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最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
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AI

自分の部下たちが、ロビーの一角で呆然と立ち尽くしているのを見て水木は首を傾げた。

「何をしてるんだ」

水木は、そう呟きながら、何かを囲んでいるかのように立ち尽くす黒コートの男たちに近づいた。

自分の存在を気付いているのは、三浦だけだった。男たちの間にしゃがみ込んだ状態で、視線を水木に向けていた。


「室長!」部下の一人が水木に気づき声を上げた。

部下達は円陣を崩し、水木にその惨状を見せた。


男が倒れている。顔は青ざめ、唇は紫色に変色している。

明らかにチアノーゼを呈し、死の兆候を示している。


「誰にやられた」

水木は誰に聞くともなく尋ねた。

「突然、前触れもなく倒れたということです」

水木を見上げたままの三浦が答えた。


「そいつは、須同だな」

水木は、この須同という男がいつも自分に反抗的な態度をとっていたことを思い出した。

T大を出て成績が優秀なのを鼻にかけ、理屈っぽく、物事を勝手に自分で決め、そのくせ優柔不断。仕事の失敗を他人に転嫁するのは平気、自分に極めて甘く、異常な出世欲を持った自分勝手な男。組織の人間としては最低の評価Eの男だ。協調性を、まったく持ち合わせない人物、かえって、この男の存在で組織の統制が崩れてしまうと、水木は要注意人物とマークした男だ。


「原因は何だ?」


「たぶん毒物によると思われます。我々が手首にはめている端末から体に注入された、らしいです。確証はありませんが」


水木は三浦を一瞥し、しゃがみ込みながら須同の頸動脈に手を当てた。

脈が触れない。


「いいか、須同の死体解剖はするな。病院は警察が管轄している所でなく我々組織が運営する病院に送るんだ。そして、全て内密に処理するのだ。決してマスコミに漏れることはないようにしろ」水木は部下達に声を潜めながら伝えた。


「救急車がやってきました」ガードマンが水木に知らせた。


「すぐ運べ。三浦、お前にこの処理を任せる」


一度頷き三浦は、水木に尋ねた。

「室長、お尋ねしてよろしいですか」


「なんだ」

水木は眼鏡をはずし、青い眼鏡拭きでレンズを撫でた。


「以前、ミスターXから言われたことですが…」


言いずらそうに尋ねる三浦に目を向けながら、「何が聞きたいんだ?」と、急かした。


「特務機関の事です」


「特務機関?」


「我々以外に、我々が知らないもう一つの組織があるのではないですか?」


「もう一つの組織?何を言ってるんだ?」


「我々を監視する機関です」


「三浦。我々は、ただ、与えられた仕事を確実に、全力を挙げて実行すればいいのだ。他の事は考えるな」


「答えになってません。あるのかないのか聞いてるんです」


「この組織が我々に求めるのは並外れた忠誠心と勤勉、そして忍耐だ。それから外れたら私だろうと、お前だろうと抹殺される。それを実行する別組織は確かにある。が、恐れることはない。その三つを守っている限り我々は安全だ」


「その組織は誰が仕切ってるのですか?」



三浦は眼鏡を拭きながら、呟くように言った。

「AIだ。人工知能だ」




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