襲撃の裏側
銃を渡された兵士は親指を撃鉄にかけた。
「オートマチックだから引き金を引くだけでいい」鎌田は兵士に告げた。
兵士は無言で銃を持ったままだ。
「人だと思うから殺せないんだ。虫だと思え。お前が殺す相手は我々に毒をまき散らす害虫だ」
鎌田は腕時計を眺めた。
「さっさと殺せ!我々の任務は但馬家襲撃の加勢だぞ。グズグズするな」
鎌田は突然、機関銃を地面に投げ出した。
今度は金髪の不良に向かって話しかけた。
「確か、山岡龍一という名前だな」
そう呼ばれた金髪は鎌田を睨みつけるように見上げた。
鎌田は笑みを浮かべながら囁いた。
「死ぬのが怖いだろう?」
山岡龍一は返事の代わりに薄ら笑いを浮かべた。が、額にはジットリ汗がにじんでいる。
「怖くない奴なんかいないさ。特にお前のような、学校という組織の規律を乱し偉ぶった臆病な卑怯者はな」
「な、、んだ…と…」山岡の声は上擦っていた。恐怖で唇が震えているのだ。
「命を助けてやろう。私の代わりにその機関銃でお前を狙っているその兵士を殺せ。殺せたら助けてやろう」
「グズグズしてると周りの兵士が機銃でお前を粉々にするぞ!」
言われた龍一は反射的に機銃をつかみ取り、銃口を兵士に向け引き金を引こうとしたが引けなかった。ビクともしないのだ。
数秒遅れて
兵士が拳銃を発射した。一発、二発、三発。
四十五口径のコルトオートマチックの弾丸は龍一の眉間に命中した。
「私が機銃に安全ロックをかけてなければ、お前が先に死んでいたところだ。しかも蛆虫に三発も使うとは…」
「さあ、みんな車に乗り込め。但馬家に向かうぞ。襲撃時間まであと十二分だ。後れを取ったらミスターXに何を言われるか。わかってるな!」
「この現場をどうする?」仲間の一人が鎌田に訊いた。
鎌田は懐からトランプのババを取り出し地面に投げた。
「これで、ジョーカーの仕業に化けたわけだ」
車に乗り込んだ鎌田は運転手に叫んだ。
「スピードを目いっぱい出して走れ!」
黒いセダンを先頭に装甲車とトラックが市中を突っ走った。
「ところで、あの昔ばなしの臆病な兵士の結末はどうなった?」仲間の一人が鎌田に尋ねた。
「立派な兵士になったさ。知ってるだろう、エヌマルイチさ」
「エヌマルイチ?あの父親殺しの男か」
もう一人の仲間も驚いた風に呟いた。
「シンデレラボーイか」
「ああそうさ。但馬指導官が咄嗟に考えた作り話にのって実の父親を殺してしまった男さ」
「作り話?…殺されて当然の父親だったんだろう」
「とんでもない。むしろその逆さ」




