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最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
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蜘蛛の糸

弘基が着ているコートは普通のコートじゃない。

特殊なコートだった。


「兄さん、このコートは特別あしらえの物だ。素材は何でできてるか分かるかい?」

そう言って、弟の元基は黒いコート弘基に差し出した。


「カシミヤにしては少し艶がありすぎる。絹にしては手触りが少し違う。合成物か?」


「ああ。まだ世に出ていない合成繊維さ」


「さっぱりわからん」


「蜘蛛の糸さ」


「蜘蛛?」


「正確に言えば、限りなく蜘蛛の糸に近い合成繊維。その繊維に特殊な加工を施してある」


「ほう。世界でただ一つの高価な代物という事か」


「ああ、高層ビル一棟が建つぐらいの高価な物さ」


「なるほど。で、このコートが何の役に立つんだ?」


「実験では四十五口径の弾を通さなかった。穴が開かないコートさ」


「…、…、防弾コートか?」


「ああ、ただ注意事項がある」


「なんだ?」


「このコートにはボタンがない。羽織るような感じで着てほしい。体に密着した状態で着ると弾丸の衝撃が直に体に伝わる。もちろん、弾は体を貫通しないが、当たった部位の衝撃はある。体に密着せずに着ていればその衝撃も防ぐことができる」


「このコートは、俺の身を守るアイテムか」


弘基はコートの袖に腕を通した。そのコートが意外と軽いのに驚いた。


「兄さん、ただし口径二十五ミリ以上の機銃クラスでは二発までだ。それ以上だとさすがに役には立たん」


「兄弟。一発が俺の体に当たった時点で敵を三人以上葬ってやるさ」

弘基は冗談ではなく真面目にそう答えた。兄の神業の銃さばきを知っている元基もその言葉に疑いをはさまなかった。






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