやさしい笑みがあった。
「さらばだ。ジョーカー」老人の小さな呟きは弘基の耳には入らなかった。
ドアの外では、兵士たちが変形した鋼鉄のドアをガスバーナーで焼き切ろうとしていた。
「あと何分かかる?」
エヌマルイチは部下に尋ねた。
「あと十二、三分程かと…」
一人の部下がエヌマルイチに告げた。
「プラスチック爆弾でドアを破壊してはどうですか?」
「厚さ三十ミリ以上の鋼鉄の扉だ。爆破したところで変形がひどくなるだけだ。地道に焼き切った方が早い。幸い、中の部屋は密閉された空間だ。外に通じる扉はここだけ。つまり、ジョーカーは袋の鼠ということだ」エヌマルイチは自分の部隊がジョーカーを捕らえ、ミスターxに差し出せるという、まだ見ぬ栄誉に興奮していた。
「焼き切りました!」
部下が叫んだ。
鋼鉄の扉が金切り声をあげながら部屋の中に倒れた。
同時に、兵士達が部屋になだれ込んだ。
異様な光景が兵士達の目に入った。
ソファーには老人が子供を抱きながら子守唄を聞かせ、あやしていたのだった。
その子供が死亡しているのはだれが見ても明白だった。
兵士達をかき分けエヌマルイチが進み出た。
エヌマルイチは部屋全体を眺めまわし、それから老人の姿に目を移した。
「但馬室長。お久しぶりです」
エヌマルイチは老人に声をかけた。




