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最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
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永遠の別れ2の①

 但馬 仁は所長室のソファーで仰向けになり仮眠していた。

 部屋の扉は二重にロックされていて部外者は誰も入らないようになっている。たとえこの部署の者でも前もってアポイントを取らなければ部屋に入れない。

 

 それだけ厳重に人の出入りを厳しくするのにはそれなりの訳があった。

 ここは、放射牲廃棄物無毒化処理研究所という長たらしい名前の施設だ。

 有害な放射能を発する物質を人体に害の及ばさないレベルまでいかに効率よく、短期間で無毒化できるかを研究する施設だ。敷地は東京ドーム5個分の広さがある。

 これだけの広さを持つ理由には、実は原子力発電の放射性廃棄物の一時保管場所がここにあるからだった。

 敷地内の地下深く掘られた場所に、厚さ5メートルのコンクリとの壁と鉛に覆われた広大な地下施設がある。

 そこにはドラム缶で封印された放射性物質が数え切れないほど積まれていた。


 但馬はその施設の管理責任者を兼ねた所長だ。

 施設の周りには警察が百人規模でガードしている。この施設を出入りするにも厳重なチェックを行っている。

 顔パスなどできないどころか、人の出入りには、持ち物検査から身体検査まで徹底していた。


 所長室にブザーが鳴った。

 但馬は飛び起きた。

 五十を過ぎた但馬の顔は昨日のゴルフ焼けで赤黒く光っていた。年齢の割には精悍な面構えをしている。

 ブザーは部屋の外にいるガードマンからの連絡だ。


 「こんな時間に何なのだ?」そんなことを呟きながら但馬は外のガードマンに尋ねた。

 「どうした?」


 「はい、従業員の疋田が所長にお話があるそうで」


 マイクから出た疋田という名字を聞き、但馬は苦々しい表情になった。

 「何の要件か聞いてくれ」

 疋田の要件はわかっていた。この施設に保管してある放射性廃棄物の件だ。


 「要件は直接お話ししたいといってます」


 一応その件に関しては口外するなと疋田に告げていた但馬だった。

 その約束は守っているようだ。

 実直だけが取り柄の疋田を但馬は気に入っていた。そのため、疋田には地下廃棄物の管理を任せてあった。

 ところが、知ってはいけない秘密に感づき始めた。

 疋田を愚鈍で従順な男だと思っていた但馬は、とんだ思い違いをしていた。

 正義感の強い堅物。

 但馬の一番恐れている人物だと分かった時はもう遅かった。

 疋田は疑問を次から次へと但馬にぶつけるようになった。


 「分かった。今開ける」


 扉が開いた。背の高いがっしりとした若者が現れた。

 「また、君か」


 「どうか教えてください。これは重要なことです。私の責任問題でもありますから」


 但馬は困った顔で首を傾げた。

 「君の問題じゃない。だれの責任でもない。だからその疑問は忘れることだ」


 「そんな事はできません。廃棄物のドラム缶二十本分が消えてるんです。これは忘れられるような問題じゃありません」


 「毎回、全てのドラム缶の数を数えていたのか?廃棄物が入ってきた缶の数のチェックとノートへの記入、地下倉庫の戸締りだけしっかりやってればいいと言ったじゃないか。なぜいらんことをしたのだ」


 「私の仕事だからです」


 「全てのドラム缶の数のチェックなど頼んでない」


 「万が一のために行っていたのです。そのおかげで、今回の数の不一致が判明したのです!」


 「そんなにその疑問を知りたいのか?」


 「もちろんです。放射能性廃棄物ですよ!下手すればどこかの国に密輸され、再処理され核爆弾にでも使われたら日本の信用は丸潰れ

です」


 「そんなことにはならない」


 「そんなことにはならない?所長は知ってるんですね。あの二十本の廃棄物の行方を」


 「疋田君。この世の中を善悪だけで見るんじゃない。この世の中はもっと複雑で、善と悪は混沌としているんだ。分別できないほどに絡み

合ってるのだ。全てはある目的のためだけに」


 疋田は但馬の顔を見据えて言った。

 「所長、消えた廃棄物はどこにあるのですか」 


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