表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
9/102

殺人鬼

「つまり、俺がたまたま大学内で君を見かけた。

一瞬だったのか、それともジッと見つめ続けていたのか覚えてないけど、つまり

僕が見た君をあいつは同じように見たのさ。

もちろん、俺は君と博史の過去の出来事など知らない」


順子は戸惑っているようだ。表情はどこかに飛んでいる状態になっていた。


理解はしていないだろう。いや、理解できるわけがない。

俺はそう思った瞬間、次の言葉が出てきた。



「と、言うのは冗談さ。

そんなの有り得ないよ。僕の見たものがあいつも同じように見えるって?アホらしい。

…嘘っぱちもいいとこさ。つまり君が言ったように僕が電話したのさ。そういうこと」


それを聞いて、順子は少し砕けたような笑みを浮かべた。

「…」

笑みの次は無表情の無言が続いた。

どうも腑に落ちない様子だ。



俺はもうめんどくさくなった。

この秘密は俺達兄弟だけにしか理解できない。

いや、俺達だってこの摩訶不思議な能力を無理やりに納得してるのだ。

誰も理解できないだろう。


俺はテーブルの上を見渡した。

料理は一通り出尽くしたようだ。


「そろそろお開きにしよう」


俺はレジでカード払いを澄ました。

順子は割り勘をせがんだが俺は断った。

またの機会に、君に奢ってもらうよと、

その機会がないのを承知で言った。。


順子と別れたのは、午後四時を過ぎていた。

冬は日が陰るのが早い

街灯がほんのりと灯り始めた。



彼女のマンションまで送り、その玄関の前で順子は言った。

「もしよかったら、また博史さんのお見舞いに伺いたいんだけど」


そう語った順子の目を俺はマジマジと見つめた。

社交辞令のおすそ分けなら、慇懃無礼に断ってやるつもりだった。

しかし、そんなふうには見えない。


「もちろん、いつでも。きっと弟も喜ぶだろう」


俺が反対する理由はないよな、俺は心の中で呟いた。

「うん、これから楽しみだなあ」

あいつは、嬉しそうに俺に言った。




ここは廃墟ビルが建ち並ぶ誰一人いない一角。

不景気が続き、繊維街と称されるこの地帯はゴーストタウンと化し

地面のコンクリートや、アスファルトの割れ目から草木が生い茂る廃墟となっていた。

そのビルの中にある一つの部屋に懐中電灯の光が揺れ動いている。


その光芒は部屋の中央に向かった。

そこには三脚の椅子が並んでいる。

椅子にそれぞれ二十歳前後の若者が三人腰かけている。

三人とも背筋を伸ばし硬直したように微動だにせず座っていた。

しかも、三人共同じような野球帽を被りながら。


懐中電灯を持つ男の足元にはもう一人、野球帽を被った若者が倒れていた。

ただその野球帽は庇のつばだけが残っているだけだった。

そして若者の頭からは大量の血が床に流れていた。


懐中電灯を持つ男は椅子に座っている若者達に話しかけた。


「諸君たちがかぶっている帽子には火薬が仕掛けてある。

火薬の量は少量だが威力はある、その中に細かい金属片が詰まっている。爆発すれば金属片が頭蓋骨を砕き脳みそに向かって

驀進する。後はこの男のように頭から血を流して死ぬことになる」

男は懐中電灯で死んでいる男の顔を照らした。


「いいか、頭を一センチ動かせば火薬が爆発するように仕掛けてある。

死にたい奴は椅子から立ち上がればいい。一瞬で地獄に連れてってくれる。こいつのように」

男は足で死体を蹴り上げた。


「なぜこんなことをされるか分るだろう。

自分たちの心に聞けば分かるはずだ。諸君、その姿勢を崩すな。

少し苦しいだろうがあと三分だ。

三分たてばその苦痛から解放される。そのままの姿勢で自分のやったことを反省しろ」


男は部屋から出た。

階段を降りながら男は腕時計を見た。


「あと二分だ。二分経てば時限装置が働いてドカンだ。どっちに転んでもあの世に行くしかない」


男はそう呟き口笛を吹いた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ