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最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
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臆病者

屋敷への突然の銃撃音に山岡鉄の頭は真っ白になった。

鉄筋コンクリートの壁の砕ける音が部屋中に響き渡る。

「誰が攻撃している!」


「わかりません!監視カメラが壊されていて外がどうなっているのか。さっぱり」


「外に出て見てこい」


「無理です。横殴りの雨のように弾が撃ち込まれているんです。窓から顔を出した若い奴の頭と顔が部屋に飛び散ってるんです」


「部屋に撃ち込まれた弾痕を見ると、弾の直径は十ミリ以上はありました」


「十ミリ?機関銃じゃないか。戦争でも始まったのか……」山岡の顔が青白くなった。


「おかしいですね。さっきまで特広局の連中がいたのに、直ぐに銃撃が始まったんですよ。特広局の奴ら我々を守ってくれてるんですかね」


「十ミリの機関銃なんて軍しか使わない代物だぞ」


「そういえば、モニターに映っていた特広局の背後で機関銃を身に着けた兵士がチラっと見えました。…まさか」


「おい!警察だ。一一〇番に電話しろ!」


「だめです、電話が通じません」


「携帯をかけろ!」


「…おかしい、携帯も通じません」


「バカな!」山岡は自分の携帯を取り出し仲間内に連絡しようとしたが無駄だった。


突然、爆発音が鳴り、屋敷が大きく揺れた。



特広局がドアを破壊したのだ。

続けざまに爆発音が二回鳴った。


手榴弾を使ったのだ。


部屋の中に入った兵士は訓練通り規則正しく列をなして銃撃を繰り返す。

銃撃の音を遮るものは漆喰の壁のみとなりその壁も弾丸によって破壊されつくされようとしていた。

どこに隠れようと機関銃の弾は容赦なく貫いていくる。


次々と山岡の手下が撃たれていく。


鎌田はその光景を見ながら満足そうに呟いた。


「鍛え上げるにはやはり実戦しかない。敵を殺してこそ、上達する」


山岡達も銃で応戦したが結果は目に見えていた。

五分程度で銃撃戦は終わった。


鎌田の前に二人の生き残りが連れ出された。


「子供か?」鎌田はその二人を覗き込んだ。

一人は高校生ぐらいで髪を金髪に染め鼻にピアス、耳にイアリングをした不良だ。もう一人は小学生の低学年で、頭に怪我をし失神している。


「どうする?」黒コートの男が鎌田に尋ねた。


鎌田はジッと二人を見つめた。

不良風の男は、下唇を真一文字に噛み微かに震えている。

さきほど、山岡組の身辺を調べ上げたところだった。山岡には二人の息子がいる。一人は高校生で父親の名を借りて好き放題で問題を起こしている不良息子だ。もう一人はどういうわけか成績の良い真面目な優等生らしい。


鎌田は兵士の中から一人を選んだ。その兵士は前々から鎌田が気にかけていた男だ。

「この金髪のガキを殺せ」鎌田は兵士に告げた。


兵士は驚いたように鎌田を見た。

「百人の兵士の中にはお前のような臆病な者が必ずひとりはいる」

鎌田はその兵士の機関銃を握りしめ、熱を帯びていないのを確かめた。

「ほとんど機銃を使っていなかったようだな。腰に付けてある予備の弾薬は飾りか?」

その兵士は何も言わず立ち尽くしたままだ。


「昔、お前とそっくりな兵士に会ったことがある。椅子に縛り付けた男を殺せと命じてもなかなか引き金を引かなかった。制限時間の範囲内で殺さねば私が殺すつもりだった。その兵士を」


「私が一番恐れているのは秩序を乱す奴だ。そういう輩は、臆病者と決まっている」


鎌田は銃を抜き兵士に渡した。

「これを使え。機銃より多少優しいはずだ。ただし、一発で仕留めろ」

鎌田は兵士から機関銃を取り上げ銃を渡した。


機銃を兵士に向けながら言った。


「そのガキを殺さなければ私がお前を殺す」





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