表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後のピエロ  作者: ハロル・ロイド
52/102

永遠の別れ1

 暗い早朝、弘基は病院を後に、一人、ハンドルを握っていた。バックミラーを見れば、ついさっきまでマリと共に過ごした部屋の灯りが見える。

 別れ際にマリは弘基に告げた。

 「あなたの子供が私に宿ったとしても、手際よくあなたを見習って始末するわ」


 そう告げた理由は、今夜に限り、マリは避妊を拒んだからだ。お互いにこれが最後の夜になると暗黙のうちに理解していた。

 

 二度と会うことはない、という思いがマリをそうさせたのだろうか。

 「いつもの用心深さはどうした。君らしくないじゃないか」

 そう耳元で囁いてもマリは何も応えなかった。


 マリは、自らの手で弘基の体からスキンを外し、激しく身もだえながら弘基を受け入れた。

 時間は瞬く間に過ぎた。そして、マリの口から出た、「始末する」という言葉が快楽の余韻をすべて消し去った。


 身支度を終えた弘基はマリに言った。


 「宿った命を始末するなら、その命が日の目を見る前に消し去ってくれ」


 「わかってるわ。私は医者よ」


 弘基はマリの目を見つめた。たった一人、この世で体を許した女の目を見つめ、呟いた。

 「殺人鬼の血が混じった俺の分身をこの世に出すべきではない…そういうことだな。そうだな。確かにその通りだ。マリの言う通りだ」



 マリは能面のように無表情に、そして微かに口を歪めた。それはマリにとって精一杯の笑みだったのかもしれない。



 弘基はマリとの会話を吹っ切るようにアクセルを踏み込み、山を下った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ